「木下黄太のブログ」 ジャーナリストで著述家、木下黄太のブログ。

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石巻の避難所で救援活動にあたっている医師からの警告

2011-04-12 00:14:42 | 福島第一原発と放射能

石巻の湊地区でおきている事を、ある医師からメールで伺いました。ここでおきていることと、福島第一原発についておきていることは、今の社会の、国の根幹に底が通じることだと思いました。まず小野沢医師のメールをお読み下さい。ほぼ原文のままです。この後小野沢先生に取材もしています。

この記事の内容をそのまま拡散しているメールが大量に流れていると聞いています。ブログの中身を転載されるのは構いませんが、必ずこのブログのアドレスを明示して、ここからの転載だと明記してください。小野沢先生のメールと僕の記事を混濁してメールが流れているようですので、常識的な引用のルールをきちんと守ってください。過剰なことになるとご迷惑になりかねません。メールも考えて出して下さい。 (追記 2011/4/15 15:50 木下黄太)

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石巻にて、怒りと悲しみを込めて

亀田総合病院 小野沢です。
先月29日から石巻に入っています。4月6日、遊楽館という避難所で当直をしていました。
ある男性が、苦しそうだと言われ、診察をしました。すでに呼吸停止、共同偏視があり、
何か大きなイベントが起きたことは明らかでした。救急車の到着は30分後、彼は泣き崩れる妻の脇で口から血を流しながら息を引き取りました。

湊中学という避難所に行きました。リウマチの女性が手首を腫らし、痛みに耐えていました。受診の手続きを取りましたが、彼女はその避難所から沖縄への移住を希望しました。沖縄は県をあげて受け入れをしていると、あるMLで知ったからです。沖縄の担当者に連絡をすると、『罹災証明申請書のコピーが必要です』『沖縄の受け入れは、災害救助法ではなく県の予算なので、5人まとまったらはじめて飛行機に乗れます。飛行場までは自分できていただく必要があります。そこでチケットをお渡しします。』『申込書はインターネット上から、書式をダウンロードしていただき、印刷して書きこんでください』と、担当官に告げられました。非常に困難な条件で、少なくともパソコンをプリンターを持った援助者と、飛行場までの足、罹災証明書の申請を行うために市役所に行くという手順をその足が腫れた女性が手配しなければ不可能なのです。責任者の方とお話ししましたが、埒があきませんでした。

湊中学は、瓦礫の中にあります。入り口にはニチイのデイサービスセンターの車が3台、見るも無残な形で横付けになり、津波に洗われたホコリとヘドロがそのままになっています。そこでは避難途中の方がかなりの数亡くなられたとのことです。近辺には人影はまばらで、地震から1ヶ月ほどたった現在でも、車が家に突き刺さり、魚の腐った匂いが立ち込めています。湊中学避難所には電気も、水道も、下水もありません。便はダンボール製の看護師手作りの便器にして捨てています。一ヶ月経とうと言うのに。

果たして、これを市の職員が中心になって解決できるのでしょうか。
彼らも罹災しているのです。明らかに疲弊しきっています。毎日、市民から多くの非難をあびながらの仕事です。
あまりにも広範です。あまりにも人数が多すぎます。未だに、自宅避難者の詳細も分かっていません。

市内の3地区の在宅避難者の調査をします。ボランティアを東京、千葉、宮城などから60名集め、市の保健師さんに情報をもらいながらの仕事です。しかし、市内のごく一部なのです。このデータが市全体の被災者の推計に使用でき、少しの被災者のためになり、そして一番には今後の計画の助けになればと考えての行動です。

ふと、これは私の仕事だろうかと思うことがあります。

国会議員の皆さん。是非、立ち上がってください。やっている、と思われるのであれば、そのやり方がどこか間違っているのです。上手くいっていません。非常事態宣言を地区を限定して発するのもひとつの方法でしょう。

とにかく、物事が遅きに失しています。

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このメールをもらって、官邸の参与にメールを転送し、直接目を通して、現状を伝えてほしいといつものように話しました。彼は「こういう話は次々、ぼくのところにも来ているのですよ。なんとかしたいけど、まったくここは動かない。菅は決めないよ」と嘆き節ばかり返ってきます。

