白内障治療薬、アキュセラが2017年に治験開始
東証マザーズ上場で創薬ベンチャー企業のアキュセラは、2017年から白内障治療薬の臨床試験を始める予定だ。白内障は老化によって眼の中の水晶体がにごり、だんだんと視野がぼやけていく疾患。失明のおそれもあるが、現在は手術でしか治せない。アキュセラは今年3月に米創薬ベンチャー企業から新薬候補の開発権を取得しており、新薬の研究開発を急ぐ。
アキュセラは米創薬ベンチャーのユーヘルス・アイテック社(カリフォルニア州)から、「ラノステロール」という白内障治療薬の候補物質を取得した。契約により中国と台湾を除く全世界で新薬を開発できる権利を得た。
「ラノステロール」は人間の体の中にある物質で、コレステロールなどの材料になる。このラノステロールには水晶体がにごる原因になっている、たんぱく質の固まりをほどく作用があることが分かった。
米カリフォルニア州立大学サンディエゴ校が実施した動物実験では、重い白内障にかかったウサギやイヌで、眼のなかにある水晶体のにごりが解消されたことが確認された。この結果を踏まえ、アキュセラも年内に動物実験を実施したうえで、来年からヒトを対象にした臨床試験を始める計画だ。
白内障は高齢者に非常に多い疾患で、早い人では50代から発病。70代では約5割、80代では7~8割の人がなる。現在は根治する薬はなく、手術でしか治らない。手術を嫌がって治療を受けない患者もいる。
また6月上旬には加齢黄斑変性と呼ばれる疾患の新薬候補「エミクススタト」について、最終段階の臨床試験結果を発表する予定だ。
加齢黄斑変性も、目の老化により生じる疾患の1つだ。網膜の中心にある黄斑の機能が失われることで、視野が欠けていく病気だ。欧米では失明原因の第1位になっている。
加齢黄斑変性の治療薬には、現在「アイリーア」と「ルセンティス」の2つの薬がある。ともに全世界で数千億円の売上高をあげる大型新薬だ。
だがこの2つは注射薬のため、患者は病院まで出かけて薬を投与してもらう必要がある。アキュセラが開発中のエミクススタトは口から服用できるので、新薬開発が成功すれば患者の利便性が向上しそうだ。
エミクススタトの開発にあたってアキュセラは08年に大塚製薬と共同開発・販売契約を締結。大塚製薬は治験にかかる経費を負担してきた。
アキュセラは目の老化に特化して、新薬開発に取り組んでいる。エミクススタトは加齢黄斑変性にとどまらず、糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫への適応拡大も視野に入れている。これらの疾患も高齢者が発症するケースが多く、現在、動物実験を進めているところだ。(企業報道部 野村和博)
[日経産業新聞5月24日付]