世間的に、「フィットネスが好きでなければいけない」という風潮があるようです。運動が好きになれないのは、自分に合ったエクササイズが見つかっていないか、プラスのフィードバック・ループが生まれるほど頻繁にエクササイズしていないからだと言われています。
フィットネスライター兼コーチの筆者は、かれこれ10年以上にわたり継続的にトレーニングしていますが、「エクササイズは嫌いだ」と自信を持って言えます。でも、それでいいのです。
外見の改善にとどまらない、エクササイズのさまざまなメリット
誰もが何らかのエクササイズを楽しまなくてはならない、などという考え方はばかげています。それは切手収集家が切手に興味のない人に対して、「のりを使わずに封ができる封筒や八角形の切手の魅力を、君はまだわかっていないからだ」と言うようなもので、まったく無意味なのです。
世界中にあるものすべてを楽しまなければいけないわけではありませんし、心からエンジョイできる夢のようなエクササイズが見つかるのを期待してあれこれ試すのに時間を費やすなんて、効率が悪いうえにウンザリします。自らに繰り返し苦行を課すより、もっと有意義な時間の過ごし方があるのではないでしょうか。
だからといって、諦めろと言っているわけではありません。エクササイズには「見た目が良くなる」というだけでなく、さまざまなメリットがあるのは否定できませんし、それは幾度となく科学的にも証明されています。
まず挙げられるのは、精神面での大きな効果です。筋トレと有酸素運動はともに、軽度から中程度のうつ病に対して薬と同程度の効果を持ち、ストレスによる不安を軽減するのに非常に役立つ可能性を示唆する証拠が、さまざまなメタ分析で確認されています。
さらに深く見ていくと、人間のもっとも基本的な構造である細胞においても、エクササイズは身体を守るのに役立っています。エクササイズは辛いものですから、嫌いな人にしてみれば精神的ストレスを感じます。生理学的にいっても負担となりますし、細胞を破壊する「フリーラジカル」の生成を増加させるというマイナス面もあるのです。
とはいえ、身体は適応するものです。エクササイズを継続すれば、抗酸化酵素(すなわち、フリーラジカルの攻撃に対する細胞の防御)が増加して、ダメージに抵抗するべく細胞は自ら強くなり、安静時でも身体を守り続けてくれるのです。ある種の癌や心疾患、神経変性疾患などから身体を守るのにも役立つかもしれません。
運動嫌いでもエクササイズを続けるコツ
というわけで、エクササイズには外見上の改善だけにとどまらない本物のメリットがあるのです。けれども、そういったことをすべて理解していてもなおジム通いは面倒だと言うのなら、エクササイズをできるだけ面倒に感じさせないコツをお教えします。
- できる限り短時間で運動を終わらせる:
苦行を長引かせても無意味です。一度に複数の部位を動かせる複合的なエクササイズや、可能な時は高負荷の有酸素運動、最大限の効果を得られる密度の濃い運動などに集中的に取り組みましょう。そうすれば、トレーニングがずっと楽なものに思えるでしょうし、スケジュールにも組み込みやすいはずです。
- 好きなことをやりながら運動する:
極度の不快感と究極の満足感を足して合わせればプラマイゼロになる、というのは冗談だとしても、マルチタスクが可能なら気分が紛れるよう工夫しましょう。音楽好きの方は、自分好みのプレイリストに耳を傾けてみてはいかがでしょうか。友だちを誘ってエクササイズすれば、交流もできて一石二鳥です。あるいは、大好きな番組をダウンロードして見ていれば、30分のエクササイズが終わったことを告げるタイマー代わりに使えます。エリプティカル・マシンでの運動がどれほど嫌いかを考えずに済むなら何でも構いません。
- 「やらねば」から「やろう」に思考を切り替える:
言い方をほんの少し変えるだけで、心構えが大きく変わります。「やらねば」は、外部からの圧力によって「やらされている感」があり、いつでもやめられると考えがちです(厳密には8時間「眠るべき」だけれど、実際はそうしていない、というように)。けれど、「やろう」ははっきりしています。そう思うことで、「やり遂げなければならない」タスクとして、心にはっきりと刻み込むことができます。
- 日常生活の一部にする:
エクササイズの時間を設定し、それを守りましょう。忙しい時は大変かもしれませんが、「暇があったらやろう」と選択の余地を残す考え方は失敗のもと。エクササイズは、明日という名の逃げ道へと追いやられ、あとはそれの繰り返しになること必至です。日々の習慣の一部にすることで、深く考えたり、あと回しにしたりせずに取り組めるようになるでしょう。
- 日常的に身体を使う:
ジム通いを増やすより、日ごろから身体をもっと動かすようにすれば、簡単なうえに、いまいましい気分もずっと和らぐかもしれません。自動車を使わずに自転車か徒歩で出かけたり、階段を使ったりしましょう。些細な違いですが、積もり積もればフルにトレーニングするのと同じメリットが得られます。
たとえ嫌いでも、エクササイズを受け入れてうまく活用し、とにかく身体を動かしてくださいね。
Dick Talens(原文/訳:遠藤康子/ガリレオ)
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