ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

「沖縄高江はまるで戦争です。メディアはこの戦争を黙殺しています。この異常事態を伝えて!」三上智恵監督

2016年07月20日 | 日本とわたし
沖縄県の高江では、ヘリパッド建設の強行が、参院選直後の明け方から始まっています。
ヘリパッドは、高江の集落を囲むように、全部で6箇所建設される予定で、そのうちのすでに完成した2箇所には、すでにオスプレイが配備されてしまいました。

6箇所すべてを完成させるための工事に抗議する市民の人たちを排除するため、全国から集めた1000人という、異常ともいえる数の機動隊を投入しました。
高江は、那覇から車で3時間。
住民の数は約160人、とても小さな集落です。
そして、やんぱるの森という、世にも美しい緑と、豊かな種類の生き物が住む、素晴らしい森があります。
そんな小さな村の近くにあるダムには、抗議の人々が使う公衆トイレがあるのですが、そこでは警察が検問しているのだそうです。
そしてその1000人もの機動隊は、少し離れたホテルに寝泊まりしながら、抗議をする住人や人たちをごぼう抜きするのです。
抗議のテントの撤去も始まるといわれています。

高江のヘリパッドは、1996年12月の『沖縄に関する日米特別行動委員会』において、米軍北部訓練場の一部を返還する条件として、建設されることになったのですが、
このとき国は、オスプレイ配備の可能性を把握していながら、住民には全く知らせませんでした。

『それから説明会も何もなく、工事を強行し、年間1200回という、オスプレイの高江での訓練は、もう始まってしまった』
『返還を口実に、恩着せがましく振る舞い、より便利な訓練場を、日本の税金で用意して頂こうという、アメリカ軍の常套手段』


不条理な権力の横行に苦しめられてきた沖縄を、ずっと撮り続けておられる三上智恵監督の言葉です。

高江の人たちは、毎日毎晩、超低空飛行するオスプレイの爆音に、苦しめられています。
夜の11時近くまで飛んでいるのです。
騒音、低周波、振動、そして恐怖。
気が休まらず、気が狂いそうになると、大人のげんさんがおっしゃっていました。
もちろん、そんなだから、子どもたちも眠れず、学校にも行くことができません。
家族で避難している人たちもいます。

今でさえそうなのですから、6箇所のヘリパッドが完成してしまったら、年に4000回もの低空飛行が実施され、もう高江には人が住めなくなってしまいます。

もうわたしたちは、沖縄を他人事にしてはいけない。
気にならないわけではないけれど、気の毒だとは思うけれど、などと言って済ましていてはいけない。
自分の身に同じことが起こったらと、一所懸命に想像し、同情し、何か自分にできることを見つけて行動しなければならない。
弱っている人、困っている人を、助け合い、支え合いして、引き上げていく。
誰もが同じように幸せに、というのは無理な願いかもしれないけれど、このような理不尽な暴力に晒されている人たちを、無視してはならない。

だからどうか、伝えてください。
国が振るう暴力に立ち向かえるのは、潰された目を取り戻した市民の数の力です。

******* ******* ******* *******

写真家・森住卓氏が、フェイスブックで伝えてくださる高江の非常に厳しい様子を、ここに紹介させていただきます。

森住氏は、イラクの子どもたち(爆弾を落とされる)の側に立ち、徹底的に取材を重ね、シャーロット・アルラブロン氏と共に、写真集『私たちはいま、イラクにいます』を出版した写真家です。
イラクのみならず、理不尽な暴力を受け、被害に苦しみながらも、力強く生き抜こうとする人々の姿を、場所を問わず出かけて行き、映像に残す作業をし続けておられる方です。
だからこそ、この沖縄の高江で起こっている権力の暴行を、全く伝えようとしない本土のマスコミの代わりに、ずっと公開してくださっているのだと思います。

7月16日の高江

N1ゲート前













北部訓練場内に、急ピッチで建設が進むプレハブの建物。
作業員の宿舎になるのか?
この4日間に運び込まれた建設資材。



N1ゲート前、24時間の攻防が始まった。






7月17日の高江

7時20分過ぎ、負傷者が出てしまった。
警察は手当もせず、数メートル離れたところから眺めていた。
突き飛ばした機動隊員は、カマボコ車両に逃げ込んでしまった。







動画撮影していたカメラマンの撮影を妨害する機動隊。











7月17日の高江

明けやらぬうちから機動隊が徹夜で座り込む市民を排除。














7月19日の高江

今日も、早朝6時頃から動き出した。
警視庁、千葉、神奈川県警も配備され、弾圧体制が整ったようだ。
県道70号線高江の新川ダム入口で、検問が行われ、北上する車両のチェックが始まった。
ヘリパッド建設反対の市民は、検問は通行の自由を侵すと抗議。
検問を行っていたのは福岡県警。
抗議する市民を排除するために、警視庁、神奈川県警も駆けつけた。

戒厳令の村、7月19日。
明日、排除強行か?


