キアロスタミの残像
編集委員 古賀重樹
亡くなって4カ月たつのにまだ実感がわかない。その残像は鮮やかになるばかりだ。
アッバス・キアロスタミの姿を初めて見たのは1992年のカンヌだった。路地の向こうに立つ男がそうだと、友人が教えてくれた。大柄でサングラス、少し猫背で黒澤明みたいだった。「そして人生はつづく」を、ある視点部門に出品していた。後に「90年代で最も重要な映画作家」と評されたイランの巨匠にとって初めてのカンヌだった。
同年秋の...
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