たいていの人は、社内政治を可能な限り避けようとするものです。2016年に入って、私は従業員169人を対象に、社内政治との付き合い方を尋ねました。すると、そのうち20%はそうしたものは無視する、61%は渋々ながら「必要な時」だけ関わっている、という回答が得られました。

しかし、社内政治と距離を置く傾向がある人は、そうした態度が招く結果についてもよく考えるべきです。例えば、(周囲の効率が悪く見えたという理由で)仕事を手早く済ませたばかりに、同僚から冷たい扱いを受けることもあり得ます。また、自分の成果を横取りしないように上司に釘を刺したために、日の当たらない業務を担当するよう言いつけられることもあります。あるいは、年上の上司が表舞台に立ちたがっているという理由で、用意していたプレゼンテーションをやめるよう命じられたりすることだってあります。

こうした状況を見て見ぬふりをしていれば、1日をもめごとなくやり過ごせるでしょう。ただでさえつらい職場ですから、そうした態度もわかります。けれども長い目で見ると、あなたのキャリアにおける目標を達成する上で不都合が発生するかもしれません。

キャリア関係の著作が多いErin Burt氏は、こう主張します。「(社内)政治を完全に回避すると、あなたのキャリアにとって致命傷になるかもしれません。職場には、複雑な権力構造がつきものなのです。倫理を守った上で、こうした仕組みを自分にとってプラスになるように活用することはできるはずですし、そうすべきです」

Nikeでテクノロジー戦略と運営の責任者を務めるNina Simosko氏も同意見です。社内政治に関しては「これを回避する方法など存在しません」と同氏は警告しています。「チームで仕事をする場合には、必ず社内政治を経験するはずです。私自身もこうしたものは好きではありませんが、無視しているとマイナスの結果を招くことを、働いていく中で悟りました」と、同氏は述べています。キャリアのどの段階にいるかを問わず、リーダー格の社員にとっては、社内政治との付き合い方が非常に重要になるというのが、Simosko氏の主張です。「この対応が、会社生活で成功を収められるかどうかを決める可能性もあります」というのです。

では、社内政治を厄介者扱いせず、うまく乗り切るにはどうしたら良いのでしょう? 答えは簡単で、社内政治を自分にとってプラスになるように利用するスキルを磨くことです。

Political Skill at Work: Impact on Work Effectiveness(職場での政治スキル:仕事の効率性に与える影響)』という本を書いたGerald Ferris、Sherry Davidson、Pamela Perrewe氏は、「政治スキル」と言っても、人を操る技術とは限らないと主張します。「適切に用いれば、スキルを活用した社員にも、その人が属する組織にも、良い結果をもたらすことができる」というのです。良い意味で政治に長けた人が持つ4つの要素について、3氏は以下のように解説しています:

1. 人間関係を見抜く目

あなたは、自分が働く組織の人間関係や社内政治の状況にどれほど敏感ですか?

「会社勤めの文化人類学者」になった気分で、同僚や上司の人間関係を見極め、水面下に存在する人付き合いのネットワークに注意を払いましょう。

例えば、水面下で強いネットワークを築いている人、逆に仲間はずれになっている人は誰でしょう? こうした関係はどのように築かれ、グループを結びつけている要素は何でしょう? あるいは、この関係が破綻するとしたら、何が要因でしょう?

職場で展開される意思疎通や人間関係を観察していると、そのうち、財務担当の上司と競合他社の株価について話をしている同僚は、特別なプロジェクトを任される確率が高いことに気づくかもしれません。また、チーム内のライバル意識が高まっている時には、こうした雰囲気から逃げるのではなく、その場に留まり、あえて争いを受けて立つことで、最終的にはメンバーから敬意を得られるかもしれません。

2. ほかの人に対する影響力の強さ

どんな組織にも、職責以上に大きな影響力を持つメンバーがいるものです。あなたが務める会社では、誰がそういう人なのか、把握していますか?

特に高い役職についているわけでもないのに、物事を推し進める能力を持ち、あなたが属する組織を揺さぶり、動かすような人を突き止めてください。そして、こうした人の仕事ぶりから、自分は何が学べるかを考えてみましょう。

例えば、世界中のスタッフが参加する電話会議で反対意見を表明するなら、社内に影響力を持つ人がその会議に同席し、支持してくれると意見が通りやすいことに気づくかもしれません。あるいは、会議そのものよりも、その10分前に会社のカフェテリアに並んで待つ時のほうが実際の意思決定の場になっている、ということもあるでしょう。

3. 人脈作りの才能

影響力の高い人を突き止めたら、戦略的な人脈作りの計画を立てて、こうした人たちと強固な関係を築きましょう。

さらに、さまざまな人を結ぶ役割を担う人物とも知り合いになっておきましょう。会社の内外、あるいは上下方向に広がる人的ネットワークでハブの立場にある人たちです。そして、リーダーのうち、才能を育てることに定評がある人が誰なのかも見極めましょう。

最後に、あなたにとって一番大切なキャリアと昇進に関する目標について考えてみてください。あなたの人脈は、目標達成を助けてくれる「影響力を持つ人」「人と人を結びつける力を持つ人」、さらには「育成能力を持つ人」で構成されているでしょうか?

4. 誠実さ

とはいえ、これらの計画を実行に移す際に、鏡の中の自分を見て「こんなやつはイヤだな」と思うような人物になっていないか、十分に気をつけて下さい。ハーバード・ビジネススクールのAmy Cuddy准教授が、人が自分の上役に求める特徴について行った調査があります。すると、「影響力を発揮するには温かい人柄がカギ」であることがわかったというのです。誠実さをもって人とつながり、信頼感を構築してから主導権をとることが肝心です。

ここまで挙げた4つの特質を身につけると、社内政治が渦巻く状況から身を引きたくなる衝動を抑えるのに役立つはずです。自らの社会的知性を活用して状況を即座に把握し、素早い決断ができるようになるでしょう。そうなれば、社内政治をより巧みに乗り切れる上に、昇進の可能性もぐっと高まるというメリットも見えてきます。

Why Avoiding Office Politics Could Hurt You More Than You Know | The Muse

Jo Miller(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)