成功している人が「私はすごいんだ。みんな私のことが好きだ」というような自己肯定を呪文のように唱えていることがあります。しかし、そんなやり方は陳腐で全然役に立たないという人もいます。自己肯定は自尊心を高めるためのものですが、行き過ぎた自己肯定は、本心との衝突を引き起こします。カナダのウォータールー大学の研究で、「私はみんなに愛される人間だ」というような自己肯定を繰り返し唱えることで、自尊心が芽生える被験者もいましたが、自尊心がかなり低い被験者の場合は、自己肯定を繰り返し唱えることで、さらに状況が悪化することが分かりました。これは、自己認識と自己肯定の内容がかけ離れすぎているあまり、ストレスを引き起こし、さらに気分を落ち込ませている、と結論づけられました。

「私は自分自身を完全に受け入れている」というような、根拠のないポジティブな言葉で、自分を励まして肯定させようとしている自己啓発系の本があります。

私たちの研究結果によると、そのような自己肯定は自尊心がかなり低い人には有害だということが分かりました。

自尊心が低いという問題は、そのような自己肯定を、自分で信じられるようになるまで何度も繰り返し言い聞かせることだけでは解決できないのです。自己肯定は、自尊心がある人が自分を信じられなくなったりストレスを抱えている時期に、それを乗り越えるために使うのは有効です。しかし、そもそも自尊心が低い人は、自己否定の悪循環から抜け出すために、もっと具体的に自分に対する認識を変える必要があります。

"I Am a Lovable Person!": Why Positive Mantras Backfire For Some|Psyblog

Eric Ravenscraft(原文/訳:的野裕子)

Photo by Loren Kerns.