やんばるの森が明けた。



衛局職員は、N1ゲート前のゲートと、駐車中の車両の間で、2時間ごとに交代で立っている。
胸を張って出来る仕事ではなく、終始うつむいている職員もいる。












安次嶺現達、げんさんは、当時7歳の娘さんも含め、「通行妨害」で国に訴えられた。













(まうみ注・ここに、げんさんがまとめられた高江の現状報告を、以下に転載させていただきます)
やんばる東村 高江の現状
http://takae.ti-da.net
2016年07月07日

高江の現状報告

高江在住、安次嶺雪音さんからの現状報告を転載します。
住民の会 (S)

高江の現状報告です。

皆さんこんにちは。
高江区民の安次嶺と言います。

6月20日頃から、毎日毎晩、オスプレイが我が家の上空を、超低空で飛びまわっています。

夜は11時近くまで。
2週間になります。
こんなことは初めてです。

7月4日の独立記念日前後は、静かな夜を過ごせて、安心して眠りましたが、
また昨晩、飛びだしました。

正直、気が狂いそうになります。

騒音、低周波、振動、恐怖、気が休まりません。

子供達も眠れず、学校に行くことができません。

今日も、国頭村に、子供達を連れて避難しました。
(しかし、国頭村の海上も、ヘリがグルグル飛んでいます。沖縄はどこにいても同じなんです)

「オスプレイが来たら、ここで生活ができなくなる」

ずっとその不安がありましたが、ついに現実になってしまいました。

新たなヘリパッドができたら、年間4000回以上、オスプレイが訓練をしにきます。

そうなると、本当に住めません。

こんなに素晴らしい環境なのに。
悔しくて仕方ありません。

私たち人間がこんなにきついのに、ノグチゲラをはじめ、ヤンバルに住む小動物たちは、なおさら生きていくことが厳しくなってくると思います。

何度、役場や防衛局に訴えても、現状が変わることはありません。

そんな中でも、東村教育委員会の方々や企画観光課の方々は、この状況を大変なことだと認識して、今色々動いてくれています。

1日も早く、オスプレイが、米軍基地が、沖縄からいなくなってくれることを願います。

子供達に、平和で明るい未来を手渡したい。

心豊かに暮らしたい。

戦争は絶対に嫌だ。

この現状を変えるために、みなさんの力が必要です。

一人でも多くの人に、高江の、沖縄の、現状を伝えてください。

声をあげてください。

選挙に行ってください。

よろしくお願いします。

安次嶺雪音



7月20日の高江
戒厳令の村 今日も作業強行を押しとどめています。
明日かあさってが本番か?

民意を無視した国の横暴。
問答無用。
いくら選挙で民意が示されても、お構いなく強行する。
選挙なんて意味が無い。
そう思うようになってしまう。
しかし今、その民意に押されているのは、強行しようとする国だ。
今日も緊迫の高江N1ゲートですが、なにも動きは無かった。
押しとどめています。
さらなる緊急の、全国からの抗議と支援を。
今日は、高江の住民・伊佐のオジイが、居ても立ってもおられず、早朝5時から姿を見せていた。
暑いからあまり無理せんでよ。
それからもうひとり。
毎週水曜日、バナナとパンを持って、テントに激励にきてくださる古堅実吉さん。
元国会議員で、鉄血勤皇隊の生き残り。
マイクを握った古堅さんは、87歳になる自分の沖縄戦体験を語り、
「若い機動隊や防衛局の皆さんが、こんな理不尽な仕事をさせられていることが気の毒だ。
上からの命令とはいえ、再び戦争をするための手伝いをしてはならない」と訴えられた。
すでにFBでお知らせしていますが、辺野古高江に座り込む、沖縄戦体験者の証言が本になリました。
「沖縄戦最期の証言 おじいおばあがなぜ新基地建設に反対する理由」(新日本出版社2000円税別)が、今月末に発売されます。
伊佐のオジイ、古堅さんをはじめとする、沖縄戦を生き抜いてこられた方々の証言です。
是非この本をお買い求めください。


