Dumb Little Man:スポーツもそうですが、我々のするあらゆることの90%が精神的のコンディションに依存しています。現に、スポーツの90%は精神力だ、という使い古された諺もあるぐらいです。しかし、本当のところは、我々がすることは何であれ100%精神的であり100%肉体的ですなのです。このことについて考えてみましょう。

思考は行動に影響を与え、行動は思考に影響を与えます。どちらの方がより重要でしょうか。このことについて考えを深めていくと、「鶏が先か、卵が先か」という議論になってしまいます。しかし、ここで着目すべき点は、ほとんどのアスリートは、体を動かし、日々のトレーニングメニューをこなし、その厳しさに耐える、という肉体的側面のトレーニングしかしていないということです。精神的なトレーニングをしている人のことはほとんど聞きません。

多くの賢人が、精神と肉体が一連であるということの本質を表そうとしてきました。ローマ帝国の哲学者、セネカは「病気を治したいと思う気持ちが治療の一部である」と言っており、俳優のロバート・ユーリックも「健全な肉体は、その内側にある精神から発する」と言っています。精神的自己と肉体的自己の重要性と相互連動性を最もよく表しているのは、「健全な精神は健全な肉体に宿る」という諺に尽きるかもしれません。

この記事を読んでいるあなたは、精神と肉体の結びつきを強くするにはどうしたらいいか知りたいはずです。ポジティブな独り言、目標宣言、視覚化、瞑想、催眠、NLP(神経言語プログラミング)の実践が、必要に応じて最大のパフォーマンスを上げるのにどのように役立つかについて論じていきたいと思います。

世界最強のアスリートたちが、上記に並べたメソッドをどのように使ってトップに上りつめたかを見ていきましょう。アンドレ・アガシ、セリーナ・ウィリアムズ、タイガー・ウッズ、コービー・ブライアントなどを例に挙げます。

ポジティブな独り言を言う

ネガティブな独り言がパフォーマンスの低下につながることは誰もが同意することだと思います。しかし、訓練すれば不安な瞬間を克服し、ネガティブな考えをポジティブな考えに変える方法を習得できます。

これは訓練により、徐々に思考に影響を与えてくるものです。まだジムの中すら見たことがないなら、トレーニングを始めたばかりですぐに重いウエイトを持ち上げられるとは期待しないでしょう。ポジティブな思考のトレーニングも同じことです。

たとえば、セリーナ・ウィリアムズは自著の中で「自身のテニスに対する情熱と精神力の強さというポジティブな姿勢によって、史上最強の女子テニス選手になれた」と書いています。自分の精神的強さは訓練によって後天的に得られたものだと言うのです。

かつてのMMA(総合格闘技)チャンピオンであるフォレスト・グリフィンは上手にこれを示してくれました。彼は世界で1番のMMA格闘家になる情熱を追及して止まなかったので、臨む試合には勝ちました。そして、いかに状況が厳しくても常に前進して、プレッシャーに負けないということを信じて口に出し、実行するのです。

ここで取り上げた2人のアスリートは自分に語りかける方法を習得して、肉体的トレーニングのみでは及ばない領域にまで到達しました。あなたにもできることを以下にご紹介します。

目標宣言する

セリーナ・ウィリアムズの父は力強いメッセージを書いた大きな紙をセリーナと妹がトレーニングに使うコートのあちこちにぶら下げていたと書いています。セリーナは自著で、そうしたメッセージが妹の心にずっと後まで焼き付いていたはずだと書いています。自分が成功できたのは、何年もそのメッセージを目にしていたおかげだとしています。

セリーナの父親が自分の娘たちのためにしたことは、目標を宣言する恰好の一例です。目標を掲げるとは、ポジティブな性質の文を紙に書き、それを心の中で唱えたり、はっきり声に出して唱えることです。自分に向かってこの目標を何度も繰り返し唱えていると、それがいつの間にか自分の考えそのものになってしまいます。できる限りベストなやり方で1日を過ごすための呪文だと思えばいいでしょう。

