2013年5月11日に放送された「ラジオフォーラム第18回」番組での「小出裕章ジャーナル」の内容を文字起こし致しました。
【主なお話】
「沖縄電力にはなぜ原子力発電所が無いのか」
【パーソナリティー】
西谷文和(ジャーナリスト)
【電話出演】
小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)
※当初、パーソナリティを石井彰さんと誤まって記載していました。たいへん失礼致しました。
▼ラジオフォーラム
http://www.rafjp.org
▼文字起こしは以下。
◆西谷
はい、ラジオフォーラム、今日はこのコーナーからスタート致します。
え〜、今日も小出さんとお電話が繋がっております。
もしもし、小出さ〜ん。
◆小出
はい、こんにちは。
◆西谷
今日もよろしくお願い致します。
◆小出
こちらこそよろしくお願いします。
◆西谷
え、小出先生、今日はですね、沖縄の特集ということで、ちょっといろいろお聞きしたいことがありまして、まずズバリですね、日本の電力会社で、沖縄電力だけ原発を持ってないんですよね。
◆小出
はい。
◆西谷
これはやはり基地があるからですかね。
どうなんでしょう。
◆小出
え〜、本当の思惑がどうかということは私には分かりませんけれども、沖縄と言うところは皆さんご承知の通り基地だらけになってしまっているわけで、そういうところに原子力発電所を建てるということは、事実上できないと思います。
◆西谷
そういうことは裏を返せば米軍は危険だということを知っていて、そういうところには造らないんだと。
◆小出
もちろんです。
あの〜、原子力発電所が攻撃を受けたときに、どんな被害が出るかということは、米国の中では度々計算まで行われていて。
◆西谷
計算までですか。
◆小出
はい。
核兵器でやられるよりもっと酷い被害が出るということまで計算しているわけですから、基地のところに原子力発電所を建てるということは、実質的にあり得ないと思います。
◆西谷
日本の電力会社って、発送電株式会社という、戦中はですね。
◆小出
そうです。
◆西谷
一つにまとめられて、で、戦後GHQがその電力会社を九つに分割して、東京電力や関電にしたわけですよね。
◆小出
そうです。
◆西谷
そのとき沖縄は日本じゃないので、これは米軍というかアメリカの意向が働きますよね、そうすると。
◆小出
もちろん働きますし、西谷さんが考えておられるように、基地があるところに原子力発電所は不適切だということは当然米国としては思っていた筈ですし、米軍としてもそう思っていたし、今でも思っている筈ですので、沖縄に原子力発電所が建てられることはないと思います。
◆西谷
あの〜、沖縄電力のほうは、とはいえ建てたいようで、なんかこっそり揚水発電所なんか造っているという話も聞きますが。
◆小出
そうですか。
実際に沖縄電力が原子力発電所を建ててしまうとですね、一番困るのはやはり沖縄電力だと思います。
◆西谷
あっ、そうですか。
◆小出
というのは、あの〜、原子力発電所で何か事故が起きると、一斉に原子力発電所っていうのは日本中止まってしまったりするわけで。
◆西谷
そうですね、今でもそうですね。
◆小出
沖縄で大きな原子力発電所を建てて、それが止まってしまうならば、やはり電力供給が出来なくなってしまうと思いますので、やはり沖縄のようなところでは、小規模分散型というのが一番電力会社としてもいいと思います。
◆西谷
結果的には、沖縄電力は得をしているということですよね。
◆小出
まあそうですね、はい。
◆西谷
あの〜実はですね、あのオスプレイというのが配備されて、よく落ちる飛行機で有名なんですけどね、あれあのオレンジルートとかで本土とかに飛んでくるんですけど、え〜、小出先生もね、四国の伊方原発、裁判などで関わっておられるんですけど、その伊方からですね、約1キロのところに、1988年の6月に米軍機墜落した事件がありまして、あの〜飛行機が落ちたら壊れますよね、原発って。
◆小出
私は壊れると思います。
特にですね、原子力発電所という構造物は、一番外側には原子炉建屋があるし、それから格納容器というものがあるわけですけれども、どんな構造物も天井の部分というのはかなり薄いんです。
◆西谷
あっ、天井は薄いんですか。
◆小出
はい、壁はですね、コンクリートとでも何でも1メートル2メートルの厚さの壁を作ることが出来るのですが、天井というのはどこでも薄いです。
というのは構造として持たないのです、ぶ厚くしてしまうと。
◆西谷
そうか、重くなるから。
◆小出
そうです。
え〜、ですから原子炉建屋の屋根なんていうのは、言ってみればペラペラですので。
◆西谷
怖いです〜、それ〜、もしオスプレイ落ちたら〜。
◆小出
そうです。
横方向から突っ込んでくるものについては、あの彼らもいや大丈夫だというようなことを言っているわけですけれども、真上から落ちてくるようなものに関しては、ほとんど無防備だと言っていいと思います。
◆西谷
あの〜、何と言うんですかね、沖縄国際大学に落ちた事件があったでしょう。
◆小出
はい、ありました。
◆西谷
あれ〜、ちょっと話ズレますが、あのときにですね、米軍はですね、防護服着て来たんですよね。
◆小出
そうです。
飛び込んできました。
◆西谷