https://www.amazon.co.jp/沖縄戦・最後の証言―おじい・おばあが米軍基地建設に抵抗する理由-森住-卓/dp/4406060480




















参院選敗北で安倍政権の沖縄いじめが激化、米空軍機が、沖縄市上空で、照明弾発射の暴挙!
しかし、本土マスコミは、一切報道せず

【LITERA】2016.07.18
http://lite-ra.com/2016/07/post-2425.html

先日の参院選において、大きなトピックとなったのは、沖縄と福島で、現職大臣が落選したことだろう。
とくに島尻安伊子氏は、この参院選を見越して、安倍首相が、県選出で、沖縄担当相に抜擢。
しかし、蓋を開けてみれば、辺野古基地移設反対を打ち出した伊波洋一氏に、10万票も差をつけられて“惨敗”したのだ。
 
2014年の沖縄県知事選に続いて、沖縄県民が、再びはっきりと、“民意”を国に叩きつけたわけだが、
対して安倍首相は、島尻氏を、民間人として大臣を続投させる方針を固めた。
沖縄は、島尻氏に「NO」を突きつけたのに、である。
 
だが、安倍政権は、沖縄に、選挙結果の意趣返しをするかのように、さらにとんでもない行動に出ている。
 
なんと、参院選の投開票の翌日11日から、沖縄県東村高江の米軍北部訓練場で、ヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設工事のための、機材搬入を開始、反対住民を、強制的に排除しはじめたのだ。
 
しかも、住民の数が、たったの約160人という小さな集落に対し、政府は、500人規模の機動隊を、投入することを決定
きょうから順次、配備していく予定だという。
政府は、昨年11月にも、辺野古新基地建設の抗議運動が行われているキャンプ・シュワブのゲート前に、100人規模の機動隊を投入したが、今回はその5倍
この安倍政権の行動はあきらかに、選挙で再び示された沖縄の意志に対して、脅しをかけるやり方だ。
 
まったく、ここまで露骨に牙をむくことができるものかと驚くが、
『標的の村』『戦場ぬ止み』といったドキュメンタリー作品で、沖縄の現実を伝えつづけているジャーナリストで映画監督の三上智恵氏は、
今回の、参院選から一夜明けてのヘリパッド建設工事強行について、「わずか9時間の歓喜」と表現している。

〈国は用意周到に、参院選あけの11日早朝に向けて、高江の工事再開の準備を進めていたのだ〉
〈本当に、現行計画通りにヘリパッドができてしまったら、「負担増」どころではない。
高江は、人が住める村ではなくなってしまう。
あなたの家から400メートルの地点に、突然オスプレイ用のヘリパッドを造りますと言われたらどうするか、想像してみて欲しい〉

(マガジン9「三上智恵の沖縄撮影日記〈辺野古・高江〉」第55回/外部リンク)

『標的の村』に詳しいが、この高江では、ヘリパッド建設工事に反対するため、座り込み抗議を行った住民たちを、
防衛省沖縄防衛局が、「通行妨害」で訴えるという、スラップ訴訟も起こっている

しかも、その訴えられた住民のなかには、7歳の女の子も含まれていた
信じがたい暴挙である。
 
何度も繰り返される、沖縄への暴力──。
しかし、沖縄では、最近もうひとつ、見過ごせない事件が起こっている。
それは今月13日、米空軍嘉手納基地に所属するF15戦闘機が、沖縄市上空で、熱源体の照明弾「フレア」を3発、発射していたのだ。
 
幸いなことに、被害は報告されていないようだが、これをたんなる「誤射」と片づけるわけにはいかない。
こうした頻発するミスこそが、重大事故を引き起こす可能性を、証明しているからだ。
2004年には、沖縄国際大学に、米軍ヘリが墜落するという大事故が起き、日米地位協定の壁に阻まれて、いまだ事故原因の全容解明さえなされていないが、
沖縄ではつねに、このような、理不尽な事故への不安と隣り合わせのなかでの生活を、余儀なくされているのである。
 
