百花繚乱! さまざまな種類の桜餅が春を彩ります=横浜市西区の横浜高島屋 (写真・田中幸美)

《横浜》桜咲く「桜餅コレクション」を楽しんで 高島屋

グルメ

 待ちに待った桜開花の知らせを聞いたものの、肌寒い日が続いてなかなか開花が進みません。でも、今週末には満開が期待できそうですね。そんなとき、花見のおともにぴったりなのが桜餅です。
 桜餅を求めて、横浜高島屋の和菓子売り場「銘菓百選」をのぞいてみました。

桜餅のほかに、桜の和菓子でピンクに染まった横浜高島屋の和菓子売り場「銘菓百選」 (写真・田中幸美)


 桜餅は、関東風(江戸)の「長命寺桜餅」と関西風(上方)の「道明寺桜餅」があるのをご存じですか。
 関東風は、小麦粉を溶かして薄く焼いたクレープ状の生地にあんを包むのに対して、関西風は、道明寺粉を蒸した餅生地にあんを大福のように丸く包みます。
 長命寺桜餅は、1717(享保2)年、東京・向島の和菓子屋が土手の桜の葉を塩漬けにして桜餅を考案し、向島の名跡・長命寺の門前にて売り始めたのが始まりといわれています。としたら、今年は桜餅誕生からちょうど300年の記念すべき年になりますね。
 かたや道明寺桜餅は、大阪・藤井寺の道明寺の尼が乾燥させた「道明寺糒(ほしい)」という餅米をひき、粉状にしたのが始まりとか。兵糧として用いられたそうです。

もう少しで満開の桜を愛でることができます (写真・田中幸美)


 横浜高島屋の和菓子バイヤーの高田圭祐さんによると、「現在では横浜のお客さまでも桜餅というと道明寺をイメージする方が多いようです。関東の和菓子屋さんでも道明寺が作られていて、よく売れています」といいます。

 では、1つずつ紹介しましょう。まずは東西の代表から。
 まずは、築地市場にある創業110余年のおだんご店「茂助だんご」(東京・築地)の関東風の「桜餅」(2個入り/342円・税込み)です。看板商品の茂助だんごとともに、今の季節の定番となっています。

「茂助だんご」の関東風の「桜餅」


 関西からは、さまざまな百貨店に店を構えるメジャーな京菓子の老舗「鶴屋吉信」(京都市上京区)の「桜餅」(270円・税込み)を紹介します。
 ほどよく塩漬けにした桜の葉で、ひとつひとつ丁寧につつんだ桜餅です。ほんのり桜色の道明寺に、なめらかなこしあん入りで、まるでかぐわしい春の便りのようですね。

「鶴屋吉信」の「桜餅」


 京都とならぶ和菓子処の金沢からは、あんにこだわる老舗「村上」の「桜餅(道明寺)」(216円・税込み)が届いています。細かい桜の葉が混ぜ込んであるお餅の部分は上品な甘味と塩気があっていい香り。中のこしあんはさらりとしていて飽きない味です。

「村上」の「桜餅(道明寺)」


 約200年続く老舗「乃し梅本舗 佐藤屋」(山形市)の八代目、佐藤慎太郎さんの自由な発想から生まれたのは、道明寺をベースにした桜餅「醍醐の桜」(270円・税込み)です。クリームチーズあんに大徳寺納豆を入れ、京風の桜餅に仕上げました。チーズと納豆という発酵食品で塩味に差をつけたそうです。

「乃し梅本舗 佐藤屋」の「醍醐の桜」


 醍醐は古来の乳製品、バターやチーズのようなものだったといわれています。また、京都の醍醐寺(伏見区)は桜の名所で、秀吉が亡くなる半年前に行った一大イベント「醍醐の花見」の舞台となった場所です。
 そこで、「醍醐の花見にふさわしい菓子を作るとしたら」と考え出したのがこの菓子だそう。「真ん中に利休を想像させるもの(大徳寺納豆)が入っていたら、秀吉はどう反応するだろうかとも考えました」と佐藤さん。なんだか歴史のロマンを感じさせる逸品ですね。
 ちなみに、大徳寺(京都市北区)山門の2階部分に利休の像を安置したことが、秀吉の怒りをかい自刃の原因の1つとなったとされます。その利休の墓所は大徳寺の塔頭、聚光院にあります。そして、3月28日は利休忌。秀吉と利休に思いをはせながら桜餅を食べるのも趣きがあります。

秀吉も愛でた京都・醍醐寺の桜 (写真・田中幸美)


 変わり種の桜のお菓子もいろいろあります。
 「両口屋是清」(名古屋市中区)の「桜もち ういろう製」(314円・税込み)は、名古屋らしいつるんとしたすべすべ肌のういろう生地が特徴です。

「両口屋是清」の「桜もち ういろう製」


 ういろう製をもう1つ。「しろ平老舗」(滋賀県愛荘町)の「桜ういろ餅」(270円・税込み)です。近江羽二重のぷるんとしたういろうに桜の花と葉の塩漬けを添えました。ういろうは甘さ控えめなので、桜の花や葉の塩漬けが引き立つ上品な味わいです。

「しろ平老舗」の「桜ういろ餅」


 今度はお麩を使った珍しい桜のお菓子です。
 「巌邑堂」(浜松市中区)の「麩桜」(249円・税込み)を紹介しましょう。五代目、内田弘守さんによると「麩饅頭といいますと、ヨモギを混ぜ込む商品をよく見かけますが、この麩桜は塩漬け桜花と桜葉から抽出したエキスを混ぜ込んでいます」とのことです。内田さんの作る和菓子はどこか〝色気〟を感じますね。

「巌邑堂」の「麩桜」


 東京の桜の名所、隅田川にほど近い「青柳正家」(東京都墨田区)からは「桜大福」(216円・税込み)が届きました。三代目、須永友和さんは「桜大福を食べたときに桜葉の香りが口いっぱいに広がり、桜満開の春を感じていただけるように調製しております」と話していました。ちなみにこの桜のイメージは八代将軍、徳川吉宗の時代の隅田川の桜だそうです。

「青柳正家」の「桜大福」


 桜の大福をもう1つ。
 「榮太樓總本鋪」(東京・日本橋)の「さくら大福」(227円・税込み)です。大福なので小豆あんが入っているかと思ったら、餅の中にはかわいいピンクの桜あん、さらに真ん中にはグリーンのよもぎあんが仲良く並び、見た目からも春らしさを感じられます。

「榮太樓總本鋪」の「さくら大福」


 道明寺も長命寺も変わり種もどれもおいしそうで、迷ってしまいますね。桜吹雪の中、桜餅をほおばる幸せを夢想しながら桜の満開を静かに待つことにしましょう。(写真はすべて田中幸美)
*価格はすべて税込みです。すべて、数には限りがあります。


◆横浜高島屋は横浜市西区南幸1-6-31。午前10時~午後8時。問い合わせは、☎045・311・5111。


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