あれ、あの沖縄の人たちは普通の服で見てたんですが、先生あれ防護服着たのは何故。
◆小出
え〜、あのヘリコプターにはですね、え〜、プロペラのところにストロンチウム90というあの放射性物質を積んでいました。
◆西谷
え〜、そうなんですか。
◆小出
あの6枚のプロペラの羽根があったのですが、その羽根の一つ一つにストロンチウム90というかなり毒性の高い放射性物質が積んであった。
◆西谷
それって、たしかあの骨に入ったらたいへんなことになるってことですね。
◆小出
そうです。
◆西谷
はい。
◆小出
え〜、それが火災で、まあ壊れて火災で蒸発したりしまっているわけで、米軍のほうはもちろんあの放射性物質を積んでいるということは知っていたわけですから、当初から防護服を着て来ましたし、放射能の測定器も持って現場に駆けつけて来ました。
◆西谷
あの〜沖縄の人はそれを知らずに、まあ野次馬みたいな形でねえ、あの抗議もしてましたよねえ。
で、あのときねえ、撮影も禁止だったんですよ。
だから、非常に機密だったんでしょうね。
◆小出
はい、現場はとにかくもう日本というこの国の筈なんですけども、米軍が現場を封鎖しました。
その外側を沖縄県警の警察官が米軍を守るような形で取り囲んで、その回りに人々が、沖縄国際大学の関係者も行ったわけですけども、現場に近づくことすらが出来ないという、そういう状態でした。
◆西谷
あの〜、先生あの〜、まあ戦争と原発が非常に繋がっているということで前回話をしましたが、結局何て言うんですかねえ、その米軍の情報というのは多々あってですね、あの福島の事故でも、あの〜米軍の軍艦は逃げたじゃないですか。
◆小出
そうです。
◆西谷
あれも先生、やっぱりデータ持ってたということですか。
◆小出
え〜と、日本ではですね、原子力発電所の事故が起きたら、どちらの方向にどれだけ放射性物質が飛んでいくかということを計算するためのSPEEDIという計算コードがあったのです。
◆西谷
ありましたね。
◆小出
確か120億円ぐらい投入したと思いますけれど。
◆西谷
文部科学省がね。
◆小出
はい、何十年かかけて開発したその計算コードがありまして、実際にその計算コードは事故の直後から動いていたのです。
ただし、原子力発電所からどれだけの放射性物質が時々刻々出ているかということが分からなかったがために、あまり正確な計算になりはしなかったのですけれども、それでもずうっとあの計算を続けていて、何月何日何時の時点でどちらの方向が危ないというデータはちゃんと持っていたのです、日本の政府は。
ただし、それをあまり正確でないということで、日本国民には知らせないということにしたのですけれども。
◆西谷
飯館村の方向に行っているっていうのは知ってたんですよね。
◆小出
そうです、そうです。
それも知っていたんですけれども、日本国民には知らせなかったのです。
◆西谷
そっちのほうに逃げたんですよね、浪江の人はね。
◆小出
そうです。
ただし、米軍には知らせていたという。
◆西谷
米軍だけには知らせていた。
◆小出
そうです。
まあ米軍というか米国に知らせていたのですね。
ですから、米軍としてはそのSPEEDIのデータも持ちながら、いつ自分たちのほうに放射能が来るかどうかということも見ながら行動していたわけで、自分たちのほうに放射性物質が飛んで来た途端に彼らは逃げたということになったわけです。
◆西谷
どこの国やねんと思いますけれど、彼らは80キロ逃げましたもんね。
◆小出
そうです。
深刻な事故だということは原子力の専門家であれば誰でも分かっていたわけですし、え〜、距離を取るというのが原則なわけですから、とにかく距離を離して逃げようと、彼らは、米国という国は考えたわけですね。
極々当然な判断だったと思います。
◆西谷
これあの例えばですよ、万が一、あんまり考えたくないんですけど、オスプレイがですね、伊方に落ちたらですよ、これやはり米軍だけが逃げるみたいなことになるんですか、ほんとに。
◆小出
あはは、まあなるかもしれませんね。
◆西谷
なんというかもうあの、沖縄もそうですし、原発もそうですし、結局この国はどっち向いて政治してるんだと、そういう気がしますけど、先生どう思われますか。
◆小出
もちろん思いますし、まあ、え〜、日米安全保障条約というのがあるわけですし、日米地位協定というものもあって、日本はその点で言えば完全に主権を奪われたままでもあるわけですね。
ですから、まあ日本というこの国が、米国に付き従うというのは国益だというのを国家のトップがずうっと言ってきたりしているわけですから、まあ米国ばっかり見ているというのは事実だと思います。
◆西谷
いずれにしてもちょっと天井が厚く出来ないのであれば、もう本当に何が降ってくるか分かりませんから、早く止めて廃炉にすべきだということでしょうね。
◆小出
私はそう思います。
◆西谷
はい、今日はですね、あの沖縄の特集ということで、ちょっと沖縄の、沖縄電力になぜ原発が無いのかというところから戦争の話も含めてお聞きしました。
え〜、小出先生、どうもありがとうございました。
◆小出
ありがとうございました。
◆西谷
以上、小出裕章ジャーナルでした。
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