2013-02-21 – 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」 再審請求異議審、3月6日に決定 福井女子中学生殺人事件

先日、この件についてマスコミの取材を受け、その前に、再審の決定書も一通り読んでみたのですが、取材に対して言ったのは、異議が棄却されるかどうかは、五分五分で、結構微妙なものがあるのではないか、ということでした。
確かに、この事件の有罪判決を支える証拠構造を見ると、上記の記事で紹介されている弁護人の主張のように、複数の関係者の供述には変遷があるものの、元被告人について、犯行直後に身体に血痕が付着した状態にあるのを見た、犯行告白(その評価には確かに微妙さはあるものの)を聞いた等々、犯人性を指し示す間接事実、状況証拠になっていて、強固、とは言えないものの、それなりに有罪認定を支えてはいます。確定判決は、供述の変遷や、客観証拠との食い違いなども考慮しつつ、そういった関係者の供述は、主要部分では符合しており信用できると判断しています。そこを、新規の証拠で合理的な疑いを生ぜしめることができるかどうか、が問われているわけです。
再審決定では、現場で発見された凶器の包丁と創傷が合わず、現場には存在しなかった凶器が使用されたとしますが、そうであるとしても、確定判決で認定された元被告人の犯人性について合理的な疑いを生じさせるかどうか、微妙さがあります。これは、上記の記事でも指摘されていて、再審決定でも指摘されている、確定判決では心神耗弱者による計画性のない衝動的な犯行と認定されているところと本件の実態が合わない、という点にも関わりますが、心神耗弱者による犯行だから計画性がなく衝動的、というものでもなく(例えば、統合失調症で心神耗弱が認定される被告人について、同時に、責任能力が肯定されるにあたり犯行の計画性や冷静さ、犯行後の罪証隠滅行為といったことが指摘されることもあります)、上記のような、脆弱性を抱えるとはいえ相応の有罪の証拠構造は存在する本件で、合理的な疑いを生ぜしめるだけの事情に、それらがなるのか、ということについては、かなりの微妙さがあるのではないかと、私は感じました。異議を認容する、棄却する、どちらでも書ける証拠関係ではないかと思います。あとは裁判所の、全証拠に接した上での心証次第でしょう。
それ故、異議審の結論については予断を許さないものがあり、弁護人としても楽観は禁物ではないか、と見ています。

引用元: 2013-02-21 – 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」.

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