話題の大統領候補ドナルド・トランプ氏。
その「政策」や「哲学」が報道されることは少ない。
しかし、トランプ氏を「政策」の観点から見たときに、
報道とはまったく違う氏の姿が見えてくる。
今回はドナルド・トランプ氏のスローガン。
そして、彼の「経済政策」について
番組キャスター里村英一と
及川幸久(幸福実現党外務局長)が紹介する。

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“Make America great Again”
(偉大なアメリカを再び)

偉大なアメリカよ再び

里村 オバマ大統領は「Change」をスローガンに
していましたが、
トランプ氏は「Make America great Again
(偉大なアメリカを再び)」を掲げています。
これはどういうことでしょうか。

及川 20世紀、アメリカはイギリスを抜いて
世界の覇権国になり、戦後、米ソ冷戦の中で
二大強国となった。
そして、ソ連が崩壊して、ついにアメリカ一強となり、
世界で最も偉大な国、最も強い国となった。
20世紀は、それを謳歌してきたわけです。
しかし、20世紀の終わりから21世紀にかけて、
アメリカはどんどん衰退し、オバマ政権になってから
それが見事に現れてきました。
特に経済が衰退していきました。
それに対してトランプは、「このままでいったら、
本当にアメリカはどんどん他の国に負けていく」と
唱えているわけです。
彼は具体的に中国にも負けている、メキシコにも
ロシアにも日本にも負けている、と言っています。

里村 手厳しいですね。

及川 「こんなに負け続けるアメリカでいいのか。
アメリカをもう一度、世界一にしよう」というのが、
彼のスローガンですね。

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里村 それとは逆に、オバマ大統領がやったのは、
アメリカを「普通の国」にしていこうということ
でした。
それに対して、それをよしとしていない声が
トランプ氏を押し上げている。

及川 さっきの里村さんのたとえにあったように、
アメリカが会社なら、アメリカ国民という株主たちが
「こんな会社じゃだめだ」と。

里村 売上も株価も下がっていると。

及川 もう一度、このアメリカという会社の価値を
上げてほしいという声が、潜在的にあったんですね。
それが彼の人気を押し上げているという感じが
します。

里村 トランプ氏なら自社(アメリカ)の株価を
上げてくれると。
アメリカの株価を上げるため、偉大なアメリカを
取り戻すために、彼が政策として行うであろうことを
トランプ氏の発言から二つにまとめました。


トランプ政策の二つの方向性

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里村 一つは、「仕事を創り出す」
これは主に経済面です。
もう一つは、「より効率的な世界の警察官になる」
これは外交・軍事面だと思います。
まず1番目。仕事を創り出すという部分。
雇用の創造というのは選挙の一番のポイントに
なると思いますが、これについてトランプ氏は
どういう特徴がありますか?

「仕事を創り出す」=トランプの経済政策

及川 経済政策を彼は雇用に絞り込んでいます。

及川さん1s

及川 例えば移民問題にしても、結局、不法移民が増えて
彼らが仕事をどんどん取ってしまい、アメリカ人の
仕事が奪われている。
雇用政策という意味でも、移民問題をしっかりやる
べきだということ。
それから中国などの他国にアメリカの企業が
どんどん移転しているわけです。
工場や、しまいには本社まで移転する。
その原因は、アメリカの税金が高すぎることです。
アメリカは世界でもっとも法人税が高い国の一つに
なっているので、その法人税を下げるべきだと
いうのが彼の主張です。
法人税を下げる理由は、アメリカの企業にもう一度、
海外からアメリカに戻ってきてもらい、
アメリカで雇用を創り出してほしいというのが、
彼の政策です。

中間層に向けた経済政策

里村さん1s

里村 法人税について、アメリカ共和党は減税という
主張ですが、富裕層や中間層に対してはどのように
言っているでしょうか。

及川 彼は、単純に税金を下げるという言い方は
していないんですよ。
日本もそうですが、アメリカも税制がある一方で、
控除が多いわけですね。
彼は主にミドルクラスといわれる中間層に
対しての控除を今あるものはなるべく残して、
逆に富裕層の控除は複雑すぎるので
なくしたほうがいい、という言い方をしています。

里村 日本のマスコミは、トランプ氏自身が
億万長者なので、金持ちの味方をしている
というとらえ方をしていますが、
必ずしもそうではないわけですね。

及川 彼は完全に中間層の味方をしよう
としていますね。実はオバマもヒラリーも
そうなんです。

里村 一番票が多いところですからね。

及川 でも、実際にはオバマに7年やらせてみて、
じゃあ中間層が豊かになったかというと、逆だと。
「アメリカの失業率は下がって雇用は増えた、
だからアメリカのFRBは金利を上げた」ということに
なっているわけですが、彼が思っているのは
「いや、そうじゃない。実際にはオバマ政権の間に
本当に職が見つからなくて、もう職を探すのを
諦めた人たちが、どれだけ多くいるか。
その人たちは雇用統計の数に入っていないために、
失業率が下がっているんだ」と言っています。

里村 雇用の統計って、仕事が欲しいんだけど
仕事に就けない人たちの数ですからね。
だから、仕事に就くこと自体を諦めている人たちは
入っていないとすると、分母が違ってくるわけですね。

及川 そのとおりですね。
だから彼が言うには、本当の潜在的な失業率は
20%ぐらいあるんじゃないかと。

里村 20%!?

