23日は国民の祝日「勤労感謝の日」だが、その年の収穫を神々に感謝する戦前の大祭日「新嘗祭(にいなめさい)」から引き継がれたことは意外と知られていない。連合国軍総司令部(GHQ)が神道の神話や祭礼、儀式を起源とする祝日の廃止方針を示し、昭和23年に施行された祝日法で「新嘗祭」の名が消えたためだ。一方、皇居の神嘉殿(しんかでん)では、今年も天皇陛下が新嘗祭に臨まれた。「宮中祭祀(さいし)の中でも最も重要で、かつ過酷な儀式の一つ」(宮内庁幹部)である新嘗祭とは、どのように執り行われるのか。(社会部 伊藤弘一郎)
新嘗祭の「夕(よい)の儀」が始まるのは23日午後6時。白の絹でできた伝統の「御祭服(ごさいふく)」を身にまとった陛下が、綾綺殿(りょうきでん)から儀式が行われる神嘉殿に移られる。御祭服は新嘗祭でのみ陛下が身につけられる装束。その重さから、着替えられるのに数十分かかるという。
たいまつの明かりのみが照らす中、白い装束姿の陛下が神嘉殿までの「御拝(ごはい)廊下」を進まれる様子について、祭祀をつかさどる掌典職の1人は「これから国のため、国民のために祈るという決意や使命、お気持ちが伝わってくる。地方ご訪問などで国民と触れ合われるときとは、全く別のお姿」なのだと話す。