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HDMI出力機能が追加されたEOS 5D Mark III 実写テスト

撮影・解説:柳橋伸幸 撮影協力:石渡正士・花村也寸志

キヤノンEOS 5D Mark IIIの新しいファームウェア Version 1.2.1と新ピクチャースタイルファイル「ビデオカメラXシリーズ風」が公開された。プロの現場でどのように活用できるのか、実写テストで検証を行なった。

img_products_eos01_01.jpg 最新ファームウェアを搭載したEOS 5D Mark IIIでテスト撮影。カメラを構えているのが筆者。
取材撮影:坂上俊彦

撮影中の外部モニタリングが今まで以上に簡単に

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かねてからインフォメーションされていたように、EOS 5D Mark IIIの機能を向上させる新ファームウェアの無償提供が、4月30日より始まった。そこで、特に目玉である「HDMI出力対応」について検証していきたい。ちなみに、このHDMI出力機能は、キヤノンのDSLRとしてはEOS-1D Cに続いて2機種目となる。

これまでは、カメラにHDMI端子を接続すると液晶モニターは消灯していた。しかし、今回の新ファームウェアでは液晶モニターと外部モニターに同時出力が可能となり、撮影しながらでも映像のモニタリングが可能となった。早速、検証してみよう。

検証① 液晶モニターと外部モニターで映像を同時に表示

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img_products_eos01_04.jpg 「HDMI出力+液晶」のメニューで「同時表示する」を選択すると、カメラの液晶モニターと外部モニターに映像を同時表示できる。従来、複数のモニターで見るには、HDMI/SDIコンバーターや同機能を内蔵する小型モニター等が必要だった。

まず、同時表示を行なうには、EOS 5D Mark IIIの設定が必要だ。「HDMI+液晶」を「同時表示する」に設定して、あとはHDMIケーブルを差すだけ。筆者はこれまで、HDMI/SDIコンバーター付きの5.6インチ小型モニターを通して、外部モニターに出力していたが、これが不要になる。実にシンプル。簡単にモニタリングできた。

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ライブビュー中でも、カメラの液晶画面に現れる、絞りや感度といった撮影情報やAFフレームは、外部モニターには一切表示されない。また、MENUを操作している時、外部モニターは黒味になる。クライアントには余計な情報は見せたくないという、ユーザーに対する配慮が感じられる。

「機動性やコンパクトさを重視しながらも、クライアントにモニタリングしたい」といった撮影に適している、と感じた。

注意すべきなのは、収録後、カメラで動画を再生する際は、同時表示されないこと。カメラ側だけ再生される。

外部モニターへ再生するには「同時表示しない」に設定することで、従来通り、カメラの液晶が消灯したまま外部モニターで再生、となる。

img_products_eos01_06.jpg EOS 5D Mark IIIで撮影した動画から抜き出した画像。ピクチャースタイルは、ふだん筆者が使用している「ニュートラル」。コントラストをマイナス4にしている。
モデル:渡辺早織(ABP)

HDMIから出力した映像を外部レコーダーで収録可能に

今回、ユーザーが一番注目しているのは、やはり、外部レコーダーでの収録だろう。HDMI端子から高画質の非圧縮映像YCbCr 4:2:2、8bitが出力可能となり、外部レコーダーへの収録や、画質劣化が少ない映像データでの編集など、制作現場における効率化が期待される。

実際に試してみよう。まず、先に解説したように「HDMI+液晶」を「同時表示する」に設定。次に、出力フレームレートの選択だ。すべての動画記録サイズで、外部レコーダーに合わせて「自動/24p/50i/60i」から出力フレームレートを選択できるようになった。今回は「HDMI出力フレームレート」を「60i」に設定。(動画記録サイズは1920×1080 30fps ALL-I)

さらに、今回、HDMI出力した映像には、タイムコードを付加することが可能となっている。そこで「タイムコード」を「入」に。

そして、HDMIの記録コマンドを設定する。「タイムコード」→「HDMI」→「記録コマンド」を「入」に設定。これにより、HDMI出力した映像を外部収録する際、5D Mark III側の撮影開始/停止と、外部収録側の記録開始/記録停止を同期させることができる。このとき、Ki Pro Miniを使う場合は「HDMI機器制御」を「切」に設定しておく。

検証② HDMI出力の映像信号を外部レコーダーで収録

[Ki Pro Miniでの記録]
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img_products_eos01_08.jpg AJAのKi Pro Miniをフィールドで使用する場合は、上の写真のようにリグを使ってカメラ、Ki Pro Mini、バッテリーを一体化させる方が、現場でのハンドリングがしやすい。写真に写っているリグはサードパーティ製のEOS C300用ベースリグ。
[NINJA 2での記録]
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img_products_eos01_10.jpg AtomosのNINJA2はモニター機能を搭載した外部レコーダー。モニターの背面に小型バッテリーを取り付けるようになっている。カメラのアクセサリーシューに取り付けたり、上の写真のようにカメラと並べて三脚に取り付けることができる。
[新ファームウェアで追加された機能]
img_products_eos01_11.jpg 出力フレームレートの選択機能
img_products_eos01_12.jpg タイムコードの付加機能
img_products_eos01_13.jpg 外部機器の記録コマンド対応
新しいファームウェアでは、HDMI出力のフレームレートを選択できたり(自動/24p/50i/ 60i)、HDMI出力にタイムコードを付加することが可能。またHDMIの記録コマンドを「入」にすると、カメラ本体で録画を開始すると同時に、HDMI端子に接続した外部レコーダー側でも自動的に録画がスタートする。

