歯科コラム 一覧

特集 船越 栄次先生

歯科医師として求められるもの、あるべき姿

歯科医師として求められるもの、あるべき姿

競争社会の激化によって、一昔前のように高額の給料を稼ぐことはこれだけ歯科医院が増えた現在では非常に難しいでしょう。特に初めから高い給料をもらえる時代ではありません。ある程度の技術を学びながら成長できる歯科医院を選ぶことが重要です。初めから高収入を求めていても、技術が伴っていかなければ、歯科医師として成長はできないと私は考えます。また、医の倫理をしっかりと学べる歯科医院に勤務してもらいたいですね。高収入だけを考えていると、患者様をものと考えてしまい、収益を上げることに比重が高くなりがちです。歯科医師として高い志を継続できる歯科医院で、自分の成長を感じて仕事をしてもらいたいです。

これは、雇う側にも言えることです。技術をしっかりと教えることが勤務医の成長に役立つわけですから、院長には常に勉強する姿勢が求められます。院長の技術がなかったら、代診の先生方は絶対に居着かないです。代診の先生方はよく見ていますよ。したがって、私は様々な意味で一番勉強をしています。まず私が新しいことを勉強し、学んだことを始めて、それが修得できたら代診の先生に教えるようにしています。代診の先生方がアメリカやヨーロッパに行かなくても、海外の治療が自分の歯科医院でできるようになるのです。雇う側の院長がそうしなければ、クオリティの高い先生は集まってこないですよ。歯科医師として常に向上心を持って、勉強を続けてもらいたいですね。

失敗しない 歯科医院の選び方

失敗しない 歯科医院の選び方

給料が高いところばかりを望んでいても、必ずしも良いことはありません。雇う方も給料が高ければ高度なことを求めますし、それに対応できるスキルがあるかという、雇う側と雇われる側との間の問題になりますよね。当院は1年目は初任給10万円で、2年目は20万円、3年目は22.5万円、その後は25,000円ずつ増えていくといったシステムです。決して高くはありませんが、それでも10年以上勤務している歯科医師も数名います。

私は入職希望者との面接で、何を求めて当院に来られるのか、勉強したいのか、給料がほしいのかなどを伺っています。給料であれば、「給料面では魅力がないので、他院をお薦めします」とはっきりとお伝えしています。ただし、当院で技術を学べば、開業後にはほかの先生方より良い技術を持っていることになるし、歯科医師としての勝負に負けないように必ず育てていきます。そのためにしっかりと教育していきますし、フォローしていきます。技術を学びたいと強い気持ちを持っている方であれば雇うけれども、気持ちがなかったら、ほかの歯科医院に行った方が良いと言いますね。その方針は今後も変わることはないでしょう。

若い歯科医師の将来のために

若い歯科医師の将来のために

歯科診療の土台をしっかりと勉強してほしいですね。いくら立派な格好いい建物を作っても、基礎や土台が不安定ですと、すぐに倒れてしまい、安心して住むことができません。歯科診療も同じです。全ての分野が重要ですが、基本的な歯の治療の土台は歯周病治療なのです。歯を支える骨を溶かしたりするのが歯周病ですから、根本的に治せる勉強をまずしておくことですね。それさえできれば、上部構造を削ったり、型を取ってブリッジを作ったり、インレーを入れたり、クラウンを入れたりと歯科医師として最初の虫歯治療が始まります。

今の大学では歯周病をしっかり教え込んでいないので、やはりどこかで勉強することが必要でしょう。高層ビルのような建物ではなく、ピラミッドのように裾野を広く、土台がしっかりした方が頂点が安定するはずです。私が歯周病を究めようと思い、専門医を取ったときは解剖、細胞学、免疫学、病理学など、学部で教わったことを大学院でも再び学びました。土台をしっかりと勉強してから最後に歯周病学を習い、徐々に領域を狭めて、頂点を究めていくのです。土台の勉強ができていれば、例えば新しい材料が入ってきたときに吟味することができるのです。先程、お話をしたJEM21でも、私が「1つのグロスファクターしか入っていないから使わず、まだ吟味していきたい」と方針を立てられたのは土台の知識があるからです。

見よう見まねでしか勉強をしていない人ですと、「何で、この材料を使うのか」と聞いてみても、「ほかの先生がやって、良いと聞いたから使っている」など、理論がありません。そうなると材料屋の宣伝が良ければ使うし、悪ければ使わないようになるわけです。メーカーは自社製品の売り込みのために良く言うに決まっていますから、自分の考えに合った材料を選択し、材料の有効性やリスクなど、総合的に理解して使うべきです。ですから、若い歯科医師が勉強会や研修会に行く場合、ハウトゥだけ教えてもらえる講師のコースではなく、本当の知識を持っている講師が教えているコースを受けてほしいです。