2013.06.29

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン動画版Vol.005 第1回「橋下市長の「慰安婦発言」どこがNGなのか」

【目次】

■古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol.058(動画版第5回)
テキスト書き起こし(2013年5月24日配信分)
 ●橋下市長の「慰安婦発言」どこがNGなのか
 ●合法か違法かというモノサシでいいのか
 ●成長戦略第2弾への失望
 ●メディアの「危機管理」とは何か
 ●先輩記者の職を賭した発言
 ●オープンジャーナリズムという挑戦
 ●進化し続けるメディア対策
 ●メディアを変えることはできるのか

橋下市長の「慰安婦発言」どこがNGなのか

「現代ビジネス」編集部(以下Gbiz): いつも「古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン」をご愛読、ご購読いただきまして、ありがとうございます。今日(5月20日)は動画版の第5回をお届けいたします。前回のテキスト版で、メルマガ動画版導入の理由などを説明させていただきましたが、動画版に関してはまだまだ改善すべきこともあると考えていますので、古賀さんに対する応援メッセージ、あるいは質問などと一緒に、動画版に対するご意見などもいただければと思っております。よろしくお願いいたします。では、古賀さん、お願いします。

古賀茂明(以下、古賀): はい。よろしくお願いします。今日はこの後、元NHKの堀潤さんに来ていただいて、二人で話をする時間をこの動画版の中に入れることになっていますので。最初20分程度、いつもより短いですけれども私のほうからお話をさせていただいて、その後、堀さんとの対談を楽しんでいただこうかなと考えております。

 まず最近の話題としては、どうしても橋下徹大阪市長(日本維新の会共同代表)の、慰安婦とか沖縄に関する発言を取り上げざるを得ないんです。橋下さんの発言に対しては、最初はとにかく「とんでもない」という話から始まり、橋下さんがいろいろと釈明を――最初はあんまり釈明じゃなかったんですけれども――するような展開になってきましたね。

 橋下さんは、いや、実は自分が言いたかったのはこういうことだという釈明をする中で、論点を絞る感じになっています。メディアと橋下さんのやりとりの構造というのも、ちょっとおもしろいなと思っています。

 橋下さんは最初、慰安婦問題、沖縄のことも含めて、かなり本音で、思い切り言っちゃった。それに対してメディアも、相手が橋下さんなんで、だいぶ気をつけて、あんまり揚げ足取りをするような扱いではなく、慎重に取り上げていた。たとえば「侵略」については、橋下さんは侵略を否定するのではなく、あれは侵略戦争だったと認めていますよ、とちゃんと伝えた。それから、慰安婦のことも、彼は戦時中のことについて言ってるんですよ、いま認めているわけじゃないですよ、と丁寧に伝えながら、フェアにやろうというような感じがありました。かなり注意深く報じていたという印象です。

Gbiz: 新聞社は記者会見の全文をネット上に載せたりもしていましたね。

古賀: そうですね。かなり気を遣っていた。橋下さんも最初は、「メディアもけっこうちゃんと報道してくれている」という意味のことをツイートしたりしていましたね。とはいえ、批判の中心は、一つは橋下さんが慰安婦制度を自分の個人の意見としても認めているんじゃないかという前提に立った、とんでもないという話。あるいは、沖縄駐留のアメリカ軍に対して性風俗の活用を勧めたということが、違法行為である買春売春を勧めたんじゃないかということを前提にした、これもとんでもないという批判。そういう批判が高まった。

 それに対して橋下さんは、自分は慰安婦制度がいいと言ってるわけじゃない、法律違反の売春とか買春とかを勧めたわけじゃない、勝手に誤解して批判されても困るという反論をしている。やや真意が伝わっていないと、誤解だという主張です。そして、それがだんだん「誤報だ」という話になっていった。

 そうした反論に対して今度はメディアから、「いや、だってこんな大事な問題なんだから、もっと一つ一つ丁寧に言葉を選んで話さなきゃダメじゃないか」という批判があり、それに橋下さんがまた反発して、「だったらもう、囲み取材はやめるぞ」という、売り言葉に買い言葉みたいな展開になってきた。

 でも、よく見ると、橋下さんはかなり戦略的に対応していることがわかります。論点を絞ってきている。一つは慰安婦制度はいいことではないんだけれども、各国とも、日本と同じかどうかは別にして、当時は何からの形で軍の兵士の性欲解消策のようなことをやっていたと。

Gbiz: どこの国にも似たような制度があったじゃないかということですね。

古賀: 海外から、日本だけがおかしな国だ、とんでもない国だという批判をされているんだとしたら、それは問題だから、そうした誤解に反論したかったんだという方向に論点を絞っていますね。

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