今回使用した外部レコーダーはKi Pro MiniとNINJA2。それぞれ用途と特長に違いがあり、重さや大きさにも違いがある。

コンパクトさ、軽さで言えばNINJA2に軍配が上がる。モニター兼レコーダーとなっていて、タッチパネル操作が直観的で、項目も少ないので、わかりやすい。

それに比べ、Ki Pro Miniはややプロ仕様となっている。これは、業務用カメラからDSLRまで幅広い用途に対応しているためだが、そのぶん大きく、重くなっている。

また今回、Ki Pro Miniをカメラの後ろに設置したので、液晶を正面から覗くことができなかった。MENU操作や、手持ち撮影にはちょっと不便かもしれないが、Ki Pro MiniからSDIアウトが可能なので、モニタリングには重宝すると思われる。

どちらのレコーダーも、HDMI端子で入力できること、Apple ProResやAvid DNxHDで収録できることは共通している。状況に合わせ、工夫してもらえたらと思う。

では、実際に撮影してみよう。EOS 5D Mark IIIのSTARTボタンを押すと、Ki Pro MiniのRECボタンが点灯し、液晶画面のタイムコードが回り始め、録画が開始された。

NINJA2はEOS 5D Mark IIIの映像をモニタリングさせた状態で、STARTボタンを押すと、上下に赤い帯と、小さなRECの文字、タイムコードが現れ録画が開始される。また、画面をタッチすることで、全撮影情報を消すことができた。そして、どちらのレコーダーも、カメラ内のCFカード、またはSDカードに同時録画されていた。

一つ注意したいのは、HDMI出力には音声がエンベデッドされないこと。今後の改善に期待したいところだ。

Ki Pro MiniはCFカードに、NINJA2はHDD(撮影はSSDを推奨)に記録する。撮影後すぐに、カードリーダーや専用のリーダーを使ってPCに取り込める。今回は、どちらもProRes 422 HQで収録したので、撮影後のコーデック変換が不要になり、時間の節約になった。Final Cut Pro7に直接取り込むこともでき、すぐに編集が始められる状態になる。さらに、タイムラインに持っていくとタイムコードも問題なく付加されていた。これはかなり画期的なことだ。

検証③ 外部レコーダーで収録したらすぐにPCで編集

img_products_eos01_14.jpg HDMI出力を外部レコーダーで記録するのと同時に、カメラ内のCFカード、SDカードにも記録できる。動画のコーデックはMPEG-4 AVC/H.264。
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img_products_eos01_16.jpg HDMI出力の非圧縮信号を、外部レコーダー側でノンリニア編集用のコーデック(Apple ProResやAvid DNxHDなど)で変換してメディアに記録する。カードリーダー経由でこれをノートパソコンに読み込めば、撮影後すぐに編集ソフトで作業を始めることができる。

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外部レコーダーのファイルを編集ソフトに取り込んだところ。コーデックなどが表示されている。タイムラインに動画を配置すると、タイムコードが付加されているのもわかる。

映画やドラマ撮影を意識した新しいピクチャースタイル

新ファームウェアの提供に加えて「ビデオカメラ Xシリーズ風」というピクチャースタイルファイルが新たに追加された。キヤノンの業務用デジタルビデオカメラ(Xシリーズ)で撮影した映像に近い色調になっているようだ。

検証④ コントラストがやや低めの新ピクチャースタイルファイル

[スタンダード]
img_products_eos01_19.jpg 「スタンダード」のピクチャースタイルで撮影した動画は、コントラスト、色の彩度ともに高めなので、そのままではプロの現場には適していない。

[ビデオカメラXシリーズ風]
img_products_eos01_20.jpg 「ビデオカメラXシリーズ風」のピクチャースタイルは、キヤノンの業務用ビデオカメラ(XF305/XF300)のようにコントラスト、彩度ともに低めの仕上がりとなる。

「スタンダード」のピクチャースタイルに比べてかなりコントラストが低めで、ハイライト側は抑えられ、シャドー部側は持ち上がり、全体的に圧縮されてる。また、中間部はやや暗部側にシフトし、かなり抑制の効いたガンマになっているようだ。撮影した画を見ると、黒い階段や植え込みの暗部がそれなりに持ち上がっていて、最暗部の黒いパンツや黒髪も、ディテールがあるかは疑問だが、若干持ち上がっている。

彩度は、花や服を見るとblueとcyanにあまり変化がないのに対し、redとyellow、greenは大きく抑えられている。個人的には、もう少しred側の彩度が高い方が好みではある。とはいえ、映画やドラマ撮影を意識したピクチャースタイルとなっているのは事実で、動画としてはかなり使いやすくなっているのではないだろうか。詳細設定やWB補正も使って、より積極的に活用してみたいと思う。

最後にもう一つ、主に写真向けの新機能となる「F8クロス測距対応」を紹介しよう。新ファームウェアでは、開放F8になるレンズを使用した状態で、中央測距点でのAFが可能となった(従来はF5.6まで)。

これにより、より遠くの被写体でもAFが対応するようになり、望遠レンズを使用したスポーツやネイチャーなどの撮影に威力を発揮する。例えば、エクステンダーを装着して開放F8になるEF600mm F4L IS II USMとエクステンダーEF2XIIIの組み合わせでもAFが使えるのだ。「F8レンズでのAFの撮影領域拡大」に貢献するものと思われる。

[新製品情報] 軽量・小型の高画質標準「L」ズームレンズと、EOS 5D Mark III を組み合わせた「EOS 5D Mark III・EF24-70L IS U レンズキット」が6月13日に発売。従来からの「EOS 5D Mark III・EF24-105L IS U レンズキット」に加え、EOS 5D Mark IIIのラインナップが強化される。


協力:キヤノン(株)・キヤノンマーケティングジャパン(株)


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