米国とキューバの国交回復を受けてオバマ大統領が2016年3月にハバナを訪問した。キューバはこれから旅行先ランキングで人気が急上昇するはずだ。宿泊先としては「Airbnb」がホテルよりも有望になるかもしれない。

 国交回復を機に、米国は種々の経済制裁を緩和しているようで、その中に含まれているのがAirbnbの本格的な展開だという。アメリカ企業である米Airbnbは、これまでアメリカの旅行者だけに限定してキューバでのサービスを提供してきた。2016年4月以降は世界のユーザーがAirbnbを利用できるようになるという。アメリカ人のキューバへの旅行は、これまでも様々な条件付きだが可能ではあった。

 さて、それではどんな部屋があるのだろうと早速Airbnbのサイトを見てみた。

 まず驚いたのは、その値段。ハバナ市内で1泊23ドルから70ドル程度の部屋がいろいろ表示される。中には、家を丸々借りて40ドルとか54ドルといった場所もある。これは日本ならばカプセルホテルの値段だろう。

 写真を見ると、格好いいキューバのコロニアル風建築で、黄色い壁と白い窓枠、高い天井にはシャンデリアがつり下がっているという雰囲気満点の部屋もある。せっかくキューバに行くなら、こうした部屋に泊まるべきだろう。

 これからの観光ブームに備えて、キューバにはグローバルなホテルチェーンも目を向けている。「Starwood」も米国のホテルチェーンとしてキューバに一番乗りを目指して、現在準備中だ。そうした外資が入ってくると、数年後には町並みも国際化してしまい、キューバの匂いがどんどんなくなってしまう。今のうちにキューバっぽい場所を体験しておくのが良さそうだ。

キューバでの民泊、不便さも含めて楽しむ覚悟を

 ところが、キューバっぽい場所を選ぶと、今度は設備面で驚いてしまうことになるだろう。エレベーター、洗濯機、乾燥機、ヘアドライヤー、アイロンなどはことごとくない。まあ、それも体験のうちかと我慢するとして、我々が困るのはインターネットが使えないことだ。Airbnbに出ているいろいろな部屋や家をクリックしたのだが、ワイヤレスインターネットはもちろんのこと、そもそもインターネット接続サービスがないケースがほとんどだった。

 オバマ大統領は、今回の訪問で米GoogleがキューバにWi-Fiやブロードバンドのアクセスを提供することが決まっていると明らかにした。現在、高級なホテルやお金持ちの家にはインターネット接続回線があるだろうが、かなり限定的だ。我々が米国や日本で気軽に利用しているようには使えない。Googleの計画の詳細はまだ明らかにされていないので、すぐさまインターネット接続環境が整うということも考えられない。

 キューバ政府は2015年、キューバ第2の都市、サンチャゴ・デ・キューバにパブリックWi-Fi(公衆無線LANサービス)を設置したが、1時間当たりの使用料が4ドル50セント。キューバでの平均月収は20ドル(2013年時点)というから、1時間で月収の4分の1を費やすというとんでもない料金だ。携帯電話向けののデータサービスがどうなっているのかは不明だが、ネットにアクセスはできないものとして、現地を堪能するアプローチで出かけるのが賢明だ。

 現地らしさと言えば、私自身が10年ほど前にハバナに行ったときには、物資があまりに貧しいのに驚いた。砂糖や小麦粉は配給制で、そのほかの食料品も簡単に手に入る様子ではなかった。

 その時は外資系の、地元民から見ると高級ホテルに宿泊していたわけだが、町を歩いていると、ホテルのアメニティーのシャンプーや石けんが欲しいと見知らぬ女性にお願いされた。そうした生活の基本的な商品も手に入らないのだった。Airbnbで宿泊するにも、そうした身の回りの必需品は持って行く必要があるだろう。都市の中でキャンプをするような感じだ。

 それにしても、Airbnbで20ドルとか40ドルといった宿泊料は、我々にとっては実に安いが、現地では月収を一晩で稼ぐということになるのだろう。しゃれた家を持っている人と持たざる人の格差が気になるものの、グローバルなホテルチェーンなどではなく、地元の人々にお金が落ちる仕組みとして、シェアリングエコノミーの本当の実力が発揮されるのかもしれないと思うのだ。

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