そして、小野沢先生とも話しました。

 石巻の湊地区にいます。木下さん。避難所は学校が始まりだすこともあって、教室で閉鎖が始まっているのですよ。そしたら、体育館しか使えない。体育館は寒いんですよ。疲れる。市内から650人があぶれていて、かなり狭いんです。避難民のうち、特に高齢者は限界に達していて、ノロウイルスの蔓延は防ぎようがない感じがします。特に体育館はさっと広がる。お年寄りや幼い子どもからやられていく。防ぎようが無いんです。そんなレベルで蔓延すると一つの体育館で一人が死ぬようなこともおきるんです。教室なら数人規模ですから、まず蔓延はとまるけれど、体育館は一人患者が出ると防ぎようがないのです。皆さん、体力が落ちているんです。メールで書いた人は脳出血で亡くなったと思います。

 こういう言い方をすると大変失礼にあたるかもしれませんが、尋常な状態で皆さんないんです。極端に言うと、地下街の浮浪者にだんだん近づいてきている感じです。避難所は、石巻において、特に湊地区は最もひどくなりつつあります。ゴーストタウンのような感じです。屋根上に大きな駐車場があるスーパー、エレベータホールに二十人の方が住んでいるままで、仮設トイレを設置はしているんですが。ところが、ちょっとはなれたところでは被災していないエリアもある、普通にホテルは営業しているんですよ。ちょっと行くと普通なんです。二、三日交代でくる公的な機関の支援者が借り上げていてそういうところに泊まっているんですよ。なんで被災者が体育館に寝て、公的な人達がホテルに寝るのか理解できません。こういうホテルや遠隔地のホテルを国が借り上げて、被災者を泊まらせたほうが話が早いんです。

 こういう場所から思い切って全面的に離れたほうがよいとは思いますよ。でもなかなか離れたがらない。居たいんです。その理由は、家のかたづけと頻発している物取りの対策なんです。それでも遠隔地のホテルから週二回でも現地にいけるなら、本当はさらなる避難を承諾すると思います。最初はこの地を離れないといっていたんですが、一ヶ月たってずいぶん変わってきました。国がホテルの予約を全部借り上げて、徹底してやればいいんです。ハッキリ言って今も非常事態は継続したままなんです。私有財産権も一部制限をかけるしか現地では方法はありませんよ。なんで東日本壊滅と総理自らが言い出した癖に、今、非常事態宣言もしない感覚が理解できません。

 ここにいて、原発のことも凄く気になっているんです。僕は今回、すこし遠隔地に避難させるスキームをやろうとして東北にいますが、その点から考えても、原発もシリアスな状況です。僕らは、もともと千葉の鴨川ですが、福島第一原発の不測の事態を考えると、関係者の子どもたちなどを西日本に避難させられる様に拠点の準備だけは既にしています。当然だと思います。さらにこの状況で浜岡原発を止めないと、万が一、何が起きてもおかしくないんです。あの立地はさらにシビアです。今、こんなことが続いているのは本当に理解できません。

 僕の見ているところでは、ウンチを紙で丸めて捨てている人がいる、なのに近くの温泉旅館では普通に宴会をしていてるんです。温泉旅館には被災者が行くべきなのに。日本の社会はなんなんだろうと思いますよ。民主党を応援していたけど、もうこんなことを一ヶ月近くも放置しているのを見ていて、ほんとに耐えられないんですよ。避難所を体育館でもきちんとした設備のある地域まで移動させる、人々を強制的に安全な場所へ移す。「バスで送ってください。もう一ヶ月も経っているんですよ。」と。さっきの余震もかなりゆれました。まさに現地は”DAY AFTER TOMORROW”の世界です。阪神大震災は木下さんは現地に行かれたならわかりますよね、あの時はボランティアがかなりいましたよ。緊張していたけど、人間が信じられた。今回もいるんだけど、エリアが広すぎて、目立たない。分散しているからかもしれないけど。だから、荒涼とした空間に、悲惨な状態が続いているんですよ。映画でしか見たことのないような世界が広がっていて、漠たる不安が収まらないんです。避難ということが津波の被災地でもきちんといまだに行われていないのです。さらに原発もおさまらない。これが現状なんです。

