メリル・ストリープさん、授賞式でトランプ氏を痛烈批判

メリル・ストリープさん、授賞式でトランプ氏を痛烈批判

ハリウッド外国人映画記者協会が米国のテレビと映画の優秀作品を選ぶゴールデングローブ賞の授賞式が8日、カリフォルニア州ビバリーヒルズで開かれ、「セシル・B・デミル生涯功績賞」を受賞した女優メリル・ストリープさんが、受賞スピーチでドナルド・トランプ次期米大統領を痛烈に批判した。それに対してトランプ氏は、ストリープさんについて「ヒラリーの取り巻き」で「評価され過ぎの女優」などとツイートした。

式典ではストリープさんに先立ちドラマ部門で受賞した英俳優ヒュー・ローリーさんが、「最後のゴールデングローブ賞で勝てたぞ。だって、ハリウッドに外国に記者って言葉が入ってるんだから」と、名前は挙げないもののトランプ氏と支持者たちがハリウッドと外国人と主要メディアをさかんに攻撃してきたことをあてこすった。

それを受けてストリープさんは、「ヒュー・ローリーが言ったことに続けると、この部屋にいる私たちはみんな、今のアメリカ社会で最も激しく非難されている集団に属してるんですよ。考えてもみて、ハリウッドと、外国人と、マスコミ」と強調。それからストリープさんは約6分間のスピーチで、トランプ氏の名前は直接口にしないまま痛烈に批判を重ねた。

ストリープさんは、授賞式の会場にいる俳優や候補者の多くは、小さな町や貧しい家庭の出身、片親に育てられたり、あるいは様々な国で生まれ育ったアウトサイダーだと紹介。続けて、「この1年の間であっけにとられた演技、私の心に鍵爪を深く沈めた演技」は、「この国で最も尊敬される席に座ろうとする人間が、障害のある記者を真似した姿でした」と、トランプ氏が選挙戦中にニューヨーク・タイムズ紙のセルジュ・コバレスキ記者を模倣して嘲笑したとされることに言及。

「特権や権力、抵抗する力のすべてにおいて、自分が勝っている相手です。これを観たときに私の心は少し砕けてしまって、いまだに頭の中から追い出せない。映画の場面じゃなかったので。現実だったので。そしてこの、人に恥をかかせてやろうというこの本能を、発言力のある権力者が形にしてしまうと、それは全員の生活に浸透してしまいます。というのも、こういうことをしていいんだと、ある意味でほかの人にも許可を与えてしまうので。他人への侮辱は、さらなる侮辱を呼びます。暴力は暴力を扇動します。そして権力者が立場を利用して他人をいたぶると、それは私たち全員の敗北です」とストリープさんは訴えた。

ストリープさんはさらに、「権力を監視し責任を果たさせるよう」報道機関に求め、会場の映画関係者たちにはハリウッドが報道機関を支えなくてはならないと強調。そして5日の葬儀で追悼の歌を歌ったばかりのキャリー・フィッシャーさんの言葉を引用して、「心が砕けたらそこから芸術を作りましょう」と呼びかけた。

1月20日に就任するトランプ氏は、ニューヨーク・タイムズ紙の電話取材に応えて、ストリープさんは「どうせヒラリー・ファンだ」と一蹴。授賞式やストリープさんのスピーチは見ていないが、「リベラル映画関係者」に攻撃されても「驚かない」と答えたという。

さらにトランプ氏はこの後ツイッターで、自分は障害のある記者を「馬鹿などしていない」と従来の反論を繰り返した上で、「メリル・ストリープはハリウッドで一番評価され過ぎてる女優のひとりだ。僕を知らないのにゆうべゴールデングローブで僕を攻撃した」とツイート。さらに「大敗したヒラリーの取り巻き」だと書いた。

授賞式では、ロサンゼルスのジャズクラブを舞台に女優を目指す女性を描く映画「La La Land」が、コメディ・ミュージカル部門の作品賞をはじめ最多の7部門で受賞。ドラマ映画部門では、困難な環境でいじめや薬物中毒に苦しみ、自分の性的指向に悩みながら育つ米国の黒人少年を描いた「Moonlight」が作品賞に選ばれた。