セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は、エイチ・ツー・オー リテイリングに百貨店3店舗を譲渡し、資本業務提携することを柱とするグループの構造改革を発表した。これまでの成長を率いた鈴木敏文前会長路線との決別に注目が集まったが、市場からは「ノー」を突き付けられた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 田島靖久)

 今年7月中旬、セブン&アイ・ホールディングスIR部の金子裕司シニアオフィサーは、井阪隆一社長の特命を受け、阪急阪神百貨店を核に小売業を展開するエイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)の役員と極秘に会談していた。

「そごう神戸店など3店を譲渡したい。検討してもらえないか」

 金子氏の提案は寝耳に水だったが、関西地域でドミナント戦略を進めているH2Oにとっては願ってもないチャンス。わずか10日余りでトップ会談が実現、数回の交渉を経た後、2カ月余りで両社は資本業務提携することで基本合意した。

セブン改革“不発”の舞台裏、百貨店リストラも失速「100日プラン」を発表する井阪隆一・セブン&アイ・ホールディングス社長。会見では、過去の投資戦略の"失敗"を語る場面もあった Photo by Hiroyuki Oya

 巨大流通グループを築き上げた鈴木敏文前会長に代わり、トップに就任した井阪社長は、今年5月26日の就任から100日間をめどにグループの構造改革案、通称「100日プラン」を策定すると表明。133日が経過した10月6日に発表した。

 その柱が、そごう神戸店と西神店、西武高槻店の3店をH2Oへ譲渡、そしてH2Oの「Sカード」を関西のセブン-イレブン約2500店でも使えるようにするというもの。その上で、57億円分の株式を相互に持ち合う方向で協議を進めるとしている。

そごう・西武 全ての引き取りをJ.フロントに打診

 H2Oにとって、3店を継承すれば悲願だった売上高1兆円を達成することができ、傘下にないコンビニエンスストアの顧客との接点を持つこともできる。対するセブン&アイも、業績が悪い百貨店事業にメスを入れ、収益を上げている「首都圏の店舗に経営資源を集中させる」(井阪社長)ことができるとしている。

 だが、実はセブン&アイは、H2Oより前に、別の流通グループに話を持ち掛けていた。その相手は、大丸松坂屋百貨店やパルコなどを傘下に持つJ.フロント リテイリング。しかも、3店だけではなく「そごう・西武の全てを引き取ってくれと打診していた」(百貨店関係者)というのだ。