モテないオスにもチャンスあり、カエル研究で判明

メスのカエルの相手選び、米研究

2015.09.01
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パナマにて、メスの背中にしっかりと乗るオスのトゥンガラガエル。2匹はこうして、産卵のために泡の巣を作り出す。(Photograph by James Christensen, Minden Pictures/National Geographic)
パナマにて、メスの背中にしっかりと乗るオスのトゥンガラガエル。2匹はこうして、産卵のために泡の巣を作り出す。(Photograph by James Christensen, Minden Pictures/National Geographic)
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 メスのトゥンガラガエルの耳に甘く響くのは、低音で速いオスの歌声だ。

 だが最新の研究によれば、メスに好かれる声を持たないオスにも望みはあるようだ。自分よりも魅力に欠けるオスと一緒に鳴けば、メスから交尾相手に選ばれる可能性があるという。米テキサス大学オースティン校のアマンダ・リー氏らの研究チームが、8月27日付「サイエンス」誌に発表した。

 トゥンガラガエルは、中米原産の土色をした小さなカエル。大きな声と、大きく膨らむ鳴き袋(鳴嚢)をもち、その声は腹を空かせたコウモリを呼び寄せてしまうほどだ。彼らの名前も、高音の「トゥン」に低い「ガラ」が続く鳴き声に由来する。(参考記事:「カエルを波紋で探知するコウモリ」

「テレビゲームの効果音のようで、とても面白い鳴き声です」と論文の著者アマンダ・リー氏は話す。「小さなカエルなのに、鳴き声は本当に大きいんです」

低音で速い声がモテる

 メスのトゥンガラガエルがオスの鳴き声に何を求めるのか調べようと、リー氏らのチームは実験を開始。パナマで捕獲したメス78匹に、あらかじめ録音したオスの鳴き声を聴かせた。

 研究チームはスピーカー2台を置いた部屋の中央にメスを入れ、メスがどちらのスピーカーに寄っていくかを観察した。メスが近づいた方が、より好まれる鳴き声ということになる。

 その結果、メスのトゥンガラガエルは低音かつ速いペースのオスの歌声に惹かれることが分かった。低い音はオスの体が大きいという特徴を表すからだが、それよりもメスが重視するのは、鳴く速さだという。「オスがこれでもかというほど速く鳴いたら、メスは夢中になります。何よりの魅力なのです」とリー氏。

 2回目の実験で、リー氏は120匹のメスを用意し、高音で速く鳴く「候補1」と、やや低音でゆっくりと鳴く「候補2」から、好ましいオスの鳴き声を選ばせた。どのメスも、選んだのは候補1。声の高さは不利だが、速く鳴けるオスだった。

 だが、そこへ「候補3」を加えると状況が変わった。「第3のオスはメスが好む低音ですが、鳴くのは非常に遅く、3匹の中でも最も遅いペースです」とリー氏。

 実験で候補3のスローな低音を聴いたメスは、選ぶ基準をひっくり返した。候補1、2、3から1匹を選ぶ状況で、メスは最初は選ばなかった候補2を選んだ。やや低い魅力的な声だが、それほど速くは鳴かないオスだ。(参考記事:「逆立ちで交尾する新種のカエル、インド」

自分よりもぱっとしない友人を連れて

 オーストラリアのシドニー大学教授で爬虫類と両生類を研究するリック・シャイン氏は、この現象を「私たちがバーへ繰り出すとき、引き立て役として、自分よりもぱっとしない友人を連れて行く作戦に似ているかもしれません」と推測した。シャイン氏は今回の研究に関わっていない。

 リー氏は、メスが選択基準を変えたのは「非合理的」と話す。合理的なメスなら、候補1と2のどちらにも劣るオス(候補3)が現れても、やはり候補1を選ぶと考えられるからだ。(参考記事:「トゲ肌からツル肌に早変わりする新種カエルを発見」

 合理的にせよ非合理的にせよ、今回の研究結果はカエルの複雑な性行動の解明を一歩進めたと専門家らは評価している。

「カエルたちはうろうろと歩き回ってごく単純に相手を決めるような、ちっぽけでロボットのような生き物ではありません」と、シャイン氏は語る。「彼らは近くにいる同胞たちを認識し、その呼びかけに耳を澄ましています。それが、ある種の判断に影響を与えているのです」(参考記事:「半透明のかわいい新種カエル、コスタリカで発見」

文=Rachel A. Becker/訳=高野夏美

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