西辻一真「ETV特集・被災農家を救え・若きビジネスマンが挑んだ農業再生550日」


 ETV特集で西辻さんの被災地での活動が特集されていた。
 西辻さんは、耕作放棄地ゼロ化をめざし、2007年に京都で農業ベンチャー「マイファーム」を起業。全国で80ヶ所の体験農業を展開するまでになり、注目されていた。
 その経緯は『マイファーム〜荒地からの挑戦』に詳しいが、その彼がマイファームの社長を辞めたと聞いてビックリしたのが7月だった。
 今日の番組でも、西辻さんが会社によったときのスタッフの冷え切った様子を映していた。被災地に入れ込み、本業をほとんどスタッフに任せきりにしたため、ユーザーからも不満がでていたという。被災地の事業のために1500万円もマイファームが立て替えることにもなってしまった。その結果、被災地からの撤退を求めるスタッフとの溝が埋まらず、社長を首になったということのようだ。
 マイファームの理念は農業の再生ではなく、自産自消による耕作放棄地の再生だ。
 番組紹介ではカッコ良く「「農地の再生」から「人の営みの再生」という次のステージへの挑戦だった」と書かれているが、マイファームは今は順調とはいえ、足元も固まっていない時だ。いくら未曾有の大災害への緊急対応とはいえ、そんな大変なことに挑戦するなんて聞いていないぜ!という声が出るのも無理はない。

 辞められた後、京都を離れて東北に行ってしまうんだという噂もあったが、会社のHP(8月4日付)では「西辻一真は創業者として営業・新規事業開発に専念し、福島雄裕は経営や事業戦略の立案を担当していきます」と出ていた。どういうことかな、と思っていたが、番組によるとマイファームにスタッフとして残って1ヶ月に一度だけという条件で被災地に入ることもできるようになったということだった。

 一方、番組が追っていた被災地の事業は、なんとか1年目の収穫にたどりつき、現地の農家の方も、来年への希望を語られるようになっていた。
 本当に良かった。


 被災地の復興は遅れているという。番組では、行政が取り組んでいたイチゴファーム事業も、最初の150億という計画からは四分の三に後退した上、今も実現できていないそうだ。だから、西辻さんが加わり収穫した農地の回りには、被災したまま放置された農地が残っていた。
 これだけのことを実現した西辻さんだが、彼を追いつめたお金は、たったの1500万円だ。150億の千分の一にすぎない。
 最初は全額を国の補助金で賄おうという目論見だったが、上記の事業が先行しているので追加申請はできないと市に言われ、半分を補助してくれる別の補助金を申請したが、4月にすぐ交付してもらえるという期待に反し、8月まで降りなかったという。
 いったい僕たちは何のために復興増税に応じたのだろう。まして一部ではお金が潤沢にあると言うじゃないか。こんなことをしていて、良いんだろうか!?

(おわり)

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