日本の食の安全基準は国際的に大きく後れを取っていた~「日本産は安心」は自意識過剰?

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安全基準が世界と大きくかけ離れている

安倍政権は日本の農林水産物・食品の輸出拡大を目論んでいる。今年10月1日付で農林水産省に輸出促進課を新設。水産物、加工食品、コメ・コメ加工食品、青果物、牛肉、茶などを「戦略8品目」と位置づけ、12年に農林水産物の輸出額が約4500億円だったのを20年までに1兆円に拡大する方針だ。

TPPの大筋合意を受けて、海外の農産物が日本に輸入され、日本の農家の経営が圧迫されることがよく報じられるが、逆にこのTPPを活用して輸出強化を図れば、日本の農家にも活路が見いだせることをアピールする狙いもある。

しかし、「大きな障壁」も複数残されており、現状のままでは輸出拡大策は「画餅」に終わってしまう可能性も高い。

「戦略8品目」の輸出拡大計画を見ると、水産物(1700億円→3500億円)、加工食品(1300億円→5000億円)、コメ・コメ加工食品(130億円→600億円)、林産物(120億円→250億円)、花き(80億円→150億円)、青果物(80億円→250億円)、牛肉(50億円→250億円)、茶(50億円→150億円)といった具合だ。

輸出拡大で最も大きな「障壁」となるのは、日本の農産品や加工食品は、世界の安全管理基準と大きくかけ離れている点だ。世界市場で通用する国際的な認証規格を日本の農家ら多くの生産者が取得していないのだ。

国際的に認知されている認証規格の一つが、「グローバルGAP(適正農業規範)」だ。栽培履歴が管理できやすいように作業内容の記録を小まめに残していくなどの国際的な認証規格で、有害物質や異物混入など安全面で危害が発生するリスクを最小に抑えるための管理手法でもある。厳格な要求事項と運用規則で構成されている。

たとえば、農薬散布の工程で誰がいつどの種類の農薬を散布したのかを記録するほか、従業員以外が作業場に入る場合は、入退室の記録を細かく残さなければならない。危害が発生すれば、誰がいつどのような作業をしたかを把握できるようにするためだ。

また、作業場には救急箱の設置も義務付けられ、常備薬の中身まで問われる。労働環境に対するチェックだ。2011年からは選果・出荷段階まで管理範囲が拡大、出荷場の蛍光灯などの照明器具はフィルムでカバーしなければならない。万一、破損した場合の異物混入を避けるためである。

グローバルGAPを取得していれば万全というわけではないが、生産者の経営に対する姿勢を問う指標の一つであり、何よりも事故の発生比率を抑え、万が一事故が起こった際には原因を特定しやすくする仕組みでもある。

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