・ジョン・エイカフ(Jon Acuff)氏は著書『Finish』の中で、目標達成のために苦しい思いをする必要はないと語っている。
・事実、自分が楽しめることをした方が、より大きな成功につながりやすい。
・ほとんどの活動はゲームにしてしまうことで、もっと楽しめるようになる。
「痛みなくして得るものなし」
これは例えばからだを鍛えようとジムに行き、腕が悲鳴を上げる中、もう1回腕立て伏せをしなければならない時に、よく言われる言葉だ。
この格言は正しい。確かに近所をのんびり散歩していても、上腕二頭筋は鍛えられない。しかしその一方で、楽しいこと、リラックスできることをしていると、心身がゆっくり衰えていくなんてこともない。
これは、ベストセラー作家ジョン・エイカフ氏が著書『Finish』の中で、打ち壊している固定観念の1つだ。同氏はこの本で、目標達成の妨げとなる完璧主義の衝動と向き合う方法を、鋭い洞察力を持って、わかりやすく披露している。
同氏は書いている:完璧主義者は、苦労すればするほど、悲惨であればあるほど、いいと信じている。そうした人は、自分が苦しんでいる時にだけ、健康上もしくは教育上の効果があると「カウント」する。そして楽しんでいる時には、一切「カウント」しないのだ。
これは間違いだと、エイカフ氏は言う。とんでもない間違いだ。楽しいことはそれ自体に価値があるが、楽しみながら取り組むことで、我々は目標を達成しやすくなるのだ。
その良い例として、同氏は写真家のジェレミー・コワート(Jeremy Cowart)氏のエピソードを紹介している。コワート氏が掲げた目標は「恩返し」。ありがちな目標だが、達成できないまま諦める人も多い。それでもコワート氏は、これまで自分が楽しんで取り組んできたことで、人の役に立ちそうなことは何かと考えた。そして世界各地のイベントで無料のポートレート撮影を始め、これまでに50万枚以上を撮ったという。
エイカフ氏自身はある時、もっとたくさんの本を読もうと決心した。ただ、トルストイの『戦争と平和』のような文学作品にこだわるのではなく、オーディオブックやビジネス書、漫画にまでその範囲を広げた。
「1年間に100冊読むという個人的な目標を、どんな暗黙の基準に照らし合わせていたのだろう? 自分の目標を、誰の基準で評価していたのだろう? 私は自分でルールを作り、それを楽しめるものにすることに決めた」と同氏は書いている。
『Finish』は、メンフィス大学の博士課程の学生マイク・ピーズリー(Mike Peasley)氏が行った、エイカフ氏のオンライン動画講座の参加者900人を対象とした研究から、一部ヒントを得ている。ピーズリー氏の観察によると、自分が楽しめそうな目標を選ぶことで、目標達成の可能性は約31%上がり、パフォーマンスに至っては約46%向上するという。
また、エイカフ氏が引用したハミルトン大学のダニエル・チャンブリス(Daniel Chambliss)氏の論文によると、エリートの水泳選手は厳しい練習や激しい競争を辛いとは思っておらず、むしろ楽しんでいるという。
つまり、やりたくないことを選ぶより、楽しみながら成長、成功できそうなことを選んだ方が大きな成長や成功につながりやすいということだ。
ただし、ここで注目しておきたいのは、フロリダ大学のアンダース・エリクソン(Anders Ericsson)氏といった一部の心理学者たちは、犠牲や苦労を重要な成功の要素と見なしていることだ。何かしらのエキスパートになるための訓練は、少なくともそれに励んでいる時は、楽しいものであってはならない。熟練度を上げるという目標達成のためには、楽しむことは「カウント」されない。
しかし、エイカフ氏は、どんなにつまらなくて辛いことにも、楽しむこつがあるという。
「やり遂げたいなら、楽しむことだ」と同氏は言う。金曜日の仕事終わりに、自分へのご褒美として映画を見に行くなどのシンプルな方法でいい。同氏は、出張の際には少し高級なレンタカーを借りるようにしている。大切なのは、ゲームにすることに、引け目を感じるべきではないということだ。
エイカフ氏は著書の中で何度か「ズルをする」というキーワードを使って、物事を自分のやりやすいようにすることは悪いことではなく、良いことだと述べている。例えば、ルームランナーで走るのとダンスのレッスンに参加するのが同じくらい激しい運動なら、ダンスの方が楽しい人は、無理に走らず、ダンスに行けばいい。
痛みなくして得るものなし? 悪くない。でも、人生を楽しむことも間違いではないのだ。
[原文:Too many people fall short of their goals because of a nonsensical belief about hard work]
(翻訳:まいるす・ゑびす)