2017-09-15
住宅探訪
研修会・展覧会
高断熱・高気密住宅

真四角の外観と開放的な間取りが、少ないエネルギーでシンプルに冷暖房できる最大要因の1つ。ネオマワールドモデルハウス@茨城県境町

右がモデルハウス。左が展示棟。

昨日の午前中は、茨城県境町の「ネオマワールド」へモデルハウスを見学に行ってきた。上の写真はネオマワールドさんにお借りしました。

 

「ネオマワールド」は、旭化成建材が、消費者と住宅建築業者向けに造った断熱材の体験施設。「体験棟(モデルハウス)」と「展示棟(モデルハウスの部材サンプル等を展示)」の2つの建物からなる。

 

モデルハウスは真四角のシンプルな外観の延床面積40坪の建物。このネオマワールドモデルハウスを施工したのは、新住協でも一緒に活動している秩父の高橋建築さん。

 

床下の6帖用エアコン1台で家中を暖房、小屋裏の14帖用のエアコン1台で家中を冷房する。

 

断熱・気密性能の高さに加えて、地味な真四角のシンプルな外観と開放的な間取り、また室内空気を動かす納まりが、冷暖房計画をシンプルに行える最大の要因の1つだ。

 

特別なクローズド技術でなく、誰でも採用できる簡単で確実な計画と施工で、快適で省エネな環境を実現している。

 

小屋裏(斜め天井になった狭い2階の天井裏)に1台のみエアコンを置いて全館冷房する手法は取り入れたいので、忘れないようにブログを書いておく。

 

室内は撮影不可なので、外観写真のみ。

 

地味な真四角の外観と室内の開放性が、少ないエネルギーで冷暖房できる最大要因の1つ

「形態は機能に従う」の外観。冬の日射を取り入れて暖房機代わりにできる南面窓は、なぜか小さめ。

断熱・気密性能の高さに加えて、真四角のシンプルな外観と開放的な間取りが、冷暖房計画をシンプルに行える最大の要因の1つだ。

 

温かい空気は上へ、冷たい空気は下へ移動するが、真四角の外観と中央の吹抜等の開放性は、それを強く後押しする。

 

「形態は機能に従う(Form Follows Function)」という言葉は、建築の形を造る時や、その評価をするときに用いられる。シカゴの建築家ルイス・サリヴァンの言葉。

 

この建物の外観デザインはまさしく「形態は機能に従う」になっている。

 

真四角な家で、吹抜があると、室内空気は移動しやすい。逆に、外観に凸凹が多かったり、下屋の多い建物だったりすると、室内空気が上下階に動きにくいので、温度を均一にしにくいから、ダクト(太い配管)を張り巡らせて冷気や暖気を引っ張ったりしないといけないだろう。

 

昨日の現地外気温は31度だったが、小屋裏(斜め天井になった2階の天井裏)に、設置した14帖用のエアコンで、室内は、1・2階共ほぼ27度になっていた。

 

断熱性能はUA値=0.2w/㎡k、気密性能は、C値=0.27㎠/㎡とハイスペック。気密性能にこだわるため、引き戸は使用していない。

 

外壁の色は、機能性が純化されたような印象のする真っ白でも良かったかもしれない。

 

小屋裏エアコンに関する、参考になった形態と納まりを箇条書き

暖冷房による室内空気の流れ。この絵のようになるには断熱性・気密性の高さと間取りが基本。

・14帖用の壁掛けエアコンがある小屋裏は6帖。

・第一種換気システムの吸気口が小屋裏エアコンの隣にあった。

・吸気口はこの1か所だけである。吸気でエアコンの冷気を階下に落としている。冬は天井裏の暖かめな暖気を階下におとしている。

・小屋裏床に70㎝角のガラリが2か所空いており、ガラリは外せるようになっていた。

・ガラリ下には、シーリングファン(プロペラ)。これも重要だと感じた。

・ガラリ→2階→吹抜→1階とエアコンの冷気が落ちる。

・冬は逆に床下エアコンの暖気は上がり、室内を快適で省エネな状態にする。

・小屋裏の床に近い東西の壁には、トイレの換気に使うようなパイプファンが1か所ずつあり、2階の東西寝室に冷気が落とされていた。それにつながる寝室の外壁側の天井には15ミリのスリットが切られ、そこからパイプファンで冷気が落とされる。壁に手を触れると、何となく冷気がわかる程度だ。画期的、これなら個室も涼しい。よくできている。

・小屋裏からの冷気は、小屋裏につながる階段からも落ちるが、なるべく階段から冷気を落とさないようにするため、階段には低い開き戸がつけられていた。

・また、小屋裏まで続く階段は玄関の吹抜ともつながっており、玄関にも冷気が落ちるように工夫されていた。

・小屋裏から冷気が落ちるのは主にこの5か所。

・換気システムはローヤル電機製。

・換気システム本体の設置場所は階段下収納のある1階床下で、点検口を開けると音がするが、閉めると思いのほか静か。

・階段下収納には、床下エアコンも設置されていた。

・ちなみに、階段下収納の床は貼られておらず下張り合板のまま。主な用途は、設備点検室及び収納なので仕上げる必要はない。

・小屋裏と関係ないが、引き戸が多用されており、全て吊り戸でした。敷居も敷居金物も不要なので、床面がすっきりする。これにしよう。

長期使用できる仕上げ材を使ったモデルハウス

建材メーカーのモデルハウスなのに、床は無垢フローリング、壁は珪藻土、室内建具は造作、外壁は左官下地外壁、一部板張り外壁と手作り感ある地域工務店の建てるような住まいになっている。

 

旭化成建材の木造住宅向けの主力商品は、断熱材・ALC外壁・鋼管杭で、内装建材を作っていない。だから内外装仕上げ材を長期使用できる無垢フローリングや造作建具等にできたのだ。

 

カラーフロアや新建材室内建具等の内装建材を造っている建材メーカーなら、モデルハウスやショールームには自社商品を使うことになるから、内装建材は新建材になってしまう。

 

内装建材が新建材だと、建物の意匠的魅力は無くなるから、いくら温熱性能が高いエコハウスと言えども、見学にいくことは無かっただろう。

 

今日のわかった!

ネオマワールドモデルハウスは、「形態は機能に従う」の言葉どおりの素晴らしい高性能住宅。40坪の住宅が暖冷房エアコン1台ずつで済むのは良いですね。

吉田武志

有限会社ヨシダクラフト 代表取締役・一級建築士栃木県宇都宮市を中心に、手作り感のある「暖房を止めて寝ても朝寒くない快適な注文住宅」と既存を生かした「リフォーム・リノベーション」を手掛けている。創業118年の工務店(2017年現在)。

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