アルジェリア政権、強硬姿勢崩さず テロ対策を優先
欧米の協力断る
【カイロ=押野真也】アルジェリア東部で起きた人質事件は軍による鎮圧作戦が終了した。アルジェリア政府は日本政府に対し、邦人の安否で「厳しい情報」を伝えた。日米欧などは人質の人命保護を求めたが、政権側は強硬姿勢を崩さなかった。
軍は19日、武装組織が占拠したガス関連施設のうち、すでに制圧した居住区だけでなく、プラント地域で制圧作戦を展開したとされる。武装勢力側は日本人1人を含む7人の人質を取り「軍が攻撃すれば殺害する」と予告したとの報道があるが、軍は攻撃に踏み切った。
アルジェリア政府は16日の事件発生直後から「テロリストとは交渉しない」との姿勢を貫いてきた。17日に始めた鎮圧作戦では人質を乗せ、逃亡を図った武装勢力の車両をヘリコプター部隊が攻撃。同乗した人質も犠牲になったと伝わっている。
今回の事件では、人質となった日米欧などの関係各国は、武装勢力を強く非難し、毅然とした対応を取ることは支持してきた。人命の保護も要請してきたが、政権側は事件の早期終結を優先した。
アルジェリア政府は自国単独での解決にこだわった。米政府は人質の救出作戦のノウハウが豊富な米軍特殊部隊の派遣も打診したが、アルジェリア政府は拒否したといわれる。欧州諸国からの協力申し出も断ったという。
アルジェリアはかつてフランスに支配された歴史があり、今でも「反植民地」感情が強い。国民の間では反欧米感情も根強く残っており、欧米諸国の協力を受ければ国民の不評を買うだけでなく、反欧米を旗印に掲げるイスラム過激派の活動を勢いづけるとの懸念を考慮したようだ。
現在のブーテフリカ大統領の政権基盤は盤石ではない。2011年に中東で起きた民主化要求運動「アラブの春」では、エジプトやリビア、チュニジアなど近隣の独裁政権が相次ぎ崩壊した。
アルジェリアでも経済格差の拡大や野党勢力への弾圧などを批判する声が強まり、同大統領は貧困層支援策を打ち出して不満解消に努めてきた。しかし、今でも政府への不満は解消していない上、同大統領は健康不安説もあり、求心力が低下している。
長く軍政が続いた同国では、治安対策を重視する必要性もあり、軍の発言力が今でも強い。今回の武装勢力に対する強硬な作戦も軍が主導したと見られる。軍が政権側とどこまで意思疎通を図ったかは不透明だが、アルジェリア政府の対応を巡り、各国で議論がわき起こりそうだ。