仕事においては、やはりカラダが資本。多忙な中でも最高のパフォーマンスを発揮し続けるには、日ごろからの健康管理が欠かせない。一流人が実践する健康マネジメント術とは? 今回ご登場いただくのは星野リゾートの星野佳路代表(55歳)。今日から4回連続でお届けする。温泉旅館の4代目として生まれ、観光リゾート業界のトップランナーとして注目を集める星野氏は、実はここ数年「1日1食主義」を貫いているという。その理由とは?
若い頃は少々の無理をしても、健康診断の数値に影響することはなかったものの、30代、40代になってくると、高血圧や高コレステロール、不整脈といった不調が表れるようになりました。家系的にもそうした傾向があり、年齢を重ねるごとに、自分にとっての健康の重要度が増しています。そこで、「食事」「睡眠」「運動」「ストレスコントロール」のそれぞれに目標を設定して健康管理を実践するように…。今では数値も改善し、心身の状態も快調です。
食事は1日1食、夕食だけにしています。年齢とともに、基礎代謝は落ちてくる。ベストな体重を維持するには、食べる量を減らすしかない。そう考えて、40代で朝食をやめ、50代になる頃には昼食もやめました。1日1食なので、量はとくに制限せず、好きなものを好きなだけ、バランス良く食べます。甘いデザートも食べますし、お酒も飲みます。ただ、体質的に量はそれほど飲みませんね。
子どもがいるので、夕食の時間は早めの19時から19時30分頃。私も妻も出張が多いのですが、必ずどちらかが一緒に食事をとれるよう、スケジュールを調整し合っています。保育園の頃は18時までに迎えにいかなくてはいけないため、会議中でも17時30分になると切り上げていましたね。今でも夕食の時間に自宅に帰り、食事を終えてから会社に戻ることもあります。
1日3食は食べ過ぎで内臓を疲れさせる?
1日1食にしてから、体重が落ち、血圧も下がりました。それ以前は上の血圧(収縮期血圧)は高血圧の領域に入る145程度でしたが、今は120台、高くても130台でコントロールできており、まったく問題ありません。コレステロール値も改善しています。
空腹の状態が長く続き、そこへカロリーをとると消化吸収のスピードが早くなって太りやすいという話を聞くことがあります。それはその通りなのかもしれませんが、言い換えれば、朝・昼・夜と3食食べていると、消化吸収の効率が落ちていると考えることもできます。3食食べてそのたびに消化吸収しなければならない状態は、内臓を疲れさせるようにも思えます。だから私は、1日3食は食べ過ぎで、むしろ1食の方が内臓の働きにとってもいいと信じています。消化吸収の効率が高まって太ることを気にするよりも、1日の総摂取カロリーを減らすことの方が大事だと思うんです。
もちろん、空腹をまったく感じないわけではありません。14時から16時頃はやはり、空腹感がありますね。でも、この空腹感は「ハングリーハイ」を経験することで乗り越えられるようになります。
「ハングリーハイ」とは?

空腹を感じるのは血糖値が下がってきて、脳が「そろそろ食事をして補給しなさい」と信号を出しているからだといわれています。だから、空腹感を克服するには、その信号をコントロールすれば良いと考え、いろいろなことを試してみました。
その経験上、最も効果があるのは、重要な考え事をするということ。難しい話題で議論するのもいいですね。要するに、ほかのことに集中していると、脳の信号が発信するのをあきらめるのか、空腹感がおさまるのです。そうなると、脳がセービングモードに入ったような感じで、頭がスッキリとします。私はその状態を「ハングリーハイ」と呼んでいます。だいたい17時から19時くらいまでがハングリーハイになる時間帯ですね。
ハングリーハイのときは空腹を感じないし、思考もクリア。一種の快感状態なんですね。このハングリーハイの快感を知ってしまえば、空腹はある程度コントールできるようになりますよ。空腹を乗り越えてハングリーハイになれたときは、「自分の脳の信号に勝った!」みたいな達成感を味わえます。これが完全にコントールできるようになれば、仙人になれるんじゃないかなと思っています(笑)。
私は睡眠にもこだわりがありますが、睡眠がしっかりとれているときの方が、空腹もコントロールしやすいですね。
(まとめ:田村知子=フリーランスエディター/インタビュー写真:増井友和)
星野リゾート代表

この記事は日経Gooday 2016年1月18日に掲載されたものであり、内容は掲載時点の情報です。
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