及川 これは極端だし、正確じゃないかもしれません
が、少なくとも今、数字上で出ている数じゃないと。
実際に、確かにいま、アメリカは景気が戻ったので
金利を徐々に上げることになったわけですが、
そんなによくなったかというと、アメリカの人たち、
特に中流層以下の人たちに実感はないですね。

里村 日本の株価も、今年に入ってから
連日下げています。
その理由として、中国経済の先行き不安だけでなく、
一部、日本のアナリストたちが挙げているのが、
アメリカの景気減退です。
彼らは今の極端な原油安の中で、アメリカの競争力が
低下していることを指摘しています。
そして、昨年12月のFRBのアメリカの利上げは
間違っていたんじゃないかと言っています。

及川 まったく根拠のない話ではないと思いますね。
例えばニューヨークやロサンゼルスのように
富裕層の多い大都会は別として、
アメリカの地方、田舎ではゴーストタウン化している
ところが多々見られますから。

「インフラ整備」で雇用を生み出す

れご

里村 もう一点、共和党の他の候補との大きな違いと
して、「インフラ整備」ということを言っています。

及川 これは共和党らしくない話で、
要は大きな政府的な政策なんです。
道路とか空港、橋などを補修して、そこに政府が
お金を使うべきだと言っています。
これは共和党ではタブーなのです。
そういうところに政府がお金を使うということは
増税につながります。
そして、増税につながることは共和党支持団体から
必ず批判を受けます。だから、まず言わないんですね。

里村 トランプは、なぜインフラ整備を言っているの
でしょうか。

クレーン

及川 これも雇用の創出のためですね。
インフラ整備は本当に一般的に公共事業ですから、
それをやれば非常に多くの人たちや産業が
その恩恵を受け、それによって仕事が増える。
今、アメリカに必要なのは、とにかく仕事を創り出す
政策なのだと。そのために公共投資をしたら、
ただですら政府の予算が足りないのにどうするんだ
と言われますが、トランプが言っているのは、
「お金はいくらでも引っ張って来れるだろう。
そこはもっと工夫すべきだ」と。
これは経営者の視点ですね。
資金繰りはいくらでもやり方がある。
何も毎回政府の借金だけじゃないだろう、
ということを言っています。

里村 幸福実現党でも言っているように、
必ずしも税金を投入するのではなく、
債権発行によって資本を集めるなどして
インフラをつくるという方法もありますね。

及川 その辺をトランプ自身は結構強調して、
いまアメリカに必要なのは、仕事を増やす政策なのだ
と言っています。

里村 我々からすると、アメリカには空港はたくさん
あるし、高速道路も車線が広いし、インフラは全部
できているんじゃないかと思いますが。

じゃんくしょん

及川 ただ、アメリカに住んでいて感じるのは、
高速道路はガタガタで穴だらけ。
空港は“shabby”というか、みすぼらしい。
要するに、お金をかけていないんですよ。
むしろ日本やアジアの空港のほうが、
はるかに近代的です。
アメリカのインフラは、非効率どころか、
危ないですね。
アメリカにはいろいろな橋がありますが、一説では、
ほとんどの橋が危ないと言われてるんですよ。
中国どころじゃなくて、アメリカの橋も
いつ落ちるかわからないと。
アメリカは、橋や道路などの社会資本を、
世界で最初に整備した国ですが、その後に、
補修したり新しくしたりしていないんですね。

里村 税金が高くなるから。

及川 そうです。そういう批判を受ける政策は
やりたくないという、プロの政治家的な考え方が
ずっと流れてきたんです。

里村 それは共和党だけではなく、民主党もですか?

及川 もちろんそうです。
経営者の視点からいったら、まず危ない。
それで事故が起きたほうが、よっぽどお金が
かかるじゃないかということです。

TPPでアメリカは日本に負ける?

おばま

里村 トランプ人気が少しずつわかってきました。
経済政策でいうと、TPPに反対していますね。

及川 これに関してもまったく一貫しています。
TPPはアメリカの仕事を減らす、と言っています。
彼はアメリカに競争力がないことがわかっている
わけですね。
いま、TPPをやったら、アメリカの仕事がますます
日本や他国に取られるだけじゃないかと。

及川 トランプからみたら、そもそもTPPの交渉が
下手だと。
結局、プロの政治家にこんな交渉を任せると、
アメリカに不利な結果にしかなっていない。
我々ビジネスマンがやったらこんな交渉はしないよ、
というのが彼の主張です。

里村 日本では、アメリカからグーッと押し込まれて、
日本の政治家や官僚は交渉が下手だから、
アメリカにTPPを押しつけられているように
言っていますが、まったく逆ですね。

及川 まったく逆なんです。だからトランプは
こう言っているんです。
「私は自由貿易主義者だ。自由貿易は否定しない。
しかし、自由貿易をやるならうまく交渉しないと、
どうして国益になるんだ」と彼は言っているんですね。
その意味でTPPに反対しているんです。

里村 日本国内では、ややもするとTPPに反対の方が
保守系にも多いのですが、実は、アメリカから日本は
脅威と思われているんだよと。
逆にチャンスなのだということを言いたいですね。

及川 そうです。それをトランプさんのほうが
よくわかっているわけですよ。
(第3回につづく)

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