群馬高専、低価格の小水力発電開発 落差小さい用水路に対応
群馬高専(前橋市)は群馬県内の企業2社と連携して、落差の小さな用水路でも電力を生み出せる小水力発電装置を開発した。使用する磁石や排熱の仕組みを工夫して発電効率を上げ、同程度の出力の他社製品に比べて約3割安くした。東京電力福島第1原子力発電所の事故で自然エネルギーへの関心が高まるなか、農家や学校などへの普及を目指す。
群馬高専の田中英紀教授がベルトコンベヤー製造のマルシン産業(高崎市、提箸康裕社長)と給排水設備の石井設備サービス(同、石井春夫社長)の2社と連携して開発。出力200ワットの設備を群馬高専内の用水路に設置して実証実験を進めている。2社のいずれかを通じて、早ければ2012年初頭にも販売を始める予定。農業用ビニールハウスの照明や、学校でのエネルギー関連教育の教材などとしての需要を見込んでいる。
出力は200ワットで、価格は30万円前後を想定している。1秒当たりの流量が50リットル以上の水路であれば設置可能。水路には簡易なせきを設けて水位を上げて、落ちてくる水でタービンを回転させる。連結した軸を通じてコイルを回して電気を生み出す仕組みだ。コイルや設備の設計・製造はマルシン産業が担当。石井設備サービスと群馬高専が全体の企画や性能評価を担当した。
発電コイルには磁力の強いネオジウム磁石を使用。表面がさびやすいことから小水力発電設備では使われることは少なかったが、表面をクロムの膜で覆うことでさびを防止した。また発電機内部でも通常は樹脂が使われる部品に熱伝導率が高いアルミを使用し、発電時に発生する熱を迅速に外部に逃がすことで発電効率を上げた。発電機内部の構造についてはマルシン産業が特許を出願する方針。
現在は実証実験を通じて流木や大きなごみが流れてきた際の対策や騒音の軽減策を検討している。石井設備サービスでは「維持管理のコストをなるべく下げて、10~15年で投資が回収できるようにしたい」(石井洋志専務)と話し、マルシン産業は「今後、出力2キロワットの設備まで作りたい」考えだ。
群馬高専の田中教授は「原発の事故もあり、小水力発電への関心が高まっている。自治体や農家などにも導入してもらいたい」と話している。
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