現代の歯科治療は、患者さんの想像をはるかに超えています。
患者さんは一般的に、歯医者何て虫歯の治療とか、悪い歯の抜歯して入歯作るとかの治療しか思い浮かばないでしょうが、そう言う仕事は我々が現時点でしている仕事のほんの一部にしか過ぎません。
今の歯科医の治療は、口腔機能再建(咀嚼、嚥下、発音、呼吸等)と審美的顎口腔系回復もしくは創造治療を全面的に行っています。
少しでも分かり易く言うと、患者さんである一般の方が想像する歯科治療は、歯冠部の修復治療(咀嚼機能回復)だけでしかない、のです。
そして、患者さん方は、歯冠が何で支えられているのか、を考えたり想像したりすることもありません。
だから、現代歯科の仕事内容が殆ど想像出来ないのです。
良く考えて下さい。
歯冠は何故、チャンと歯茎から生えていてしっかりと噛めるんでしょうか?
まず歯牙は歯根と歯冠があって1本の歯になっている、と言うことを理解して下さい。
そして、歯根部は一般的には歯冠よりも縦に長くなっているのです。
歯根の方が長いから、歯冠を支えられている、とまずは理解して下さい。
そして、患者さんは良く歯は骨にくっ付いている、と思っています。
くっ付いている部分が歯根で、それで支えられていてとは思っていても、意外な程歯根がそこまで深く骨に入り込んでいる、とは思っていないようです。
で、実際は歯根は患者さんが思っている以上に長く、骨に直接にくっ付いているのでもなく、歯根膜と言う膜状のクッションの作用をする組織を介して骨とくっ付いているのです。
そうして、骨の中に歯根が立っている状態になっていて、その骨の表面を歯茎、粘膜と言う軟組織が覆っていて口腔組織は成り立っているのです。
つまり、歯牙は、健康な歯根膜、骨、軟組織があって初めて綺麗に生えていて、キチンと機能出来ている状態になっているんです。
ここがとても大事な所です。
歯牙は、歯冠だけで存在している訳ではなく、歯根、歯根膜、骨、軟組織があってチャンとある、んです。
そして、又重要なことです。
我々現代の歯科医は、歯冠再建治療をするだけではなく、骨、軟組織再建をも仕事の範疇にしており、それが故に歯周病も再生させて治せる時代になっているし、歯根を失えば歯冠も当然失う訳ですが、人工歯根(インプラント)を用いて歯根再建も果たし、同時に骨、軟組織再建=顎堤再建治療まで請け負うようになっているのです。
つまり、簡単に具体的に言えば、歯医者で数々の手術を行う、それが我々の仕事になって来ている、と言うことなんです。
そこでなのですが、そこまでの再建、再生治療を手術で治す、と簡単に説明しても、現時点ではこれらの仕事内容は多岐に渡り、複雑化して来ていて、その為に治し方、手術の仕方、回数、内容がそれぞれのDRごとによって全く違う、と言う状況が生じています。
一筆書きの様な、道筋の通った綺麗な治療、手術ばかりではない、と言って良いでしょう。
そして、患者さん側にとって何より重要な情報は、術後の治癒経過の本当の情報だと断言します。
今現時点でも、残念ながら、術後の経過情報は何処のどのDRも詳らかに明らかにはせず、こう言うことが出来ますよ、と言う説明に徹するのみで、手術後48時間までは腫れ上がるかも知れませんとか、痛んで寝込むかもしれません、とかは言いたがりません。
何故か?理由は簡単です。
正確に話してしまえば、治療手術受けて下さる患者さんが激減するし、救える救われる患者さんが激減するからです。
手術と言う治療の怖い所は、始めたらやり切るまで止められないこと、です。
そのことの重さを、患者さん方は意外な程軽視している、と私は常々感じて仕方がありません。
だから、敢えて警鐘を鳴らすのです。
このDRと決めて、治療手術受け始めたら、しまったこの先生の手術では腫れるし痛いし血腫・痣も出来るし直ぐに歯が入らない、で後悔しても、全ては後の祭りなんです。
そうなった状態で、私とかの所に何とかして下さい、と深刻にご相談に来られたとしても、私にやり直すことは出来ないし、やり直すなら全部一から、になるんです。
で、前のDRの手術代取り返せないか、と言われたとしても、そのDRの考えがあってしていることなので、それが絶対に間違っていると証明は出来ないし、してしまった手術代は返しては貰えないでしょう。
率直に申し上げて、申し訳ないのですが、裁判沙汰に成りかけて、示談交渉の場でも、間に入った中立の立場の裁判官が、大変申し上げにくいことですが、そう言うDR選択されたのは患者さんご本人ですよね、と言って諭す、と言うのが現実なんです。
