3月議会では、給食費についての陳情が出て、その賛成討論をさせていただきました。

 
以下
====
 
陳情第二号「市費で給食費の一部を負担すること」について賛成の立場から討論いたします。
 
現在、清瀬市では、就学援助制度で経済的に余裕のない世帯の子どもたちの給食費をはじめ、学用品費を援助しています。
市内の小中学生の約2割が、就学援助を受けていますが、しかしながら私は、受ける権利がありながら受けていない世帯が、相当数あるのではないかと考えています。
就学援助を受けることのできる世帯収入の基準は、おおよそ582万円、ひとり親では524万円ですが、一方、日本のシングルマザーの平均年収は、各種手当を含めても220万円程度です。
この500数十万円という、「子どもを育てるのに十分でない」とされる年収”以下”で暮らしている世帯は、2割にとどまらないのではないかと考えます。
慶応大学の井手英策先生は、
「日本人は、全体として、目に見えて貧しくなっている。専業主婦世帯が減り、共働き世帯が増えているにも関わらず、世帯所得はピーク時より2割落ち込んでいる。非正規の割合も4割を超えている。結婚して子どもを持つことすら難しくなり、頼りの中間層が明らかに低所得化しつつある」。苦しくなった中間層が、ギリギリのところで、支援を受けずに踏ん張っている、とおっしゃいます。
清瀬でも、子どもを育てるには不十分でありながら、就学援助を受けずに踏ん張っている中間層が、相当数いることが想像できます。
そういった世帯はおそらく、貯蓄も十分にはできていないことが予想されます。
「勤労国家」日本では、働いて貯蓄をすることで、子どもの進学や老後、あるいは病気や事故に備える事が前提とされています。つまり、日本は貯蓄が無ければ人間らしく生きられない社会です。
貯蓄ができない中で、病気や介護などで仕事ができなくなったら、たちまち生活が行き詰まり、貧困層に転落します。所得が落ちても、せめて人間らしい生活ができるように、誰にとっても必要なものを保障する仕組みが必要です。
 
低所得者層だけを救う「救済型再分配」政策を続けて来た結果、中間層は、低所得者層や働いていない人に厳しく当たる、いわゆる「生活保護バッシング」のような「分断」が、日本社会では進んで来ました。
納税者の痛税感(税金を払う痛み)を緩和するために、納税した人を含むすべての層を受益者にすることがポイントだと言います。
北欧で、なぜ高い水準の福祉が実現しているかというと、税金が高くても、国民一人一人が、それに見合った福祉が得られるから、納税への抵抗が少ない、納得して納税を行うのではないでしょうか。
 
「ポピュレーションアプローチ」という言葉がありますが、所得で区別をしない、誰もが受益者になる「共生型再分配」の領域を作ること。それが弱者への寛容さにつながるし、同時に、低所得者にも給付が行きわたることで格差の是正効果があることも証明されています。
また、日本では、生活保護の補足率が低く、生活保護受給者の自殺率が高いことも指摘されています。つまり、救済されることへの屈辱、抵抗があることの表れです。
全ての国民を対象に、最低限の生活を保障する給付が、そういったスティグマを緩和する事にもつながります。
日本は、誰もが受益者になるという財政戦略にシフトをすべきだと、井手先生はおっしゃっています。
 
そして、最優先は、やはり教育の充実です。
教育を充実させることが、結果として質の高い労働者を育て、税収の増加と同時に、犯罪などの社会的なコストをおさえることにもつながります。
 
日本の義務教育における、家庭の経済的な負担が大きいことが指摘されていますが、給食費の無償化や一部補助は、家庭の負担を軽減することにダイレクトにつながります。
全ての小中学生に給付を行きわたらせることにより、貧困を予防し、格差是正も期待できます。
また、栄養のある食事は、子どもたちの現在と将来の健康を保障し、病気を予防する事にもつながります。
以上の理由から、給食費の無償化や一部補助は、日本が今後目指すべき方向だと言えます。
 
子どもの貧困対策として、子ども食堂など市民主体の活動が広がっていますが、行政としても今以上に積極的な取り組みが求められています。
清瀬市として、貧困の実態調査やプロジェクトチームの編成などの取り組みが必要ですが、貧困対策の一環として、給食費の無償化は有効な方法だと考えます。
 
清瀬市として、就学援助の拡充に取り組んできていることはもちろん評価しますが、ぜひ、すべての子どもへの給付により得られる効果を検証していただきたいと思います。
補助金もない中で、すぐには難しいことも承知していますが、国や都に予算要望をすることも含めて、一食一円からでも、給食費の一部負担に取り組んでいただくことを要望して、陳情第二号への賛成討論と致します。