村上春樹さんら有名作家 荒尾に注目 新刊本に相次ぎ登場
●地元歓迎 「観光集客につなげたい」
熊本県荒尾市が登場する有名作家の新刊本が相次いで出版され、地元で話題になっている。ノーベル文学賞候補として注目される村上春樹さんの紀行文集には「明治日本の産業革命遺産」の一つとして世界文化遺産になった三池炭鉱万田坑が登場。映画化された漫画「海猿」の原案者で知られる小森陽一さんの小説の舞台は、遊園地「グリーンランド」がモデルだ。いずれも荒尾を象徴する施設で、関係者は「観光につなげたい」と意気込んでいる。
出版はともに昨年11月下旬。村上さんの紀行文集「ラオスにいったい何があるというんですか?」(文芸春秋)は単行本と電子版が発売され、小森さんの小説「オズの世界」は集英社文庫から刊行された。
「ラオス-」は、村上さんが20年前から雑誌や航空機内誌に寄せてきた旅行記を編集した。米国のボストンやニューヨーク、ギリシャのミコノス島、イタリアのトスカーナ-と海外が続く中、国内では唯一、熊本県が収録されている。
村上さんは、れんが造りの建物が目を引く万田坑を世界遺産の登録前に訪ね「たたずまいがお洒落(しゃれ)に英国風なので、なんだかディッケンズの小説に出てくる風景のよう」と評価。現地ガイドから炭鉱の歴史や建物の特色などを聞き、「世界遺産になればいいなと、世界遺産みたいなものにほとんど関心のない僕も、ちょっと思ったりした」。
「オズ-」は、東京のテーマパークに就職する夢が破れた女性が主人公。失意のうちにホテルに就職後、荒尾の遊園地に配属され、客や同僚と交流しながら成長していく物語だ。福岡市の知人からグリーンランドの歴史などを聞いたのが執筆のきっかけになったという。映画化などの動きもあるといい、グリーンランドは「地方の遊園地が注目されるのは意義深い。今年は開園50年。記念イベントに弾みがつく」と歓迎する。
荒尾市観光協会の山代秀徳会長は「荒尾を広くPRする良い機会。作家2人の本を市民に紹介し、観光集客につながるアイデアを地域一丸で考えたい」と、作家たちのメッセージを地域づくりに生かしたい考えだ。
この記事は2016年01月13日付で、内容は当時のものです。