2013.07.20

古賀茂明「暴走し始めた原子力規制委員会」

その3.柏崎刈羽の本当の問題

2007年中越沖地震発生後の柏崎刈羽原発の様子 〔PHOTO〕gettyimages

【規制委員会が作った安全基準】
 2007年の中越沖地震の際、柏崎刈羽原発では変圧器の火災事故が起きた。その原因が、原子炉建屋と変圧器がある建物が、離れた地盤上にあったため、その間をつなぐケーブルが地震で大きく揺れたことにより、変圧器が引っ張られて傾き、それによって内部の金属同士が接触して発火したものだということがわかった。そして、東電もそれを認めたという経緯がある。

 ここから明らかになる教訓は、フィルターベントを作る場合も、原子炉建屋と同一の基盤上に置かなければならないということだ。もし、そうではなくて、フィルターベントを原子炉建屋から離れたところに置き、二つの施設を長い配管でつないだとしよう。大震災の際に起きる大きな揺れで、原子炉からフィルターベントに通じる長い配管は破断する可能性が高い。それが、ほんの小さな亀裂や穴にとどまっていても、原子炉から放出される高濃度の放射性物質が生のまま環境中に排出されることになる。

 そんなことは絶対に防がなければならない。にもかかわらず、東電は、離れたところに同施設を建設する予定で、既に基礎工事まで始めているという。

 何故そんなことになるのかというと、規制委員会が作った安全基準では、こういうことは禁じられていないからだ。こんな危ない事は禁止すればいいのだが、そうすると、多くの原発で、敷地を確保できなかったりして、再稼働できなくなる恐れがある。だから、これを放置している。・・・・・・

【田中委員長はノーコメント】
 7月10日の記者会見で、このフィルターベントの問題ついて、「新潟県の知事が、柏崎刈羽での東電のフィルター付きベント設置計画について、建屋と一体化していないとして問題視している。この点に関しての委員長の受け止めは?」と記者から質問された田中委員長が、質問にまともに取り合わず、記者に対して、「特に泉田さんが何を言っているかは、私はノーコメントですね」「泉田さんに聞いて下さい。どう作ったら、デザインしたらいいのかを。それはデザイン要求であって、壊れるかどうか、耐震設計上、どう取るかとかということは設置要件としては、我々としては持っているつもり。随分と親しいようですから、どうぞお聞き下さい」と発言したのだ。

 完全にこの問題にまともに向き合わず、無視する態度を取ったのだ。規制委としては、やはり、この問題をまともに議論されると困るということが、よくわかってしまった。

 こんなひどい対応をされたら、誰でも大声で怒鳴りたくなるだろう。7月5日の東電社長との会見における泉田知事の苛立った様子は、こうした背景を加味すれば、非常によく理解できる。しかも、このフィルターベントの件は、多くの問題点のうちのほんの一部なのだから、本来、泉田知事は、もっと大声でわめき散らしてもおかしくはなかったと、私は思った。・・・・・・

その7.猛暑!猛暑! それでも電力が足りるのは何故?

【省エネが実り電力需要が減っている】
 7月初旬に関東地方まで梅雨が明けて、全国的に記録的な猛暑が続いている。熱中症の死者も多数出るなど、毎日、テレビではこのニュースが大きく取り上げられる。

 まだ始まったばかりだから、予断は許さないが、35度以上の地点がこの時期では史上最多などと伝えられる割には、昨年までと違って、電力が足りないという話が出て来ない。

 火力発電所の稼働が増えているというようなことを電力会社は言っているが、実際には、企業の自家発電所が増えたり、様々な省エネ努力が実ったりで、ベースとなる電力需要が減っていると考えた方がよさそうだ。・・・・・・

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