しかも、である。
このフレア発射問題を報じたのは、地元紙だけで、読売、朝日、毎日、産経の4大紙は扱っていない
沖縄が抱える現実は、国全体の問題なのに、メディアがこうした姿勢でいるために、いつまでたっても基地問題は、“他人事”になってしまうのだ。
 
米軍属による残忍な殺人事件や、米兵の飲酒運転事故などが、立て続けに起こったが、
基地がある街の苦悩や不条理を、わたしたちはもっと知らなくてはいけない。
頭上を、戦闘機や危険なオスプレイが飛び交い、サッカー場をはじめとする基地跡地からは、高濃度のダイオキシンが検出されるなど、土壌汚染が広がっている
その米軍が放置した、環境汚染の調査のためにかかった約9億8000万円は、日本が税金で賄っているのである。
その一方で防衛省は、米軍基地などの騒音対策であるエアコン補助費を、県内の幼稚園や小中学校など計108施設で廃止する方針だ。
 
だが、そうした現実をもっとも無視しているのは、安倍首相だ。
沖縄の怒りによって誕生した、翁長雄志知事の面会要請を、再三拒否し、翁長知事の辺野古埋め立て承認取り消し処分に対して、代執行訴訟まで起こした
裁判所の和解勧告によって、協議のための作業部会が、14日も開かれたが、
ここでも話し合いや説明を求める沖縄側に対して、国は“工事再開”の一点張りで、
政府側は、沖縄県への、新たな訴訟提起さえ匂わせている

安倍首相は、5月25日の日米首脳会談後に開かれた記者会見で、「沖縄のみなさんの気持ちに真に寄り添う」などと言ったが、一体、どこに寄り添う気持ちがあるというのだろうか。
 
何度も言うが、沖縄は、14年の知事選、今年6月の県議選、そして今回の参院選と、再三にわたって民意を示している。
しかし、民主的なかたちで沖縄が声をあげているのに、見せしめのように、ヘリパッド建設工事を強行しようと大量の機動隊を送り込み、県民に寄り添うどころか足蹴にしているのである。
到底、民主主義国家のやり方ではない異常さだ。
 
最後に、前述した三上氏の言葉を、もう一度引用したい。

〈今回の選挙で、沖縄を圧迫する自民党政権を圧勝させた人たちは、これから高江で起きることについて、目をそらしてはならない。
自分の一票が支える権力がどこかで暴走していないか監視する義務があるはずだ〉

(水井多賀子)


わずか9時間の歓喜~高江工事再開・民意圧殺の朝~
【マガジン9】
http://www.magazine9.jp/article/mikami/29325/

「おれたちの祝いは8時がピークだ。
伊波さん当確!! 
でも、そのあとは、全国で自民圧勝するだろうから、祝勝会も早めに解散だなぁ…」
 
ヒロジさんの言葉に、場がどっと沸いた。
どの顔も明るかったが、とりわけヒロジさんは、はしゃいでいた。
参院選の夜、辺野古の繁華街の一角にある店を貸し切って、ゲート前の仲間たちが集まった。
辺野古基地建設反対を訴える、伊波洋一候補の勝利は、まず間違いない。
今回、伊波候補が獲得する票は、ヒロジさん達の日々のゲート前の座りこみを応援してくれる、県民の声の大きさに比例している。
大差がつけばつくほど、現場は勇気をもらえる。
勝利の瞬間はみんなで味わいたいと、めったに酒席を持たないメンバーが、珍しく店を予約したのだった。
 
おまけに、今回の相手候補は、辺野古の問題にかかわってきた人々にとって、どうしても当選させてはならない人物だった。
自民党の現職大臣のその女性は、「辺野古県外移設」の公約を破って、真逆に転じたばかりか、
基地建設に抗議する市民の取り締まり強化を、国会で提案するなど、
沖縄に軍事的負担を強要する、安倍政権の先鋒として、県民を裏切ってきた。
前回の衆議院選挙では、沖縄選挙区の自民党現職議員は、全員落選している。
この落選したメンバーと、この女性大臣は、そろって安倍政権に説得されて、「辺野古の県外移設」の公約を撤回、
「県内移設容認」に転じたという、「平成の琉球処分」と言われた、屈辱的な場面にいた議員達だ。
 
これまで、沖縄の保守として、政府との協調路線を選んできた人たちも、この図には耐え難いものがあった。
ここまで誇りを傷つけられても、基地負担に耐え、土地を差し出し続けなければならないのか。
翁長知事を中心に、「オール沖縄」を形成していく土台に、この沖縄の、保守政治家の体たらくがあった。
その中で、唯一国会に残っていたのが、この女性大臣だった。
 