つまり、公的法律的立場の解釈でも、現在では情報がそれなりに普及していて、患者さん自身が自由にDR選択をすることが出来る、その権利をキチンと行使していない者にも責任の一端はある、と言う解釈になっているんです。
患者さん方の方からは納得が行かないかも知れませんが、それが現実の社会の姿、なんです。
だから、自衛はするだけしないといけない。
頼んだDRの本当の術後経過とか経験数とか、本当の所を確認するのは、患者さん側の責任、になって来ているのです。
そこで、DR側が偽装していたり、詐称していたりしたら、それは当然医療側の犯罪行為、詐欺行為に当たります。
逆に言えば、頼もうと思っているDRの手術の仕方、術後経過(腫れ、痛み、痣の出具合、治り方の経過)、術後の仕上がり状態、その経過、メインテナンスの状態での変化をキチンを確認すること、は患者さんの権利なんです。
そう言う情報を出し渋るDR、詐称するDR、には掛かるべきではないことは言うまでもないことです。
ただ出来ることだけにフォーカスするのではなく、経過の情報、治癒期間の辛さの情報を詳らかにするDRは信頼して良いでしょう。
ここら辺の倫理的コンプライアンスが、残念ながら、歯科業界ではまだまだ蔑ろ(ないがしろ)にされています。
私は、そのことを誰よりも嘆くDRです。
でも、そんなこと言い出したら、手術出来るのはマツゲンだけになってしまうんじゃないか!?とお叱りを受けるかも知れません。
否そうではないんです。
事実を、現実をチャンと患者さんに事前にキチンと話して置いて下さい、と言うだけの話です。
癌告知すら、当然のこととなって来ている医療界、なんですから。
然程腫れません、と言い包めて手術してしまうとか、親知らずは抜かないでも行けそうですよとか、何回も凄い大変な手術しなければならなくて、せっかく望んだ就職先を勝ち取った筈なのに、根本から諦めなければならない羽目になるとか、そう言う患者さんが想像もしていない、考えが及びもしない気の毒な状態が現出することを避けて欲しい。
そう心から願っているだけです。
しかし、私が例で挙げた事例は現実に起きていることで、それでクレームが発生して裁判沙汰に成ったとしても、裁判官は冷徹な眼で判断する、そう言うDRを選んだのですから、で終わりになってしまうかも知れないんです。
詐称と説明との差は、解釈の差でしかなく、患者さん側の主張はことごとく退けられる、社会正義は何処にあるんだ・・・と親娘3人でさめざめと涙を流すしかない、のが現実なんです。
冷酷なお話に聞こえるかも知れませんが、それが今の社会なんです。
そう言う怜悧な現実をしっかりと把握したうえで、担当医を決める、と言うことをあなたはしているでしょうか?
これは、大きな大きな問題、今後益々顕在化表在化して深刻な問題化するお話です。
患者さんよ、くれぐれも手術を舐めて考えてはいけません。
一度きりの手術で、生涯心に傷を抱えて過ごすことになってはいけません。
今我々は相当のことが出来ます。
顎堤再建、審美的歯冠再建、顎口腔系再建。
しかし、再建出来ると言う夢は、楽に易々と叶えられるものなのか?と言うこととは乖離しているかも知れない、と言う危険性を見落とさない、忘れないようにして下さい。
折角、骨再建、歯茎再建しても、もう手術は懲り懲り、インプラントはしません、と言うことが起きたら、患者さんの生涯が本当に幸せなのか?
本当の幸せを掴み取るには、途中の道は険しくても進む、と言うのは物語りとしてエキサイティングであっても、自分の実体験で味わうと途上で挫けてしまう、目的を果たすことが出来なくなってしまう人の方が圧倒的に多いのだ、と真理を語りましょう。
だからこそ、険しい道を乗り越えて目的を果たす物語り、は読者を聴衆を喜ばせ、興奮させてくれるんです。
何故なら、それは英雄譚だからです。
でも、人は誰も本当には自分自身英雄になんかなりたくない、平穏無事な人生、怖いことも危険なこともない、痛いことも辛いこともない人生、を望んでいるんです。
それには、自衛、結局自分自身で学び、知る、しかないんです。
今日は、非常に難しい話を意図的にしました。
クリスマスイブ、にする話なの?と思われるかも知れません・・・
でも、避けて通ってはいけない話、だと思うからこそ、メモリアルな時を図って書き込みました。
患者さんにとっては手厳しい話のオンパレードだったかも知れませんが、本当の真実の話、です。
このことで、業界内浄化が少しでも出来るなら、私の本望です。
失礼致しました。