ビールはなぜ一杯目が美味しいのか〈老けない人は何を飲んでいる? ⑦〉

飲むほどにビールの苦味が気になり出すのにも科学的な根拠があったのです。

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水分を感じる神経は、水よりもビールに強く刺激される

「とりあえずビール」「最初はビール」、一日の仕事が終わったあとやスポーツで汗を流したあとのビールは格別の美味しさです。なぜのどが渇くとこれほどビールを飲みたくなってしまうのでしょうか。

そしてもうひとつ。二杯目のビールが一杯目ほど美味しいと感じないのはなぜなのでしょうか。「のどの渇きがいったん癒されたから」と何となく想像はできますね。ただ、同じ銘柄なのに二杯目、三杯目と飲み進めるにしたがってだんだん「苦みが増してくる」と感じることがあります。それはなぜなのでしょうか。

それらの現象には、理由がありました。

新潟大学の真貝富夫助教授(味のなんでも小事典(日本味と匂学会編)講談社)が説明しています。それによりますと、カラダには、複数の情報から今一番必要な情報を選んでいるという脳の仕組みがあるため、ビールの味わいは、そのときどきのカラダの状態で変わっていくというのです。

たとえば、汗をかいてカラダが水分を欲している状態で、ビールをのめば、のどにある水繊維(水を感じる神経)がはたらいて脳に信号をおくり、脳の渇きが満たされた、乾きがいやされたと感じることになります。

のどにある水繊維は、水よりもビールによって強く刺激されることもわかっています。つまり、のどの渇きが強いとビールを飲んだほうが満たされやいのです。のどが渇いたときに水よりも「とりあえずビール!」という気持ちになってしまうのは、まさに人の身体が欲していることなのです。

ビールは濃く苦い味から飲みはじめたほうがいいかも

そして、実際にビールを飲んだとき「渇きがいやされた」という水繊維からの信号がまず選ばれて脳に送られます。このときは「ビールは苦い」という味覚に関する情報は感じにくくなっています。

ところが一杯目を飲んで、のどの渇きが満たされてしまうと、ビールの苦みは「イヤな情報」として感じるようになってきます。その後はビールを飲めば飲むほどどんどん苦味が増してくるようになり、はじめの一口やはじめの一杯ほど美味しいと感じなくなるだけでなく、苦味ばかりが強く感じられるようになってくるのです。これはひとえに、脳がカラダに必要な情報をより強く好意的に感じるようにできているからです。

料理もお酒も、淡い味のものから徐々に濃い味のものに進んでいくのがひとつのセオリーとして定着しています。でも、のどが渇いているときに飲むビールの場合は、苦味のあるものからマイルドなものへと変えていくという、セオリーと逆の飲み進めかたのほうが、長く美味しく飲めそうです。もちろん「ビールは苦みこそ醍醐味だ!」という、苦味派ビールファンの皆さまは、この限りではありませんが・・・。

みなさんも常識にとらわれずに、その時々の自分のコンディションに合わせてビールのテイストを選んでみてください。


※記事の情報は2018年1月15日現在のものです。
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