 

小野沢先生は遠隔地避難や避難拠点の構築という観点もお持ちの医師で、こうした津波の悲惨な現場でぎりぎりの活動を続けている方です。避難という観点から見た場合、今の政権が、津波の避難所の構築も機能していないという認識を聞くと、原発も含めたトータルとしての避難という考えに到底たどりつかないだろうという現実をさらに思い知らされます。津波による恐怖が続いていることと、原発震災の恐怖も、その原因のみならず、対応についても全く同じ感覚があるのだということを思い知らされました。本当に恐ろしい話です。





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171 コメント

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民主はどうしよもない (あさたかし)
2011-04-12 01:06:24
今回の震災は他と違います。規模が大きいのです。私は阪神も行きましたが、今回の被災地はあまりに範囲が大きかった。

おそらく政府は実態をつかめていない。
にもかかわらず、つかめていると思っているところに全てがあるのです。
民主素人政権の馬脚が表れているのです。
何もわかっていない者が、分かったつもりで指揮を執るからこうなっているのです。
おそらく原発もそうなのでしょう。

状況を把握できずに敗北を続けた大戦末期の日本軍そのままです。

いまこそ、真っ当な政権批判が必要な時。声を上げなければいけないのです。
Unknown (茨城県北在住)
2011-04-12 08:48:32
私はもともと東北の出で、とても今の状況では
実家や、長く住んだ地を訪れることはできないので
たまにくる友人達からのメールが頼りです。
仙台市中心部や、宮城県でも内陸のほうはだいぶ
落ち着いたようですが…
津波が直撃した沿岸部で、とくに市街地から離れているところは
ひどいのではないでしょうか?

もともと頼りない政府とは(個人的に)思っていましたが
東電と併せ、ここまで後手にまわるとは思いませんでした。
未曾有の天災と人災を前に、いまだ体裁を取り繕っている。
もともとなかった信頼や体裁は本当にどうでもいいので
まず人命と健康を救ってほしいです。
被災者・国民・政府とって、その方が益があると思います。
できることは何か (50のおじん)
2011-04-12 11:16:57
国は、国家公務員宿舎・雇用促進住宅・公営住宅等4万2000戸を用意している。また、県単位では、旅館・ホテルを借り上げて提供している所もある。

テレビ報道によると、それらの情報の告知が避難所によって区々だそうである。知っていても、病院・学校等の情報が含まれておらず、また、仮設住宅の申し込み待ち等の理由で動けないという声もある。

人により抱える事情は様々である。一人ひとりに最適な場所を用意することが最善ではあるが、現状では次善の策を甘受せねばなるまい。例えば、沖縄への移住を希望しているリウマチの女性には、沖縄県の受け入れ条件に合わせるか、できなければ他の場所を探す他ない。一時的に旅館に移るという手もある。

政権に対して、要求すべきなのは当然である。批判するのも当然である。しかし、それと同時に、今取り得る選択肢の中の最善を選んで行動するしかない。

ところで、病気や怪我については医師や看護士等が把握していれば良いが、その他諸々の被災者に関する情報はどう扱われているのだろうか。データベース化されているのだろうか。それが県や国レベルで共有されているのだろうか。調査等の進捗状況を一覧できるようにしていれば、人員の補充や投入も容易になる筈である。いずれにしても、現地にいなければ分からないことだらけではある。
当然の結末 (Unknown)
2011-04-12 22:21:06
民主党にまかせるとこうなることは政権交代前から、遅くても政権交代後の基地問題のゴタガタを見たなら分かりきっていたことじゃん。

なんでこうなることが分かっていて、もしくは眼をつぶって民主党を応援している/きたか理解不能
日本は地震国!! 4年もあれば遅かれ早かれ地震は経験するのから、こうなることは確定事項だったんだ