目標の例

目標は決して複雑な文章ではあってはいけません。シンプルであればあるほどいいのです。以下の例を見れば、感じがつかめるでしょう。

「自分は必ず○○に成功するとわかっている」(○○には何でも好きなことを入れてください)

「目標に集中を維持するのは簡単だ」

「勝ちたい」

「常に最善を尽くす」

「練習中は常にやる気満々でベストを尽くす」

上記の例でわかるように、目標は極めてシンプルです。目標を掲げることにより手に入れたいもののことを考え、そのうちの10個か20個を紙に書き出します。それを呪文のように唱える時間を毎日作りましょう。

以下が実践方法です。

実践方法

・まず、少しだけ改善できればいいことに的を絞りましょう。誰でもトレーニングをするモチベーションは高めたいですし、今よりも速く走れるようになりたいですし、今より強くて正確なショットが打てるようになりたいですし、もっと集中力が欲しいものです。しかし、最初は、この中の1つに絞って始めるのがいいでしょう。

・目標を自分自身に向かって唱えるのにベストなタイミングは、朝起きたときか、眠る前です。

・目標を書くときネガティブな表現は使わないことです。「絶対に遅く走らない」と書く代わりに「いつも速く走る」と書くべきです。なぜならば、人の精神はネガティブなことを通過できないからです。私が思いつく昔からある例は、「ピンクの象のことを考えるな」というものです。それを言われた方は、自動的にピンクの象を頭の中に思い描いてしまうものです。私はこの文言の効果を知っているので、あなたが今、何を考えているかがはっきりわかります。

・目標を繰り返して唱えるときは、まっすぐ立ち上がり、頭を高くあげて、リラックスしましょう。そして目標を大声で繰り返します。自分が唱えていることは必ずできると信じることが一番です。声と身体からにじみ出る強い感情を込めて唱えるようにしてください。言葉の奥に強い感情を込めて目標を唱えられないときは、あまり情熱を感じられない分野を選んでしまったということかもしれません。

何よりも心を込めて目標を唱えるのが肝心です。感情は肉体の中で化学反応を起こし、その化学反応が行動や物事を決定するプロセスに影響を及ぼす神経化学物質を変化させます。目標自体がその日1日心の奥に残るのは言うまでもありません。

目標宣言を使って潜在能力をフルに解放するキーポイントは、ほかにもありますが、とりあえず上記のことを実践すれば目指すところに着地できるでしょう。

目標を掲げることとポジティブな独り言を併用すれば、さらに強力になります。

心に思い描いて視覚化する

視覚化は大変強力です。サッカーの名選手であるワイネ・ルーネイは視覚化するテクニックを使って試合に向かうときの精神を整えたと言っています。自分がゴールを決める状況を想像したり、自分が好プレーできる試合のパターンを想像すると、パフォーマンスが著しく上がるのだそうです。彼はキットマン(サッカー選手のユニフォームや用具を用意する係)に次の試合で自分が身に着けるユニフォームの色を聞くことさえしました。自分が身に着ける靴下の色からシャツの色までありとあらゆる物の色をです。この方法で、彼は試合で活躍する自分を視覚化するのが楽になったのです。

もう1人、サッカー選手の例ですが、ディディエ・ドログバはゴールを決めるときの様子を正確に思い浮かべるそうです。目をつぶって想像力を働かせて頭の中で映画を上映するのです。たびたび想像した通りにゴールを決めているそうです。

視覚化の威力

上記の例は、視覚化がどれほど威力があるかを証明しています。幸いにも、習得するのはとても簡単です。視覚化とは起こって欲しいことをただ考えるだけですし、自分の頭の中にあることを正確に映像化することです。頭の中で鮮明に映像を思い浮かべるほど、細かいことまで想像すればするほど、情熱を「自分が主人公の映画」に注げば注ぐほど、思い描くことが現実に起こるようになります。

