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だまし売りNo
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人口減少、持ち家信仰の希薄化、空き家の増加など不動産の価値が下がることは容易に理解できる。一方で供給過剰であるにもかかわらず、一部の不動産の価値が上昇することは理解しにくい。
長嶋修『不動産格差』(日本経済新聞出版社、2017年)は不動産コンサルタントによる書籍である。本書の主張はタイトルの通り、不動産の価値に格差が生まれるということである。具体的には「価値維持あるいは上昇する」「徐々に価値を下げ続ける」「無価値あるいはマイナス価値に向かう」の三極化するという。

人口減少、持ち家信仰の希薄化、空き家の増加など不動産の価値が下がることは容易に理解できる。一方で供給過剰であるにもかかわらず、一部の不動産の価値が上昇することは理解しにくい。不動産の価値が下がるばかりでは消費者の不動産への関心が弱まり、不動産業界に関係する立場として不都合があるためではないかと邪推したくなる。

ここに違和感を抱く理由は本書が不動産の価値を交換価値と見ている点にある。受託に住み続ける人にとって交換価値は、それほど重要ではない。たとえばスマホを考える。新品のスマホと二年間使用続けた中古のスマホでは前者の方が交換価値は高い。

しかし、買ったばかりの新品のスマホと二年間使用続けた中古のスマホのどちらを紛失した場合が持ち主に痛手かと言えば後者である。経済的な価値では前者であっても、後者には様々な設定や情報が含まれている。それを失うことは経済的な価値では回復できない。不動産の価値も、そのような面が大きいのではないか。

それは別として、戦後の不動産神話に対する批判は大いに参考になる。タイル張りのマンションでは雑な施工でタイルが剥がれ落ちる危険がある(135頁)。これは私の購入した新築分譲マンションでもシール材(シーリング材)が石部に浸透して黒い影が出たという問題が起きた。

本書はアフターサービスの有効活用を主張するが(130頁)、デベロッパーは「売ったら売りっぱなし」で誤魔化そうとする。私の経験ではマンション管理会社を分譲デベロッパーの子会社から独立系管理会社に変更することで、ようやく対応された。

マンション管理の分野では業者へのバックマージンが横行しているという(138頁)。これも不動産業界の後進性を示すものである。私の経験でもリプレース前のマンション管理会社は管理人をリフォームの営業に利用していた。

他にも「木造住宅が地震に弱い」が誤解であること(147頁)や9割のマンションでは建て替えができないこと(126頁)、悪質リフォームが横行していること(197頁)など不動産分野の様々な問題を取り上げている。
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掲載日:
書評掲載URL : http://hayariki.sa-kon.net/
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だまし売りNo
だまし売りNo さん本が好き!1級(書評数:3131 件)

歴史小説、SF、漫画が好き。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』はマンションだまし売り被害を消費者契約法(不利益事実の不告知)で解決したノンフィクション。

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