Facebookはトップパブリッシャーと協力し、今夏を目処にオリジナル動画のリリースに向けて動いていることが、ロイターの報道で濃厚になった。「これはYouTubeのような体験を創り出すために、Facebookが仕掛ける戦略だ」と、情報筋は語る。
Facebookはトップパブリッシャーと協力し、今夏を目処にオリジナル動画のリリースに向けて動いている。
情報筋によると、コンデナスト(Condé Nast)、マッシャブル(Mashable)、リファイナリー29(Refinery29)らは、Facebookと提携し、オリジナル動画を独占配信するという。ロイターの報道では、さらにBuzzFeed、Vox Media、ATTN、グループナイン・メディア(Group Nine Media)らとの提携も明らかになった。なお、これらの多くは、毎月Facebookから各種動画の制作費支援を受けているメディアだ。
「これはYouTubeのような体験を創り出すために、Facebookが仕掛ける戦略だ」と、情報筋は付け加える。
Advertisement
ふたつの動画ユニット
去年の終わりごろからFacebookは、モバイルアプリの動画タブでリデザインされる、エンターテイメントの動画コンテンツに投資し、配信の拡大を目指している。投資の方法はふたつある。ひとつは、オリジナル番組で「ヒーロー(hero)」と呼ばれているユニット。Facebookが完全にコンテンツの所有権を保持し、20〜30分の長さで、脚本があるものとないものがある。もうひとつの「スポットライト(Spotlight)」と呼ばれるユニットは、より短い4〜10分のコンテンツで、Facebookはコンテンツの所有権をもたない。
また、サイエンス、スポーツ、ポップカルチャー、ライフスタイル、ゲーム、ティーンネイジャーという6つの幅広いジャンルで展開する予定で、パブリッシャーから不評のハードニュースには手を付けない。情報筋の話では、オリジナルコンテンツの予算は低価格ケーブルテレビの予算に等しく、ひとつのエピソードにつき25万ドル(約2800万円)ほどで、「スポットライト」の場合は1万ドル〜4万ドル(約110万〜450万円)ほどだという。
ほとんどの動画コンテンツの取引は、「スポットライト」に集中している。パートナー企業は、複数の「スポットライト」をFacebookに販売しており、Facebookは独占的に7日間、それを掲載できるという。その後、コンテンツオーナーは自社メディアのサイトやアプリ上で「スポットライト」のコンテンツを自由に配信できる。2週間のFacebookでのプレミア期間のあと、「スポットライト」のコンテンツは、YouTubeやその他ソーシャルプラットフォームでも配信されると、情報筋は話す。
この動きは、Facebookが完全にコンテンツの所有権をもつオリジナル動画コンテンツの「ヒーロー」とは異なる。しかし、「ヒーロー」では大手のデジタルパブリッシャーと同様に、大手TV制作会社や放送局とも交渉し、コンテンツを購入している。そのため「ヒーロー」のコンテンツ数は、おのずと「スポットライト」と比べて少なくなる。
ミッドロール広告で収益化
「スポットライト」がこれまでのメニューと異なるのは、基本的にFacebookが配信するコンテンツの資金は出していること。そして、コンテンツの合間に入れるミッドロール広告で収益を取り戻し、追加の広告収益についてはコンテンツオーナーと分配することになっていることだと、情報筋はいう。YouTubeと同じく、45%をFacebookが取り分としている。
「現在、Facebookは制作費を払っているが、今後は『スポットライト』が展開されることによって、ミッドロール広告の収益により制作費が担保されるようになっていくだろう」。
CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、いまのところはFacebookがコンテンツ制作費のために先行投資を行っているが、最終的な目標はそうした仕組みに頼らなくても動画コンテンツを作れるような広告プログラムを構築することだと語っている。
リリースが遅れている理由
もともとは、この計画は、6月のカンヌライオンズに合わせるため、5月の下旬にはリリースする予定であった。Record(リコード)によると、その計画は動画タブのデザインをどのように見せるか、動画コンテンツがどのように配信されて、広まっていくべきかを検討するために伸びてしまった。
情報筋によれば、動画タブは「スポットライト」のオリジナル動画が循環するように最初に表れ、その後に一般の投稿動画が表示される仕様になるという。1日に6本のスポットライトの動画が配信される予定で、製作パートナーのために、配信される週のなかで特定の日にちと時間帯を狙ってプロモーションが出来ると話している。
「これはFacebookにとって新しい分野に切り込んだ試みだし、動画コンテンツのクリエイティブや提案に際して、彼らはとても敏感に反応している。しかし、彼らの様子を見る限り、このメニューが6月にリリースされることはないようだ」と、情報筋は締めくくった。
Sahil Patel (原文 / 訳:中島未知代)