ある考えを抱くと、あるスキルを使う必要がある神経経路や感じ方を記憶したり情報を抽出したりするときの神経経路が強くなります。それをすればするほど、楽にできるようになります。学習しているときもまったく同じことが発生します。視覚化することで、将来そうあって欲しい形に未来の状況を改ざんするのを学んでいるのです。

ポジティブ思考、目標宣言、視覚化はすべて素晴らしいツールですが、時にはスイッチを切ってリラックスする必要があります。それを実行するのに完璧な方法があります。次はそれを説明しましょう。

瞑想する

マイケル・ジョーダン、コービー・ブライアント、レブロン・ジェームズといった誰でも知っている有名人は、バスケットで秀でていること以外にも共通点がありました。3人とも瞑想をして大切な試合の間は心を鎮めていたのです。

瞑想は心を鎮め、その日に蓄積したストレスを解放するにはベストな方法でしょう。瞑想を始めるのに良い方法は、自分の呼吸にだけ集中することです。吸って、吐いて。その繰り返しです。何か雑念が浮かんだと気づいたら、呼気と一緒に心からそれを吐き出してください。

これこそレブロンがビデオの中で行っていたことで、効果があります。自分の呼吸に完全に集中することで、自分の周囲のあらゆるものから自分を切り離し、心を「リセット」して神経を静めるのです。

しかし、リラックスするのに良い方法がもう1つあります。

催眠術

タイガー・ウッズは成功に向けて精神的準備を整えておくのが大切だと人生の早い時期に理解していたアスリートの1人でした。彼は催眠療法士の助けを借りて、できる限り自分の才能を発揮しようとしました。それにより後年、スポーツ史上、最も人に感銘を与えるゴルファーになったのです。

タイガー・ウッズ以外に、アンドレ・アガシも人生のある時期に催眠療法を使っていました。

催眠術は怖くない

催眠術師は催眠術にかかっている人を自在にコントロールできていると信じている人が多いです。さらに悪いことには、自分の意志に反して催眠術をかけられてしまい、催眠術にかかっている間は自分で自分をコントロールできないと思っているのです。催眠状態から覚めないのではと恐れている人もいます。

これらはまったく事実と反しています。マントを羽織り、あなたを鶏のように振る舞わせようとするクレイジーな魔術師は存在しません。

実際には、我々の誰もが日々催眠状態を経験しています。ある活動に完全に没頭したり集中しているときはいつでも、軽い催眠状態にあるのです。これは、特に思い入れのある映画を観ているときにも起こります。あるいは、読むのがやめられない本を読んでいるときもそうです。

催眠状態にある間は、意識を失っているわけではありません。むしろその逆で、多くの場合は完全にリラックスした状態で集中し、肉体や周囲から少し乖離した気分になっています。それで、感動的な映画が終わったときや、とりわけ素晴らしい本を読破したときなどに、どのぐらいの時間がたったかわからないことが多いのです。

催眠状態は、いつもとは違う意識の状態やトランス状態とも言われます。トランス状態に入ると、人はずっと楽に自分の問題に集中したり、催眠療法士の助けを借りて問題を解決することができます。催眠トランス状態の間は、意識は占領されているので、直接潜在意識とコミュニケーションをとりやすくなります。直接潜在意識とコミュニケーションを取ると、ずっと素早い問題解決につながります。

自己催眠をかける

催眠療法士のところを訪ねる以外に、自己催眠にも挑戦してみましょう。どこから始めたらいいかわからないときは、ネットで催眠術に関する資料や音源がいろいろダウンロードできますから、それを利用してください。催眠術を恐れる理由は実は何もないので、まずやってみてそれから判断してみるとよいでしょう。

今日ここで取り上げたメソッドのどれでもいいので、まずは数カ月間、毎日実践してみてください。目に見えて結果が出ること間違いなしです。

5 Ways Athletes (and anyone else) Can Connect Their Mental and Physical Self|Dumb Little Man

Igor Tomić(原文/訳:春野ユリ)