「7時55分には当確が出るぞ!」
「そんなわけないだろ!」
 
開票率ゼロの段階で当選速報を出すことを、放送業界で「ゼロ当」といい、賛否両論ある手法なのだが、
開票が始まる8時を待てないメンバーは、選挙対策事務所のネット中継を見ながら大騒ぎ。
そして、8時の時報と同時に、「伊波候補当選確実」のスーパーが表示され、座は興奮のるつぼになった。
カチャーシー、歌、踊り。
全国の速報では、自民党が着実に議席を伸ばしていたが、そんなテレビはもう消して、宴会は続いた。
これで、なんと沖縄選挙区は、衆参共に、自民党議員がゼロになった。
自民圧勝のこの国の中にあって、さらなる基地の痛みを押しつける自民党政権に、
沖縄県民は、解釈の余地などないほど、クリアに「NO」を突きつけたのだ。
知事選、衆院選、参院選、全県民が意思表示をする選挙はすべて、基地建設を拒否する候補が、圧倒的な勝利で、民意を形にした。
 
ところが、夜8時の歓喜の瞬間から、わずか9時間後の朝5時過ぎに、激震が走った。
 
大型工事車両と機動隊が、隊列を組んで、高江に向かっているという情報が入った。
辺野古が和解している間に、高江のヘリパッドを造ってしまおう、という動きは進行していたので、
参院選後が要注意だ、という覚悟はあった。
しかし、まるで喜んでいる県民をあざ笑うかのように、勝利の感激に酔う頭を、下から蹴り上げるようなやり方で、工事に突入した。
 
国は用意周到に、参院選あけの11日早朝に向けて、高江の工事再開の準備を進めていたのだ。
沖縄防衛局は、11日付で、赤土防止条例に基づく工事の通知書を、県に提出。
同じ日、合わせて、不法占拠している車の撤去を求める勧告を、メールで県に送りつけ、
それに先んじる形で、早朝から、高江で、機動隊による制圧体制を敷きながら、
トレーラーにプレハブ施設や簡易トイレを載せたものを始め、大型工事車両を、米軍北部訓練場のメインゲートに搬入した。

 
「これが国のやり方か!選挙結果を踏みにじって、こんなやり方で基地建設を強行するのか!」
 
高江に駆けつけたヒロジさんに、数時間前までの笑顔はなかった。
 
「大丈夫。こんなやり方をしたら、県民全体を敵に回します。全基地封鎖になります。絶対に工事はさせません」
 
ヒロジさんが私に、丁寧語で「大丈夫です」、と言うときは、いつも相当な怒りに燃えているときだ。
ヒロジさんと言えば、激高しているような場面の印象が強いかも知れないが、追い詰められるほどに冷静になり、本気で怒ったときは、穏やかに笑ってみせる。
私は、心臓がヒリヒリする思いだった。
高江は、2007年の座りこみ初期からずっと、ヒロジさんが泊まり込んで、抵抗運動を繫いできた場所だ。
2014年からは、辺野古のゲート前を担当するようになったが、高江のことはひとときも忘れたことはないだろう。
2014年に、N4地区の2つのヘリパッドが完成し、オスプレイの訓練が始まってしまっているが、
そのほか4箇所は、工事には入れないまま、2年が経過していた。
しかしこの再開は、国はどうやら本気のようだ。
 
先月18日、 沖縄県に駐留する米海兵隊のトップ、ニコルソン中将は、北部訓練場の一部を、来年初めに日本へ返還する、と語った。
相次ぐ米軍の不祥事に対して、高まる不信感を払拭する狙いなのだろう。
沖縄の本土復帰後、最大の返還面積になる、と強調した。
そのためには、年内に、残り4箇所のヘリパッドを、完成させなければならない。
着手すれば、工事は2ヶ月で完成する、ともいわれている。
防衛局のメンツに懸けて、秋までに必ず、着工まで持ち込もうという構えだ。
それは、両政府の都合なのだろうが、先週も連日連夜、オスプレイが複数編隊で飛び回って、子ども達が不眠で学校に行けない事態になっていた高江では、
あと4つも、集落近くにヘリパッドを造ります、という話を、「そうですか」と受け入れられるはずもない。
 
