白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

―水耕栽培海外事情―

2012年02月15日 | 日記

愛読するオーストラリアのWeb 雑誌の今から10年前の2002年3・4月号に載った「農業生産システムとしての水耕栽培」と言う記事の話です。10年前と言えば一昔前、当然今日とでは、その事情は大きく変わっているとは思います。しかし、東日本大震災の大津波で塩水に浸かり、壊滅的な被害を受けた農地の再生にハイドロポニックスファームの導入が話題になるようですので、日本の一般消費者にも水耕農産物に対して、しっかりしたイメージを持って頂ける機会になればと敢えて取り上げて見ました。

 

―空から見たオランダの温室群―

その内容は調査委託されたオーストラリアの地域産業研究開発公社からの報告書の要約であり、当時の主要国の農業生産システムとしての水耕栽培の実情を概括して自国の将来を展望したのですが、その事情の1部を紹介させて頂きます。

 

     ―お馴染みの水耕トマト栽培施設―

世界の傾向

商業水耕栽培産業は、過去10年間で4~5倍に成長しましたが、その生産は裕福で要求度の高い消費者の国(オランダ、スペイン、イタリヤ、英国、カナダ、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリア)に集中し、又、それらの市場に接近しようとするメキシコや中国等であります。

世界的に見て、水耕栽培の対象作物は限定され、商業的に最も重要なのは、トマト、キュウリ、パブリカ、葉レタスと切花であり、又、方式はロックウール耕とNFT耕が生産の殆どを占めています。

水耕栽培は総合防疫管理(IPM)の導入と潜在する環境問題もあって、養液の掛け流し方式から離脱方向にあります。

産業としての短、中期的な成功は、水耕栽培の技術課題の突破では無く、対象市場に焦点を絞る販売戦略です。

充分な規模を持たず集団化してない生産者は、国際的な統合生産や市場活動では “締め出し”されます。

オランダの水耕栽培産業が最も効果の高い産業モデルであり、各国が見習うべき手本と言えます。

 

―オランダを象徴するチューリップと水車風景―

オランダの事情

オランダは商業水耕栽培の世界のリーダーと認識されています。13,000余りの殆どが家族経営で、合計で10,000Ha余りの水耕栽培施設を保有し、約40,000人を雇用して、国内生産の野菜果物類の金額で50%を水耕栽培で生産しています。主要な野菜は、トマト、パプリカ、キュウリであり、生産物は輸出に絞っていて、重要な切花は、バラ、ガーベラ、カーネイション、菊であり、これらも輸出向けで栽培されています。

オランダでは水耕栽培の殆どが温室栽培であり、温室栽培のロックウール耕やNFT耕の水耕栽培への転換の理由は、優良な土壌の枯渇、土壌の病原菌汚染、土壌の塩水化、高い地下水位及び好ましい経済的見返りであります。オランダの水耕栽培産業は、情報、訓練、研究分野で、政府からの支援と手厚い援助が得られ、業界は、効率の良い商業インフラ、輸送、団体ベースの生産、商業システムを活用しています。

特に低コストの南部ヨーロッパで発生した競争の面でも、オランダの生産者は、従来の市場仲介人やセリ販売方式を離れて主要な小売業者との直接的な契約を採用しました。

 

―オランダ海抜0メートル地帯に浮かぶ温室群―

 

オランダ政府は、最近食用作物の登録化学農薬の数を600から200に減らすように法制化し、オランダの水耕栽培生産者は、市場農産物に総合防疫管理(IPM)を取り入れて対応しました。オランダの水耕栽培生産物では70%以上が総合防疫管理(IPM)対応であり、トマトとパブリカは90%以上であります。

IPMでは、害虫に対し化学物よりも生物農薬である捕食昆虫を採用し、もし、登録化学農薬の減少が普及するなら、水耕栽培は主要な成長時期に置かれ更に有利となると言います。

    ―オランダの大温室風景―

オランダの水耕栽培産業の特色:

      水耕栽培を温室栽培で容易に実施する歴史を作った。そして、水耕栽培の商業化を可能にする効率的な作物生産及び販売システムを構築して 完全に全うしようとする生産者の情熱があった。政府の産業に対する支持には、適切な法制環境の整備、訓練及び情報の準備があった。温室産業は比較的狭い地域に集中した為、容易なサービスを可能にした。且つ、市場要求に対応しての生産決定を実施して生産者を専門化し、それ故に、単品作物での最先端の効率の導入が出来た。生産者が集団化し、一緒になって生産物の販売に当たり、情報と経験を分かちあい、 時間を掛けて事業規模を広げ、今ではガラス温室は平方メートル単位からヘクタール表示となっている。 コストコントロールを含め、絶え間ない生産性の改善の結果、単品原価コスト、品質管理システム、ブランド化生産物の販売、IPMによる低化学農薬化のシンボルマークの蝶の表示を徹底した。生産方式としての水耕栽培よりも、市場ベースの生産物の品質を優先させた。

 

 

           ―オランダの花卉水耕栽培温室―                       

その成功のキーワードは:                                                                                            市場優先生産、直販社契約生産、仲介人排除、化学農薬排除の社会圧力、IPMの徹底、合理化と規模拡大、ガラス温室フルオートメ、エネ効率研究、品質徹底、計画収穫、政府継続研究援助、

       ―スペインの温室風景―

スペイン

スペインは園芸部門の迅速な成長を背景に水耕栽培産業も急速に発展した。現在のスペインの温室面積は30,000Haで、その約12%以上が水耕栽培に供されていると見積もられている。

スペインの温室生産は、EC市場参入に合わせてのオランダや英国の最良の栽培管理手法を採用し、年間を通しての好ましい温暖な気候と安い労働力のお蔭もあって成長を遂げた。

 

―病原性大腸菌汚染で破棄されるスペインのキュウリー

当初のスペインの水耕栽培生産は、貧弱なサポートインフラ、養液肥料不足、種苗ストックの欠如で停滞していた。 しかし、一度、それらの困難が対処出来ると、オランダ産業方式をモデルにして、短、中期的には産業としての継続した成功が遂げられると予測される。(スペイン農水省)

ドイツ
ドイツの産業規模は小さく、過去から水耕栽培生産は良くは見做されて来なかった。「緑の党」の後押しもあって、ドイツには水耕栽培生産は化学物質を投入する自然物でないとする感覚が広がって、オランダからの多くの輸出農産物では、オランダは多くが化学物質は使用されていないと強調して来た。 オランダは、市場では水耕栽培産物と言うよりもむしろ、「クリーンで新鮮」とのイメージに焦点を置いた品質で市場定着を図ってきた。                   

 

―ドイツ人のグリーンハウスイメージー

その他に、北米、アジア、オセアニアとそれぞれの記述があるのですが、ここでは省略させて頂きます。日本の現状については、昨年8月26日付けでブログ、「日本のハウス農業生産」で触れていますので、ご興味があれば、ご覧下さい。

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