7月の消費者物価指数が前年同月比横ばいとなり、2013年6月以来続いていたプラスは25カ月で止まった。その背景や今後の物価動向の見通しについて考えてみたい。
まず、金融政策の究極の目標を整理しておく。日銀法には「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」とある。
最終目標は「国民経済の健全な発展」であるが、政府の目標としては雇用の確保である。もちろん所得向上も重要だが、雇用が確保できれば、同時に所得向上になる。具体的には、就業者数を増やし、失業率を下げられれば、政府としては及第点というわけだ。
日銀としては2%のインフレ目標がある。ただし、失業率ではなくインフレ率を目標とするのは、失業率とインフレ率は逆相関(一方が増えるともう一方が減る)の関係になっていることが知られているからだ(フィリップス曲線)。2%インフレが、ほぼ3%程度の完全雇用失業率に対応しているのだ。
実際の経済では、失業率とインフレ率の間に、完璧な「1対1」対応があるわけではない。失業率が下がっても、インフレ率がまだ上昇しないということもある。今はそうした状況であるが、失業率が下がって雇用の確保ができていれば、インフレ率はさほど心配する必要はない。
もっとも、インフレ率が上がらない理由をきちんと理解しておいたほうがいい。フィリップス曲線を詳細にみると、両者の間は、GDP(国内総生産)ギャップを介在して、逆相関になっている。GDPギャップと将来のインフレ率の間には安定的な関係があり、GDPギャップがマイナスで大きいと、将来の物価が下がるのだ。