静岡地検の男性検事が女性被告人と飲食し依願退職 | 福岡の弁護士|菅藤浩三のブログ

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福岡若手弁護士のブログ「ろぼっと軽ジK」は私です。交通事故・企業法務・借金問題などに取り組んでいます。実名のフェイスブックもあるのでコメントはそちらにお寄せ下さい。

http://www.excite.co.jp/News/society_g/20120925/Jiji_20120925X850.html
 次席検事の「食事以外にデートなどは確認していないが」とのコメントから、被告人の性別を特定しました。男性同士ならば使わないので。
 その検事(実名がわかりました。私のフェイスブックのコメント欄には書き込んでます)の行動は、単なる倫理規定違反にとどまらず、法定刑が5年以下の懲役とされている単純収賄罪(刑法197条1項前段)に該当するのではないでしょうかYen理由は、
以下のとおり択一知識を組み合わせての帰結です。

・賄賂の目的物とは、有形無形を問わずいやしくも人の需要や欲望を満たすに足りる一切の利益を指し、飲食物の提供も賄賂になる(大審院明治43年12月19日)。
 ⇒数千円でも食事をおごってもらったら賄賂になる。
・職務に関するとは、職務行為自体に対する賄賂の提供のみならず、職務と密接な関係を有する行為に対する賄賂の提供も指し、過去に担当していたことがあるが現在は担当していない事務であっても刑罰適用は差し支えない(大審院明治42年12月17日)。
 ⇒控訴期限到来前の公判活動も職務関連行為に該当する。
・一般社会における慣習ないし社交儀礼の範囲内にとどまる贈与であっても、公務員の職務に関して授受されるときは賄賂となる(大審院昭和4年12月4日)。
 ⇒倫理規定違反に該当する供応というのは、まず慣習の範囲外。
・具体的に職務の公正が害されたかどうかは、単純収賄罪の成否には影響しない(条文解釈から)。
 ⇒「捜査や公判に影響を与えた事実は確認されなかった」という次席検事のコメントは加重収賄罪(刑法197条の3第1項)に該当しないことを説明しているにとどまる。

 
 このほか、依願退職で済ませて退職金を支払ってよいのかとか、検察庁のメディアへの事件公表のタイミングが小沢一郎の控訴審と同一日に設定して矮小化させようと姑息だとか、前田恒彦元検事はフェイスブックで怒りを吐いていました。

 ところで、賄賂罪の保護法益は、職務執行の公正の保持と職務の公正に対する社会の信頼の確保の2つであるというのが、法令解釈の基本スタンスですが(大審院昭和6年8月6日)、同じく国家権力を行使する公務員である裁判官について、倉田卓次さんの「裁判官の戦後史」に紹介されていた、荒川正三郎裁判官のエピソードを紹介することでhttp://www.47news.jp/CN/200512/CN2005121401002832.html
倉田判事の筆を借り、私の思いの披露に替えさせていただきます。

 「一高(東大)での模擬裁判で借りた法服を自宅に返却に行った際、こちらは借りたものを返すのだからしかるべきお礼をと考えて、小さい菓子折りを差し出した。
 そしたら、荒川さん夫人に強い口調で一喝された。『私がこれを受け取ったら離縁されます。絶対お断りよ』、こちらも世慣れないから離縁されては気の毒とおめおめ持ち帰った次第である。
 ほかにも、荒川さんは法服をお借りした関係で模擬裁判の招待券を差し上げてあったのに、招待席に姿が見えず、実は後ろの方で立って見物していたそうだ。招待券を使うのを潔しとしない潔癖さに感銘した。そういう伝聞の後に、この荒川さん夫人のきっぱりした応対である。【上に物を贈らず、下から物を貰わず】、裁判官の清廉さということが、かなり強い印象になって残った。」
 

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