複数の男性が共同で行う意思決定は、それ以外の性別構成の場合とは異なる。その理由を明かす興味深い比較実験を紹介する。


 私たちは日々、他者と共同で意思決定をすることが多々ある。配偶者とともに車や家を選んで買う、同僚とともに仕事上の決定を下す、あるいは友人との夕食をどの店でとるか決める、といった単純なことも含め、誰かと一緒に何かを選ぶ場面はいくらでもある。

 さて、人々は共同で選択を行うとき、単独でそれを行う場合と同じ選択をするものなのだろうか? 我々の研究結果は、その答えが「集団の性別構成」によって変わるらしいことを示している。

 マーケターの間では昔から知られているが、人は複数の選択肢を与えられると、真ん中あたりの妥協的なものを選ぶ傾向がある。

 たとえば、燃費性能と内装デザインが異なるさまざまな車種を前にした消費者は、両方の性質をそれなりに備えたものを選ぶことが多い。燃費が最も優れている(しかし内装は最悪)、あるいは内装が最も素晴らしい(しかし燃費が最も悪い)という車は、納得して受け入れることが難しい。燃費も内装もほどほど、という車であれば妥当に見えるため、最も多く選ばれるのだ。

 これは「妥協効果(compromise effect)」と呼ばれるものである。別名「ゴルディロックス効果(goldilocks effect)」または「極端の回避(extremeness aversion)」とも言われる。意思決定の研究において、これは最も強固な傾向の1つとされており、マーケターはしばしばこの効果を利用して消費者の選択を誘導している。

 では、中庸を選ぶというこの傾向は、共同での意思決定でも現れるのか。我々はそれを確かめたいと考えた。研究を通して示されたのは、この効果はどんな場合にも発現するわけではないということだ(英語論文)。

 1200人以上を対象とした実験で、一部の参加者には2人1組のペア(男性同士、男女、女性同士の場合あり)で意思決定をしてもらい、残りの参加者には1人で意思決定をしてもらった。提示した一連の選択事項には、極端な選択肢(例:値段はとても高いが待ち時間の短いレストランか、とても安いが待ち時間の長いレストラン)と、中庸な「妥協点」(値段も待ち時間も他の2つの中間)がある。ペアを組んだ参加者は、共同で1つの結論に達する必要がある。つまり、2人とも選択の結果に従わねばならない。

 実験の結果には驚かされた。参加者の構成、選択事項、作業手段をあれこれ変えてみても、結果は同じであった。女性は1人でもペアでも(パートナーの性別を問わず)、常に中庸な選択を好む傾向があった。しかし男性同士のペアは、男女のペアや男性1人の場合より、極端な選択を好む傾向がはるかに強かったのである。

 すなわち、男性同士のペアでは妥協効果は起こらないということだ。

 これを他の状況に当てはめて考えてみよう。父と息子が一緒に車を選ぶとすると、燃費も内装もほどほどの中庸なものではなく、いちばん燃費のいい車か、素晴らしい内装の車を選ぶ可能性が高い。2人の男性が共同で企業戦略を決める場合、1つのアプローチにすべてを賭けようとしたり、いくつかの選択肢を完全に捨てたりするかもしれない。しかし、女性が意思決定に関与していれば、中庸な道が取られる可能性が高まる。

 なぜ、こうなるのだろうか。