北部訓練場を半分も返してやるんだから、ヘリパッドの移設くらい協力しろと、米軍と日本政府は言っている。
そして、北部の市町村長は、基地の返還を歓迎し、「返還に伴うヘリパッドの移動なのだ」という解釈の元に、明確にはヘリパッド建設に反対していない。
 
しかし、これは、何重にもおかしな話だ。
県民から奪ったやんばるの森を返すのに、なぜ上から目線で条件を付けられるのか
しかも、返還されない南側の訓練場内には、ほとんど使っていないヘリパッドがいくつもある
もしも、返還区域にあるヘリパッドと同じ数を、どうしても新しくつくるというなら、
集落から最も遠い、迷惑にならないところに造るのが当たり前なのに、なぜ、高江を囲むような陣形に造るのか
 
集落を含む山あいの地形を利用しながら、オスプレイが離発着できる新たなヘリパッドを拠点に、山の稜線ギリギリに飛ぶ訓練をする、
それが目的で有ることは明らか
だ。
これもまた、返還を口実に、恩着せがましく振る舞い、より便利な訓練場を、日本の税金で用意して頂こうという、アメリカ軍の常套手段だ。
 
「返還すると言っているのに、なぜ反対派はわあわあ騒ぐの?」と言っている人は、政府に都合のいい報道しか見ていない。
映画『標的の村』を、是非見て欲しい。
本当に、現行計画通りに、ヘリパッドができてしまったら、「負担増」どころではない。
高江は、人が住める村ではなくなってしまう
あなたの家から400メートルの地点に、突然、オスプレイ用のヘリパッドを造りますと言われたらどうするか、想像してみて欲しい。
 
「戦後70年、日本の安全保障を背負ってきた沖縄県民に対して、こういうやり方をするのか。到底容認できない」
 
翁長知事も、工事再開の夜に、異例の会見を開いて、苛立ちをあらわにした。
 
「これだけ安全保障に貢献し、これからも背負い続ける県民に対して、民意が示された数時間後に、用意周到に手続きを始めることは、県知事として容認しがたい」

ヘリパッド建設そのものの是非については、言及を避けてきた翁長知事だが、このタイミングとこの手法に、怒りを覚えない県民はいないだろう。
しかし、昨日12日、中谷防衛庁長官が、建設資材の搬入について、
「地元とのやりとりは、丁寧に数を増やしながら行ってきた」と、耳を疑うコメントを出した。
 
彼が「丁寧に行った」というのは、「不法占拠の車の移動を求める勧告の紙を、9回高江に持って来た」そのことを指すらしい
片腹痛い。
さかのぼれば、1996年のSACO合意の年に、防衛局の高見沢氏は、
「オスプレイについて、沖縄県民に説明しますか?隠しておきますか?」と、アメリカにお伺いを立てていた
ことが、メールによって暴露されている。
96年の段階で、普天間代替施設にオスプレイが来ることを知りながら、あらゆる公式な場でも、環境アセスメントでも、最後まで配備を隠し続けた事実を消せはしない。
 
高江の住民説明会では、「オスプレイ配備は聞いていない」「配備されるなら、あらためて説明をする」と明言した。
それから説明会も何もなく、工事を強行し、年間1200回という、オスプレイの高江での訓練は、もう始まってしまった。
これは、確信犯のごまかしだ。
もし民間なら、詐欺罪の上に、莫大な損害賠償が課されるはずだ。
この過程のどこに、丁寧さがあったのか。
いつも、夜中や早朝に、闇討ち工事で進めてきた防衛局の、どこが丁寧なのか。
7歳の子どもまで、通行妨害で訴えた前代未聞のスラップ裁判を、妙案として採用した国は、
本当に、高江に住む人々を、国民として対等に扱ってきたと言えるのか。
こういう防衛大臣を、日本国民は、一体どんな感覚で放置するのか?
 
