外来患者さんで「元々体温が35度台と低いんです」と言われる方が時々いらっしゃいます。
特に筋肉量が少なくて、小食女性に低体温の方が多いです。
体温が低下すると免疫力が落ちるとされてます(ただし、実際に免疫力を測定する方法はありませんが)。
熱は外敵と闘うために上昇します。風邪やインフルエンザなどの感染症もそうですし、癌も高体温に弱いです。
普段から免疫力を維持する理想の体温は36.8度とされています。
感冒の患者さんには、私も解熱鎮痛剤を処方しますが、出来るだけ最小限の使用を説明しております。
人によってつらさの閾値は違うので、薬を飲むなとは言えません。
さて実は、低体温は不妊症にも影響があります。
不妊症の定義とは、避妊なしで「1年間」妊娠しない状態の事です。
日本ではかつては「2年間」でしたが、2015年から他国と同様に「1年間」となりました。
不妊症の原因として女性の子宮や卵巣に原因疾患があったり、あるいは男性の精子が不妊症の原因になる場合などがあります。
原因がはっきりしたそれらの疾患を除いても、原因がはっきりしない不妊症あるいは流産も少なくありません。
その1つが低体温です。
子宮・卵巣や消化器系の癌の頻度が多いのは、それらの臓器が体外とつながっていて冷えやすいからです。
乳房も皮膚の直下にあるため冷えやすく、癌の頻度が多い臓器です。
#低体温の原因
1:喫煙
ご存じのように「百害あって一利なし」。
タバコは急激に血管を収縮させてしまい、血液の流れが悪くするとともに基礎代謝も低下させてしまうため、それが冷え性に結びつきます。
喫煙習慣のある方は夫婦とも、妊娠前から喫煙をしてはいけません。
2:食生活の乱れ
不妊症や流産の経験をお持ちの方、冷たい食べ物あるいは甘い食べ物を摂り過ぎてはいなかったでしょうか?。
特に不妊治療をしている時には、体を温める食事を摂る必要があります。
現在は、季節はずれの野菜を摂取することが可能です。ですが、冬に夏の野菜や果物を食べると身体を冷やしてしまいます。
夏の野菜は水分が多く、身体を冷やすからです。特にスイカの90%は水分です。
不妊にかかわらず、健康のためにも旬の野菜を摂ることをお勧めします。
逆に、夏は熱中症予防のために夏野菜を多く摂ることをお勧めします。
ファーストフードなどのジャンクフードは栄養のバランスが乱れます。また「AGE(終末糖化産物)」も胎盤を通過します。
妊娠初期は特に亜鉛を多く摂取する必要があります。他には鉄・セレンなどのミネラルと、ビタミンB1・B2などが必要です。
亜鉛には女性ホルモンの分泌を促進し、さらにホルモンバランスを保ち月経周期を正常に調整する働きがあります。
セレン・銅の補給は、胎盤を丈夫にして順調な出産などに役立ちます。
3:ダイエット、運動不足
運動をとり入れない食べない系ダイエットは、ミネラル・ビタミンのバランスが崩れてしまいます。
運動不足により筋肉量が低下すると、体の血液循環に影響しますし、体温保持のための機能が確実に低下します。また、筋肉の運動は自律神経の働きを調整する働きもあります。
妊娠中は強い運動負荷がかけられないので、妊娠前から運動を取り入れるべきです。
また妊娠中はウォーキングなど、運動負荷が軽いものがお勧めです。
4:服装、冷房
体表面を冷やしてしまうのも、もちろん低体温の原因です。
特にエアコンがガンガンに効いている部屋で働くことで、影響を及ぼすのが自律神経の乱れです。
自律神経の乱れによって体温を調節する機能が、鈍くなることが原因だと考えられます。夏はエアコンの温度を高めに設定しましょう。
5:ストレス
過度のストレスがかかることで自律神経のバランスが乱れて血行不良が起こることがあり、これも低体温の原因、すなわち不妊症としてあげられています。
ストレスとうまく付き合って、不妊を乗り越える必要があります。
これから妊娠予定の方、あるいは娘さんが妊娠予定の方、低体温にはご注意ください。
もちろん妊婦さんとは別に、一般の我々にとっても日頃の体温を上昇させる事は、健康的な生活を送るためにも大切なことです。
(画像はネットより拝借)