FRB議長、米利上げ「数カ月内に」 6~7月念頭
【ケンブリッジ=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は27日、米マサチューセッツ州ケンブリッジのハーバード大での講演で「米経済は改善しており、数カ月内に利上げするのが適切だろう」と指摘した。6月、7月のいずれかの会合で追加利上げする可能性を示したもので、来週に公表する5月の米雇用統計などを見極めて最終判断する。
FRBは18日公表した4月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で「経済・物価の回復が続けば6月の利上げが適切だ」と指摘している。イエレン議長は利上げ時期について「数カ月内」と議事要旨よりも幅を持たせながらも、早期の金融引き締めに動く可能性を強く示唆した。
米経済は1~3月期の実質成長率が0.8%にとどまるなど減速感がある。ただ地区連銀などの推計では4~6月期は2%台の成長に戻る見込みで、イエレン議長も「様々なデータから成長率は上向いているようだ」と指摘した。物価上昇率も「雇用改善が続けば、数年で目標の2%に達するだろう」と述べた。
イエレン議長は4月初旬にニューヨークで講演して以降、2カ月近くも公の場で金融政策について語ることを避けてきた。4月までは「利上げは慎重に進める」と主張し続けており、金融市場では追加利上げ観測が大幅に後退していた。議事要旨に続いてイエレン議長が追加利上げの時期に言及したことで、外国為替相場や株式・債券市場にも影響が出そうだ。
具体的な利上げ時期は今後詰める。焦点は6月3日に発表する5月の米雇用統計と、同月23日の英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票だ。失業率が改善するなど雇用統計が堅調であれば、6月14~15日のFOMCで利上げする可能性がある。FOMCの一部参加者には「英国の国民投票を見極めて判断すべきだ」との主張もあり、利上げが7月以降にずれ込む可能性もある。
FRBは昨年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切った。当初は2016年に4回の追加利上げを想定したが、中国発の世界同時株安などに見舞われ、その後は追加利上げを見送っている。