多くの日本人が知らない「人口減少」と「東京一極集中」本当の意味

首都圏から見た地方創生【前編】

地方創生を首都圏から考える

人口減少は東京一極集中によって起きている。これが政府の示す地方創生が取り組む問題の基本図式である。

ところが、2015年6月に発表された「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」の副題、「ローカルアベノミクスの実現に向けて」が示すように、その対策の中心は地方の仕事づくりであり、地方は「稼ぐ力」をつけて東京に対抗する経済を作りなさいという方向へと流れてしまった。

だが、人口減少の原因が東京一極集中にあるのなら――そして事実、子育て世代が最も多い東京で極端に出生率が低いのだから――、東京でこそ、少子化対策を行わねばならず、またもっとも仕事の多い東京でもっとも出生力が低いのだから、地方や農村においても仕事づくりではなく、もっと別の対策が行われる必要があるはずだ。

私たちは今一度、こう問わねばならない。

人口減少は一体何によって引き起こされているのか。東京一極集中の何がどう問題なのか。そして東京一極集中が人口減につながる理由をふまえて、一体どういう人口維持対策を用意できるのかである。

もっとも東京都もまた地方(自治体)の一つである。都内の自治体もまた地方創生総合戦略を事実上義務づけられている。正確に言えば、東京一極集中ではなく、この国の首都への集中、首都一極集中が問題なのである。

ここではそれ故、首都圏における人口増・人口減はどのように現れているのか、そしてその分析をふまえて、人口減少対策としてどのようなことが必要なのかを考えてみたい。

 

ここまでなぜか、人口減少と東京一極集中の関係が語られながら、東京から見た地方創生というテーマは語られることは少なかった。「首都圏から見た地方創生」について考えてみよう。

首都圏の人口増地帯はいかなる場所か

首都圏のとらえ方には様々な範囲があるが、ここでは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の4都県を中心に考えておきたい。

首都圏一極集中は、まずはこれら4都県への43府県からの人口集中としてとらえることができるが、これらの市区町村の間でも人口の出入りがあり、少子高齢化の進行には地域差がある。首都圏一極集中を問題化するためにも、まずは首都圏内部での人口の集中や分布の現状を押さえておこう。

はじめに確認すべきは、首都圏でも全体として人口は縮小傾向にあるということである。

多くの地域がすでに人口減少に入っている。首都圏といえども人口が増えているところは限られる。それどころか山間部の町村では、首都圏といえども一貫して人口減少しつづけてきた地域が多く、地方よりもむしろ事態の進行は早いかもしれない。

これに対し、人口増地帯はどういうところになるだろうか。どこが比較的若い人口を抱えているのだろうか。それははたして、地方創生が想定するような、地域間競争に勝ち抜いた、努力した有能な自治体なのだろうか。

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