HBRが指摘する日本企業の特異性と加計学園問題

山田 肇

友人がHarvard Business review(HBR)に興味深い記事が出ていると教えてくれた。Erin Meyerによる”Being the Boss in Brussels, Boston, and Beijing” (ブリュッセル、ボストン、北京でボスになるには)である。

HBRより引用

ポイントは上に掲げる図で、縦軸は「合意」と「トップダウン」、横軸は「平等」と「階層」である。2003年から2016年までに実施したインタビューの結果に基づいて各国の位置が記載されている。

わかりやすいのは「トップダウン」で「階層」という企業風土の国々で、ブラジル、中国、インド、ロシアと急速に発展した途上国が並ぶ。経営者の指示を速やかに実践したことが発展につながったのがわかる。これらの国々ではボスは絶対的な「監督」であると記事は指摘する。

対照的なのがデンマーク、オランダ、ノルウェー、スウェーデン。「合意」と「平等」の企業風土がありボスはファシリテータ(まとめ役)である。

オーストラリア、カナダ、イギリス、米国は「トップダウン」で「平等」。部下は自分の意見を自由に表明できるが決定の責任はボスが負う。HBRは、決定が下された後でも必要に応じてそれを調整できる柔軟性があると説明する。

「合意」で「階層」は三ヵ国でベルギー、ドイツ、日本。特に、日本には圧倒的に階層的なのに合意を非常に重視する企業風土がある。階層的であれば階層上位が決定権を持つはずなのに、合意形成のために根回しが続けられ時間の無駄が多い。

日本は合意形成を重視しリーダーシップを求めないのに、ピラミッド型の組織を作っている。他国にはない不思議な企業風土を持つ国とよくわかる記事であった。

加計学園問題がまだ続いている。国家戦略特区を定める目的を「産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成」のために「実現のために必要な政策課題の迅速な解決を図るため」と国家戦略特別区域法は規定している。政府によるトップダウンの意思決定を前提とする制度であると読み取れる。一方で獣医学部の新設は多くの関係者に影響する。そこで、農林水産省、文部科学省、日本獣医師会などとの合意形成のために、事務局である内閣府が走り回り、その痕跡が多くの非公式な記録文書に残っている。大学の許認可権限を侵されると感じた文部科学省や、獣医師の供給過剰を心配する日本獣医師会からそれらの文書がメディアに提供され混乱が続いている。

加計学園問題は、HBRが指摘する日本の特異性が引き起こした問題である。