高江は、那覇から片道3時間。
工事を進める側も、通うには相当遠い。
だから、住民が入れない北部訓練場の中に、資材を搬入し、プレハブを立て、トイレも設置して、寝泊まりをして作業に入るのだろう。
遠隔操作ができる監視カメラらしきものも、設置していた。
ゲート前の人数が少ない時を、画面で確認して、現場に向かうのだろう。
しかし、予定地周辺の林道が崩壊していることなどから、米軍機で重機をつり下げて山に入れる計画が、ささやかれている
重機をつり下げると言えば、沖縄県民の心に甦るのは、米軍がトレーラーを落下させて、幼女を圧死させてしまったむごい事件だ(棚原隆子ちゃん事件・1965年)。
そこまで残酷な仕打ちを、現政権ならやりかねない、とさえ思う。
そうなったら、沖縄はどうなるのか。
国民はどうするのか。
 
今回の選挙で、沖縄を圧迫する自民党政権を圧勝させた人たちは、これから高江で起きることについて、目をそらしてはならない。
自分の一票が支える権力が、どこかで暴走していないか、監視する義務があるはずだ。
大手メディアが伝えなくても、必ず私たちが伝えるから、知らなかったとは言わせない。
全国で自公政権を支持した人たちは、今後沖縄で起きることを、必ず、しっかりと見て欲しい。



三上智恵監督新作製作のための
製作協力金カンパのお願い
『戦場ぬ止み』のその後――沖縄の基地問題を伝え続ける三上智恵監督が、年内の公開を目標に新作製作取り組んでいます。製作費確保のため、皆様のお力を貸してください。
■振込先
郵便振替口座:00190-4-673027
加入者名:沖縄記録映画製作を応援する会
◎銀行からの振込の場合は、
銀行名:ゆうちょ銀行
金融機関コード:9900
店番 :019
預金種目:当座
店名:〇一九 店(ゼロイチキユウ店)
口座番号:0673027
加入者名:沖縄記録映画製作を応援する会



http://www.magazine9.jp/kampamain/

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25 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
トップのタイトル、三上さんの名前、間違ってます (まどか)
2016-07-21 23:26:13
直してね
まどかさんへ (まうみ)
2016-07-22 01:20:39
まどかさ〜ん!!!
ほんとにありがとう!!!

もうびっくりして、とんでもないことだと反省して、大慌てで訂正しました。
言い訳だけど、いつもタイトルは最後に考えるので、もう脳みそが疲弊しまくっていてのミスだったと。

でも…この記事に限って、すご〜くシェアしていただいてしまっていて、どうしよう…。
Unknown (反安倍)
2016-07-22 18:16:13
沖縄は米軍訓練場、疑似戦場。そこに日本の機動隊が米軍を守るためにやって来た。
沖縄を守るのはうちなーんちゅ自身だ。
だから体を張って闘っている。
戦前戦中戦後米国施政権下は日本の国家権力は沖縄を守らない

http://open.mixi.jp/user/62746374/diary/1954266394

【沖縄・高江〜連投30】
機動隊はゲート前に止めてあった反対派市民のマイカーをジャッキ付きの台車に乗せて一台一台動かしている。反対派住民にとって最後の砦である街宣車はいずれ裸にされるだろう。

田中龍作
沖縄で今起きていることは、いずれ本土でも起きることです。アメリカ様のためなら、沖縄住民の人権など屁とも思わない安倍政権の恐ろしさをマスコミは伝えようとしません。田中は赤字を覚悟で遠征しております。何とぞ御支援よろしく御願い致します…http://tanakaryusaku.jp/donation

田中龍作
機動隊がマスコミを排除しようとしている。マスコミは言われるままに下がった。権力の味方と思われないためにも、彼らには意地を見せて欲しい。

n_n @henoko_tushin
【高江】日本政府は高江唯一の生活道路である県道を、1000人の機動隊と30台の装甲車、4台のレッカー車で封鎖した。市民は165台のクルマの間に座り込み、路上のあちこちで機動隊の前に立ち、話しかけ、非暴力直接抵抗しています。封鎖されていようが、とにかく高江に来て下さい。
安倍は、山梨でゴルフ (反安倍)
2016-07-22 19:54:05
【弾圧】沖縄・高江で機動隊員が反対市民をぶん殴っている映像がニュースで流される!
http://xn--nyqy26a13k.jp/archives/19675

機動隊員が反対市民をぶん殴っている映像。これが国策。日本の防衛なのか?いったい誰を守るのか?

