ソニー「急回復」でも見えない5年後の稼ぎ方 リストラの果てに得た高収益の実態と課題

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同じ会社、同じ経営陣でこうも変わるものなのか――。

業績不振に苦しんでいたソニーが躍進している。2015年4~9月期の当期純利益は1159億円と、上期としては5年ぶりの黒字化を達成。大手電機メーカー6社(パナソニック、シャープ、日立製作所、東芝、三菱電機)の中でもトップに立った。通期の当期純利益は1400億円を計画しており、前期の1259億円の赤字から大幅に改善する見込みだ。

株式市場の評価も高い。2014年10月末に2.6兆円だった時価総額は昨年5月に4.8兆円まで膨らんだ。足元は株式市場の低落を受けて3.1兆円(1月22日時点)まで縮んでいるものの、それでもリーマンショック後にいち早く業績を立て直した“優等生”であるパナソニックや日立製作所を上回る。

CMOSは世界4割占有、過去最速で売れるPS4

「電機業界の負け組」――。約1年前、平井一夫社長ら経営陣は厳しい批判にさらされていた。成長の柱に据えていたスマートフォンが売れず、2014年9月に携帯電話事業で1800億円もの減損を発表。併せて2015年3月期の業績見通しを下方修正し、1958年の上場以来初の無配に転落した。リーマンショック以降の2009年3月期から9年間で累計約1兆円の赤字を積み上げたことになる。

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そんなどん底から、ソニーは突如としてはい上がってきた。今のソニーの実像は、セグメント別の利益で見るとははっきり浮かび上がる。今2016年3月期に利益を最も稼ぐ見込みなのはソニー生命を中心とした金融だ(営業利益1750億円を計画)。

そして成長著しいデバイス(同1210億円)とゲーム(同800億円)が続く。米アップル、韓国サムスン電子、中国ファーウェイ。世界の名だたるスマホメーカーがこぞって採用するソニーのデバイスがある。CMOSイメージセンサーだ。「電子の目」ともいわれ、スマホのカメラ部分に欠かせない。ソニーは高感度化や低ノイズ化、小型化などの技術の高さでライバルに先行する。2014年の世界シェアは4割強。ソニーの製品では今や数少なくなった世界ナンバーワンの商品だ。

ゲームではプレイステーション4(PS4)が驚異的な成長を見せている。発売から2年で全世界での累計実売台数が3000万台を突破した。PS史上最速のペースで売れており、マイクロソフトや任天堂のライバル機を凌駕する。

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