河童アオミドロの断捨離世界図鑑

河童アオミドロの格安貧困魂救済ブログ。

八田八郎物語 12 海を渡る電車

2014年07月05日 | 八田八郎物語
「八郎君、今日はいいものを見せてあげよう
自転車の後ろに乗りな」

甲山からずっと川に沿った松林を下り貝類博物館を過ぎて浜に出た

「潮風が気持ちいいなあ、不幸な毎日がウソのようだ
おじさんの金色の髪は午後の海の香りがするよ」

「八郎君、見ててごらん、もうすぐ不思議な光景が見られる
俺がサナギの中で見ていた夢そのものだ」

「又三郎おじさん、な、なにが起こるんですか」

すると、海の中から緑色の電車が現れ、海の上を走って行った
水面のホームに止まると駅員さんは「高田馬場~」とアナウンスしていた

「あれはね、二周目の山手線だ
山手線は一周目は東京都内を走ってるが
二周目は甲子園の浜を走っているんだよ
表と裏がつながっているメビウスの輪だったんだよ
だから永遠の無限ループを走り続けるんだ
それに乗り込んだ俺も無限ループを走っていたわけだ
あの頃の俺は山手線から西武新宿線に乗り換える方法を知らなかったんだよ」

又三郎おじさんはふっーとためいきをつくと
僕たちに向かって手を振っているカニに向かって手を振り返した
カニたちは驚いたように一斉に穴に潜った
午後の金色の太陽は貧乏な僕らにも近所の金持ちの村上春樹にも
同じように柔らかな光を浴びせていた
西暦2469年の初夏であった

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