150人しかいない村にこんな事・・酷い。

この乱暴狼藉ぶりの機動隊、これが民主国家のやる事なのか。まさに国民の声を聞く耳持たぬ安倍自公内閣。

住民を警察が殴っています。市民を守るはずの警察が市民を殴る。憲法もまたこの狂気の政権の下では同じものになってしまう。そのとき、殴られるのはこの人たちだけではない。

【拡散希望】警察が住人を殴りつけています。
これが安倍政権、自民党のやり方です。同じことは今後、日本のどこででも起こりますよ。#自民党はヤバい #高江 #沖縄弾圧をやめろ
「明日も晴れー大木晴子のページ」に。 (大木晴子)
2016-07-22 23:46:47
初めまして。
高江の検索でたどり着きました。
「明日も晴れ」に高江支援ページを掲載しています。
こちらのページをリンクさせて頂きました。
事後承諾で申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
Unknown (九条堅守)
2016-07-23 03:55:41
非常に高確率で墜落するオプスレイによって周辺住民の命やアジアの海の平和が脅かされています
なんとしても止めなければいけません
東シナ海を全ての国が胸を張って航行するためにも頑張ってください!
反安倍さんへ (まうみ)
2016-07-24 00:31:13
機動隊員による殴打、引きずり落とし、押さえつけ、喉元の圧迫は、そういう対応を訓練された人間がやることで、さらに受ける側の負担が増します。

普通の暮らしがしたい、豊かな自然を守りたい、そんな誰もが持って当たり前の願いが、踏み潰されていくことを、本当に、本当に、許してはならないと思います。そして、知らなければならないと思います。

とにかくわたしも情報を伝え続けようと思います。
晴子さんへ (まうみ)
2016-07-24 00:33:57
初めまして晴子さん。コメントをありがとうございました。
リンクはどうぞ、ご自由になさってください。
わたしも、できる限りのことをしたいと思っています。
高江の支援は、日本の社会で被害を押し付けられている様々な地域の人たちへの支援にもつながると思います。
今 沖縄で起きている事は いずれ全国でも起きる (minamina)
2016-07-24 01:14:41
はじめまして。
高江で検索して、貴ブログに出会いました。
詳細な情報を発信してくださる事に、感謝いたします。
私は、昨年春に高江のある東村の農園で3週間滞在しました。
夜に爆音と窓の振動の凄さに外へ出ると、米軍ヘリが真上に。
石を投げたら当たりそうなほどの近さで旋回。
ハリウッド映画のようだと思うくらい、非現実的な光景に圧倒され、衝撃を受けました。
夜11時頃まで周辺をネチネチと低空旋回しているのです。
気分が悪くなり、窓を閉めて耳栓をしても振動は避けられません。
ヘリが去ると、あちらこちらから赤ちゃんの泣き声や犬や家畜達の鳴き声が響きました。
住民の皆さんは、大変な思いをされています。
日本国内の様々な基地を訪ねましたが、あんな低空旋回をするのは沖縄だけ。
沖縄の人たちの人権や生物環境を踏みにじる本当に酷い状態です。
辺野古も訪ねましたが、米軍基地移設に反対する人たちが機動隊員や海上保安官から激しい暴力を振るわれています。
右翼がカッターを振り回して辺野古移設反対者に怪我をさせた時、目の前にいる機動隊員も通報を受けた警察署も動きませんでした。
沖縄は選挙で何度も基地賛成派を落選させているのに沖縄の民意を踏み躙り、沖縄県知事を中国の手先とのデマを流して中傷。
アベ政権の人権蹂躙は甚だしく、国家権力に楯突いた国民は暴力で排除し、社会的制裁を与える。
今、沖縄の人たちが国から受けている事は、全国に波及するでしょう。
原発の再稼動や経産省前での市民の抗議にも、激しい暴力が振るわれています。
沖縄で起きている事を他人事と考えている多くの人々は、自分にも起きる問題だと気づいてほしい。
特に、沖縄の事をきちんと報道しないメディア関係者の皆さんに危機感を持ってもらいたい。
こうしてブログ等で伝えてくださる事に、改めて感謝申し上げます。
一緒に市民レベルで拡散! (民守 正義)
2016-07-24 21:12:51
私はブログ「リベラル広場」で毎日、原稿更新している民守です。最近、高江-ヘリパット工事強行・暴虐行為について、シリーズで提供しています。大手メディアが、まともに取り上げない以上、一緒に市民レベルで拡散していきましょう。また私のブログもご一読ください。最近、自民党ネット監視システムのせいでグーグル検索が後の方になりました。「ブロガリ」で宜しくお願いします。近々に車いす障害者ですが、沖縄に行って真正面から沖縄差別の実態に向かい合って行こうと思っています。

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