スケート女子、女王オランダ追い抜いた黄金の絆
高木美、高木菜、佐藤の3人で組んだオランダとの決勝。姿勢、リズム、歩幅――。3人が一つの固まりになって、ぐいぐい進んだ。エースの高木美が空気抵抗を大きく受ける先頭でまず滑り、リズムをつくる。スピードに乗り、オランダに先行した。続いて先頭に立った佐藤の時にオランダにリードを許す。佐藤は先頭を交代したあとに転びそうになったが、「よく耐えた」とこらえた。
3番手の高木菜は先頭に立った瞬間、足に疲労がきていることに気づいた。それでも「あきらめなかった」と必死に体を動かして大黒柱の妹につなぐ。どの先頭交代もスムーズで無駄がない。個人種目のメダリスト3人で臨んだオランダに個の力は及ばなくても、団結力なら日本だ。
そして最後は再び高木美。みんなの思いを背負っていた。「自分のこともチームのことも信じることができたのが大きい。前へ前へとさらに強い気持ちだった」。ラスト1周の時点でオランダを逆転。ぐんぐんリードを広げ、ゴールする前に勝利を確信した。渾身(こんしん)のガッツポーズ。2分53秒89の五輪新記録を出して悲願の金メダルだ。
オランダと対戦した4年前のソチ五輪準決勝。実力差がかけ離れていた日本は「3位狙いでオランダとは負けレースをした」と当時出場した高木菜は振り返る。体力を温存して3位決定戦に力を注ぐため、ベストメンバーで臨まず、金メダルを獲得したオランダに惨敗した。そのタイム差は実に11秒76。メダルを狙うための戦略だったとはいえ、あまりに屈辱的な敗戦だった。
それから4年。ナショナルチームを結成した日本は年間を通してともに練習し、オランダと互角に渡り合う強豪国となって五輪に帰ってきた。高木菜は「(この種目に)かけてきた思いだったり、練習量は自分たちの方が絶対に勝っている」と力を込める。準決勝に出た菊池も、決勝前はできる限りのサポートをして勝利に貢献した。チームの思いは一つだった。
高木美が全員の思いを代弁する。「隊列とか今までの中で一番いいレースができた。最後まで本当に一丸となって滑りきることができた」。4年間かけて培った理想の隊列。一致団結して日本の底力を示した金メダルが光り輝いた。
(金子英介)