だまし売りNoさん
レビュアー:
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業者としては「眺望・採光が良好」と宣伝する以上、それが妨げられる要素がないことも一通り調査した上でなければならない。そうでなければ「眺望・採光が良好」の宣伝文句が裏付けられたものではなくなる
落合誠一 『消費者契約法』(有斐閣、2001年)は消費者契約法の解説書である。消費者契約法は消費者契約について包括的な民事ルールを定めた画期的な法律である。著者は国民生活審議会消費者政策部会長として消費者契約法の立法に関与した人物である。
私は消費者契約法第4条第2項の不利益事実の不告知によってマンション売買契約を取り消した経験がある。不利益事実不告知は、業者が商品の利益となる事実を告げながら、不利益事実を説明しなかった場合に契約を取り消すことを認める。東急不動産はマンション販売時に「眺望・採光が良好」など環境面の良さをアピールポイントとしながら、隣が作業所に建て替えるという不利益事実を説明しなかった(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。
このために不利益事実の不告知に関心があるが、本書には興味深い主張がある。不利益事実の不告知は、事業者が不利益事実を知っていて故意に説明しなかったことが要件になっている。東急不動産だまし売り裁判では裁判を起こす前に東急リバブル東急不動産に文書で質問し、東急不動産が隣地建て替えを知っていたことを文書として保持していた。このために故意は当然に認められたが、他の消費者トラブルでは故意の立証がネックになることが多い。
この点について本書は重過失も含めるべきと主張する。「利益となる事実のみを告げて重要事項につき不利益な事実を告げない事業者の行為は、行為として極めて悪質であり、こうした場合にこそ消費者被害の救済が特に求められていること、また消費者による事業者の故意の立証は一般に困難であること、規定の趣旨目的から重過失を故意と同等に扱う解釈は可能であること、さらには消費者契約法の立法目的等を総合的に考慮すれば、本要件は故意のみに限定されるものではなく、むしろ重過失の場合も含むと解すべきではないだろうか。」(84頁)
不利益事実の不告知は不利益事実を告げなかっただけでなく、利益となる事実を告げたことが要件になっている。東急不動産だまし売り裁判で言えば、「眺望・採光が良好」と宣伝しながら、隣地建て替えで日照がなくなることを説明しなかったことが問題である。業者としては「眺望・採光が良好」と宣伝する以上、それが妨げられる要素がないことも一通り調査した上でなければならない。そうでなければ「眺望・採光が良好」の宣伝文句が裏付けられたものではなくなる。それ故に故意だけでなく、重過失の場合も含むことは正当である。
「利益となる事実のみを告げて重要事項につき不利益な事実を告げない事業者の行為は、行為として極めて悪質」という著者の価値判断も東急不動産だまし売り被害者として強く支持する。悪徳業者には「嘘は言っていない」と言い訳する傾向があるためである。不利益事実を説明しないことを悪質とする価値観は悪徳業者に対抗できる。
私は消費者契約法第4条第2項の不利益事実の不告知によってマンション売買契約を取り消した経験がある。不利益事実不告知は、業者が商品の利益となる事実を告げながら、不利益事実を説明しなかった場合に契約を取り消すことを認める。東急不動産はマンション販売時に「眺望・採光が良好」など環境面の良さをアピールポイントとしながら、隣が作業所に建て替えるという不利益事実を説明しなかった(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社)。
このために不利益事実の不告知に関心があるが、本書には興味深い主張がある。不利益事実の不告知は、事業者が不利益事実を知っていて故意に説明しなかったことが要件になっている。東急不動産だまし売り裁判では裁判を起こす前に東急リバブル東急不動産に文書で質問し、東急不動産が隣地建て替えを知っていたことを文書として保持していた。このために故意は当然に認められたが、他の消費者トラブルでは故意の立証がネックになることが多い。
この点について本書は重過失も含めるべきと主張する。「利益となる事実のみを告げて重要事項につき不利益な事実を告げない事業者の行為は、行為として極めて悪質であり、こうした場合にこそ消費者被害の救済が特に求められていること、また消費者による事業者の故意の立証は一般に困難であること、規定の趣旨目的から重過失を故意と同等に扱う解釈は可能であること、さらには消費者契約法の立法目的等を総合的に考慮すれば、本要件は故意のみに限定されるものではなく、むしろ重過失の場合も含むと解すべきではないだろうか。」(84頁)
不利益事実の不告知は不利益事実を告げなかっただけでなく、利益となる事実を告げたことが要件になっている。東急不動産だまし売り裁判で言えば、「眺望・採光が良好」と宣伝しながら、隣地建て替えで日照がなくなることを説明しなかったことが問題である。業者としては「眺望・採光が良好」と宣伝する以上、それが妨げられる要素がないことも一通り調査した上でなければならない。そうでなければ「眺望・採光が良好」の宣伝文句が裏付けられたものではなくなる。それ故に故意だけでなく、重過失の場合も含むことは正当である。
「利益となる事実のみを告げて重要事項につき不利益な事実を告げない事業者の行為は、行為として極めて悪質」という著者の価値判断も東急不動産だまし売り被害者として強く支持する。悪徳業者には「嘘は言っていない」と言い訳する傾向があるためである。不利益事実を説明しないことを悪質とする価値観は悪徳業者に対抗できる。
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歴史小説、SF、漫画が好き。『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』はマンションだまし売り被害を消費者契約法(不利益事実の不告知)で解決したノンフィクション。
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- 出版社:有斐閣
- ページ数:243
- ISBN:9784641132771
- 発売日:2001年10月01日
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