ガンが転移しても、治療できるようになるかも…!?
生涯のうちに、2人に1人は発症すると言われている、ガン。進行すると、ほかの場所へ移って腫瘍を形成する「転移」が起こることでも知られています。しかしガンの転移については、未だ明らかになっていない部分がまだ多く、十分な治療方法も確立されていませんでした。
これまでのガン細胞の転移は、マウスの臓器にガン細胞を移植し、免疫組織化学染色法やイメージング技術を用いて観察していました。しかし細胞ひとつひとつを観察する方法はなく、1細胞レベルでガンの転移を見ることは長年の課題でした。
今回、東京大学大学院の上田泰己教授をはじめとした、東大や理研の研究員グループが確立したのは、そんな課題を解決できる新技術。マウスの全身・全臓器を単一細胞レベルで解析できる、画期的な技術です(論文は雑誌Cell Reportsにて公開)。
この技術を可能にしたのは、「CUBIC(Clear Unobstructed Brain/Body Imaging Cocktail)」という透明化試薬。この試薬と、従来から行なわれてきた病理学的な解析方法や、生物発光イメージング法を組み合わせて、新しい技術の基盤を確立しました。
研究チームはこの技術を使って、マウスの体内でガン細胞が転移し、増殖する様子を確認することができたのです。
今回の研究は、9つの異なるガン細胞を移植した12のマウスを使って行なわれました。ガン細胞の塊の大きさや体積、分布を推定するためにCUBICを使い、ガン細胞が増殖や転移する様子を観察したのです。
たとえばあるマウスでは、わずか2週間で肺にガン細胞が定着するのを確認したとのこと。さらに、脳内のひとつひとつのガン細胞と血管を見分けることができました。また、転移の過程だけでなく、抗ガン剤の効果がどのように現われるのかも、貴重な過程も見ることができたとのこと。
今回の研究はマウスでの実証ですが、ガンが転移するプロセスについて人間と共通する部分が発見できれば、人間でも活用できるはず。ガン転移の研究を加速させてくれそうなこの新技術で、将来、救われる命が増えることを期待したいですね。
Image: Pixabay
Source: Cell Reports, 東京大学大学院医学系研究科・医学部, YouTube(1, 2)
Reference: 全国健康保険協会
George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(小松亜矢子)