もう一回言う。民主党を応援したなら当然の結末。


Unknown (Unknown)
2011-04-12 22:59:33
政党の責任にして高見の見物 今すぐ現場に行き役立ちたいという思いが
先に立たない ああ
一生悔いてなさい (あきらめています)
2011-04-12 22:59:47
現政権を応援した人への報いがすさまじいですね。
一生後悔してもしきれない。
応援してない人にも申し訳なく思う必要あり。
まだしばらくは誰も助けてくれないんでしょうね。

お湯が沸いたのでコーヒーを飲みますね。
のど元過ぎても忘れませんか? (通りすがり)
2011-04-12 23:15:20
被災地の現状他、いたましい限りです。
何も力になれない自分が歯がゆいと、私を含め多くの人が思っていると思います。

ただ、私にも微力ながらできることがある。
それは、あえてキツイ言葉で書きますが、

 このような無能な政党を応援した人間を咎めること

です。
上の方が書いているように、応援した人にとっては、これは完全なる自業自得。
これだけ、あるいはこれ以上に能力が無い集団だと言うことはわかりきっていたことです。
わからかったのならば、自らのその不明を心から恥じて下さい。

今は、私も被災者等にはまったく同情しますが、このあと数ヶ月、数年経ったらどうでしょうか?
のど元過ぎて、また、縁故やイメージだけで無能な国会議員や政権を応援したりしませんか?

そこをキツク申し上げておきたいと思います。
過去の自分の判断を省みて、未来にそれをつなげてください。

これは、我々にも出来る、これからこのような惨事を繰り返さないことの努力の一つと思います。

Unknown (Unknown)
2011-04-12 23:34:22
阪神淡路の時も、村山が首相で自衛隊の出動が遅れ、多くの犠牲者を出しましたが、今回も素人集団・民主党が運悪く政権を握っていたため、人災が拡大しているのがもどかしくて仕方ありません。

便を段ボールで出来た便器に・・・という話は聞いていたので、何てことだ、地域全体がまだ復旧していないのか・・・と思っていたのですが、近くでは宴会も出来るホテルがあるなんて、知りませんでした。先生のおっしゃるとおり、借り上げて避難させて下さい、と本当にお願いしたいです。

日本はどうして、大災害の時に自民党以外が政権を握っているのでしょうか。私は腐っても自民党なんじゃないか(ノウハウはあるのでは)と思うようになりました。
当然の結末?? (Unknown)
2011-04-12 23:35:48
当然の結末かもしれない。だが、判断を誤らなかったことがそんなにエライのか? この事態を前にエラそうに上目線でものごと言っている暇があったら、どうしたら少しでも状況を改善できるか、少しでも自分に何ができるのか、頭を使おうよ。
Unknown (祖国を離れて)
2011-04-12 23:50:42
お疲れではないでしょうか。 なるべくお体を休めて下さい。
何せ戦争のような日々でしょうから。

地震の巣の上にある日本、どこに作っても原発は恐ろしいものなのです。
しかし金に目がくらみ、悪魔に魂を売ってしまった福島の人が、一時の甘い汁を吸ったツケとしてはらう犠牲のあまりにすごすぎること。 あってはいけないでしょう。

祖国日本には家族がいます。 大事な人がいます。そんな彼らをそして国民の皆さんの命を放射能にさらすなんて、悲しくて毎日泣き明かしていました。

海外の報道が最初に伝えた時、私は今の日本の原発の状況を想像していました。それは地震のあったすぐ後です。
何故遠い海外にいてそんな風に思い、日本にいて、被災地にいて、まだ安全だと思っていたのか、それも耐えられないほど悲しい。 どこまで命を粗末にさせられているのでしょう。
そんな為に生きてきたわけじゃない、そんな為に生まれてきたんじゃない。
そうでしょう?

日本の報道を見るたびに、これが21世紀の先進国と呼ばれる国なのか、と嘆き続けている一ヶ月余。 先進国ではないですよ。 国民を守れないってどんな政府なんですか。
国民をまもる為にある政府でしょう。
根本が違っている。

そして今度は言論の自由を奪うのでしょうか。  

チェルノブイリよりも酷い被害、ナチスのように醜い政治。

どうか一刻も早く、少しでもいい状況になって欲しいと思っています。

今元気でおられる方々は元気を維持し、
これからの日本をきちんと見つめてください。 

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