シャープが2017年3月13日に大阪府堺市の同社本社で行った社長会見は、シャープの業績回復が順調に進んでいることを裏付けるとともに、鴻海流による改革が、その原動力となっていることを示すものになった。

シャープは、2016年度業績見通しが、営業利益および経常利益で黒字化する見通しを明らかにしている。通期の最終黒字化は来年度以降になるが、それでも第3四半期(2016年10~12月)は、最終黒字化し、着実に成果をあげている。

シャープの戴正呉社長

シャープの戴正呉社長は、「業績の数字は問題にはしていない。株価も気にしていない。内部統制と、構造改革の推進を重視している。構造改革においては、経営資源の最適化、責任ある事業推進体制、成果に報いる信賞必罰の人事制度の3点から取り組んだ」と、成果の要因を示すが、数字はしっかりとついてきている。

シャープは2015年度には、448億円の営業赤字と、2223億円の最終赤字を計上していた。そのシャープが、ここまで回復した理由はなにか。

それはひとことでいえば、鴻海流ともいえる経営手法が浸透してきたことに尽きるだろう。

鴻海流投資への考え方

鴻海流といえる手法のひとつは、投資に対する考え方の浸透だ。

戴社長は、「私は300万円以上のものはすべて決済する。この半年間に、2000件を決裁してきた」とする。

判断のポイントは、この投資が必要なのか、それに至るプロセスはどうなっているのかという点だという。「最初の2カ月の合格率は20%以下。いまでは、7~8割に合格率が高まっている」と戴社長。それまでの投資への提案内容が甘かったこと、そしてこの半年間で、投資に対する社員の意識が変化してきていることを示唆する。

「私は、かつての経営陣のように150億円もの減損が発生するような案件を、精査をせずに決済はしない。カンパニー長にも任せない。そこが以前の経営とは異なる」と語る。

今回の会見は、新たに設置した「集会室」を初めて外部に公開したが、これは、シャープの独立経営時代には、車寄せだった部分。戴社長は、「クルマが2台止まる車寄せだった部分を改装したものであり、そこにガラス窓とカーペットを張っただけで、大きなイベントを行えるスペースを、低コストで作ることができた。今後、記者会見や株主総会にも使える」などと、同じ話を数回繰り返した。これが鴻海流の考え方なのだろう。

会見が行われた「集会室」車寄せだったとは……

そして、こんな言い方もする。

「3月12日に、サウジアラビアの国王が来日したが、専用機から降りる際のタラップがエスカレータになっていた」と前置きし、「本社入口に2階に通じるエスカレータがある。ここにエスカレータが必要なのか。ここは、シャープであって、サウジアラビアではない。この場所に、エスカレータは必要ない」と、冗談混じりに不要な投資が多いことを指摘する。

投資に対する鴻海流ともいえる考え方は、こんなところからうかがい知れる。こうした考え方が全社に浸透しようとしているわけだ。