当り屋といえば自動車をターゲットにするというイメージがありますが、最近では、通常の歩行者を装って自転車にわざと接触し、「所持品が壊れた。」、「スマホの画面が割れた。」と主張してくる手口で、“自転車の運転手”を狙った当り屋もいるようです。
今回は、そのような自転車の運転手を狙った当り屋から身を守るにはどうしたらいいかについて、実務的な観点も交えて解説したいと思います。

自転車をターゲットにした当たり屋が存在!?彼らから身を守るた...の画像はこちら >>

*画像はイメージです:https://pixta.jp/

■相手が当り屋であることを証明するのはけっこう大変
よっぽどわざとらしく当たられた場合を除き、事故直後に当り屋であると証明できることは珍しいケースだと認識してください。また、当り屋は目撃者を準備していることもありますので、事故直後から証拠集めをしないと、事後的に相手が当り屋であることを証明することはかなり困難となります。
「警察を呼んで実況見分してもらえば証拠が残るし、相手が当り屋なら警察のリストにも載っているだろう。」と思うのはちょっと楽観的です。
警察は、物損事故の場合は簡単な現場見取図を作成するだけですし、民事不介入なので、こちらから当り屋の可能性を指摘しない限り、通常、相手が当り屋かどうかを調べません。そもそも、当り屋に前歴がなければ、相手が当り屋かどうかについて警察も把握していないといえるでしょう。
通常の交通事故の場合と同様、事故直後の現場状況や相手の損害状況を撮影しておく、相手や目撃者との会話を録音しておく、こちらに有利な目撃者を探しておく(近隣の店舗の人であれば当り屋が用意した目撃者という可能性はないといえます)、現場見取図には正確に記載してもらうことが重要になります。


とくに、自転車の場合はドライブレコーダーが付いていないので、自動車の場合よりも証拠保全には気を配りたいところです。

■当り屋に狙われないために心掛けておくべき事とは
自転車の場合、無灯火、2人乗り、一時停止違反、信号無視、歩道の走行等、軽微な(!?)違反や過失割合を高める運転をしがちです。
当り屋の立場からすれば、より強い立場で交渉できるように違反運転をしている自転車をターゲットにするでしょうから、道交法違反の運転をしないことが大事でしょう(当り屋に狙われないだけでなく、事故を防ぐ効果もありますね。)。
そのほか、自転車保険に加入することも推奨されています。自転車保険は損害をカバーできるのみならず、保険会社によって差はあると思いますが、当り屋の疑いがある請求についてはチェックされているようですので、常習的な当り屋から身を守ることもできるでしょう。

なお、自転車保険には弁護士特約が付いていない商品もありますので、契約内容には十分注意したほうがよいでしょう。

今回、自転車の当り屋に関する記事を探していたら、食パンをくわえて曲がり角でぶつかる手口の少女の当り屋が逮捕されたと書かれているウェブサイトを見つけました。
ぶつかって中身が入れ替わるストーリーのアニメみたいな体験を、一度くらいはしてみてもいいような気もしますが、当り屋にぶつかられ、加害者と被害者が、真実とは反対に入れ替わるようなことにはなりたくないですね。

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。
趣味は料理、ランニング。)
【画像】イメージです
*8suke / PIXTA(ピクスタ)

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