「戸建てなど使用量の多い世帯では関西電力の従来料金より安くなるうえに、キャンペーンで電気料金から月648円、1年で7776円を割引する」(ケイ・オプティコムの橘俊郎取締役)。

 関西地区で電力小売りを始めるケイ・オプティコムは、同社の光回線サービスのユーザー向けに大胆な値引き策を打ち出した。契約事務手数料や、契約期間内に解約した場合の違約金も無料にするなどの積極策が目立つ。その理由について橘取締役は「関西の方は料金に敏感というのもあるが、それ以上に競争が激化していることが大きい」と話す。

 関西地区で光回線ビジネスを展開するケイ・オプティコムだけなく、全国サービスを手がける事業者も関西限定の値引きキャンペーンを積極的に実施している。

KDDI(au)は通常最大5%のキャッシュバック率を関西では12%に(撮影:的野 弘路)
KDDI(au)は通常最大5%のキャッシュバック率を関西では12%に(撮影:的野 弘路)

 KDDIはスマホなどとのセット契約の場合に適用されるキャッシュバックの還元率を、他地域の最大5%から関西では最大12%に引き上げている。月額の電気料金が8000円以上の場合に適用されるため、8000円の12%で月約1000円以上の割引になる。

ジュピターテレコムも関西限定のキャンペーンで攻勢
ジュピターテレコムも関西限定のキャンペーンで攻勢
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 同じくジュピターテレコム(JCOM)も、同社の電力小売りサービス「J:COM電力」について、関西電力エリアだけ電気料金の第三段階料金を1年間、20%割引きする地域限定のキャンペーンを実施している。同社のケーブルテレビやインターネットサービスとのセット契約が条件で、同社が提示しているモデルでは、月1万3000円ほどの電気料金を支払っている場合は月1200円ほど安くなり、10%近い割引率になる。

 一時的なキャンペーンだけではなく、通常の電気料金を他地域より割安にしているケースも見られる。例えば「ソフトバンクでんき」で3~4人家族などを想定しているバリュープラン。電気を月に392kWh使う場合、東京電力エリアでは毎月500円の割引となり、他のセット割と合わせると2年間で1万7840円安くなるとしている。これが関西電力エリアだと、同じ電気使用量でも月1050円安くなり、セット割込みでは2年間で3万1000円もお得になるというモデルを掲載している。

関電の電気料金の高さが背景に

 関西で価格競争が激しくなっている背景には、割高な関西電力の電気料金がある。各地で原子力発電所の稼働が止まるまで、関西電力は発電電力量に占める原発の割合が5割ほどあり、電力会社の中で高い水準にあったことが大きな要因だ。

 原発の停止によって代替の燃料費がかさみ、電気料金を2度値上げしてきた。その結果、全国で最も電気料金が高い地域になっている。ある電力小売事業者は「関電の料金が高いので、他エリアより金額的な差を出しやすく、お得感を演出しやすい」とささやく。

 さらに、1月29日に再稼働した高浜原子力発電所3号機の存在も、各社の戦略に影響を与えている。「いずれ再稼働することは分かっていた。順調に稼働すれば関電の電気料金は間違いなく下がる。その前に顧客を獲得してしまいたい」(ある事業者)という思惑もあるようだ。

 2月1日には、東京電力の新たな料金プランを見た東京ガスが電気料金の値下げを発表した。同じように、関電の料金引き下げを見ながら、大阪ガスなど主要プレイヤーがさらなる値下げに踏み切る可能性もある。

 関西で価格競争が激化しているのは別の事情もある。関西は全国でも光回線の顧客獲得競争が激しく、NTT西日本とケイ・オプティコム、JCOMが三つ巴の戦いをしている。総務省によると、東京都で85.1%、全国平均でも78.3%と、光回線ではNTTグループ各社が圧倒的なシェアを握っている。それに対し、滋賀県では全国最低の40%、奈良県も2番目に低い46.1%など、NTT西日本のシェアが低い。

 それだけにケイ・オプティコムとJCOMはセット割でお得感をアピールしつつ、「電力契約を結んで既存の光回線を守りつつ、電力のセットがないNTTからシェアをさらに奪う」という戦略を打ち出している。そうした積極策が、また他の電力小売り事業者との競争を呼び込んでいるという面もある。

 今後、関電の値下げやNTTグループの電力小売りなどが始まれば、競争環境が変わることとなる。関西での激しい戦いは続きそうだ。

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